恋のお知らせ (水戸洋平)
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ふわっふわな白い雲。例えるならメレンゲが乗っかったスフレケーキみたい。視界いっぱいに広がる青空は絵葉書同然で、うっとりするほど綺麗。
そんな心ときめく手紙が来ないかな〜なんて淡い期待を抱いて郵便受けを開ければ、複数のビラが。
「はぁ。またダイレクトメールかぁ……」
沈んだ声が漏れた上に溜め息までついちゃった。これじゃあせっかくの綺麗な空がかすんじゃう。
手元にあるのは新聞の折込み広告。住宅関係や近所のスーパーマーケットにピザのデリバリー。どれもこれも有益な情報なんてありゃしない。
少なくとも「今」の私には。あ、あと一枚ある!
〇〇工務店……これ、お父さんの職場じゃん……
――
「ご苦労様さま。上がっていいよー」
「はい、お疲れ様でした」
タイムカードを切って作業着を脱いで大きく息を吐く。七月の空。湯せんで溶かしたどろどろのチョコレートみたいに暑い。
とある土曜日のバイト帰り、帰りがけにってお母さんにお願いされた買い物リストを見てさらに大きな息を吐いた。手元には半強制的に持たされた紺色のエコバッグと同色の小っちゃいコインケース。
なんで同じ色、それもこんな地味な……
湘北高校一年。
誕生日を目前に控えた、十六歳になりかけの十五歳。
彼氏いない歴イコール年齢。
それどころか好きな相手もいない。
生まれてこの方、そもそも男子にときめいたことがない。
恋って、片想いって、両想いってどんな感じなんだろう。
周りが見えなくなって、自分を見失って、毎日三食のご飯が喉を通らなくなるほど夢中になったり?
ステキ…… 一度でいいからそんな体験してみたい。目に映る景色だって、多分こんな地味な色じゃない。恋心が芽生えた瞬間、辺り一面がバラ色の世界に見えるはず!
「オーライ! オーライ! はい、オーケーです!」
「レギュラー満タンで頼むよ」
「ハイ! レギュラー満タンで、かしこまりましたー!」
頼まれたものを買ったあと
近所のガソリンスタンドの前を通り過ぎようとした時、辺り一帯に活気の良い声が響いた。
「窓ガラスの拭き上げと、灰皿を交換いたしますので少々お待ちください!」
「兄ちゃん、ハキハキしてていいねー」
「ありがとうございます!」
あれ? 水戸君だ。
知らなかった、ここでバイトしてたんだ。
偶然にも同じクラスの水戸洋平君が働いているところに出くわした。
不良で名高い和光中出身らしくてみんなから恐れられてる。だから私も接点はないけどあの接客態度と笑顔を見る限り、そこまで怖い人じゃないのかも。
まぁ単なる営業スマイルなだけなんだろうけど……
勤務中だし話しかける義理もないし、そのまま歩いて店舗を通り過ぎた。
もちろんこの時はまだ特別派手でもなく変わり映えしない単なるノーマルの風景にしか見えなかった。
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