空っぽの心〜獅子奮闘 編
name change
夢小説設定ここでは名前を自由に入力できるぞ。お前の好きな名前を入れてみてくれ。それにより面白みも増すだろ。
と言っても女性ばかりだが……
ん? 最後だけ男か。奴は、アイツが初めて……
いや、すまん。何でもない。では、よろしく頼む。
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スケッチブックに思わず写生したくなるような晴れ渡った青空に、真っ白な入道雲 ‥‥
スカイブルー & スノーホワイト。
発色の良い絵の具と同様の鮮やかな色合い。
そんな壮大な景色は心強い仲間を味方にできたことを祝う反面、皮肉にも彼女の意志や精神状態に背いている風にもとらえられた。
( 最初は甘えてばかりじゃダメだって思ってた。
自分がちょっとぐらい傷付いたって、みんなが無傷で済むならそれでいいって思った。
でも貴方が……もっと頼ってもいいんだって
熱意には熱意で、全身全霊で応えるんだって
そう言ってくれたから……
水戸くんの優しさに、誠意に私も応えようって決心がついて打ち明けることができたんだよ。
紳ちゃん……本当に、ありがとう……
だけど……やっぱり
部員のみんなや、楓くんにも、宗くんにも
もちろん貴方にだって……
本当なら危険な目に遭わせたくない。
桜木くんが言葉にしてくれた " 思いやり " っていう名前の嘘を貫かなくちゃ。
あの本も、町中を駆けめぐって探して共通点を作りたいって言ってくれた。
水戸くん……
まさか、暗い顔をしていた私を見兼ねて……?
それに……決着とか、宣戦布告だとか
健司くんのことも不鮮明で分からないことだらけだけど
いつかきっとクリアに、鮮明になるって信じてる。
信じてるから……! )
ー 翌日
様々な思いやビニール袋にいっぱい詰まったスポーツドリンクを引き提げ、いざ試合会場へ。
インターハイ予選・Aブロック
海南大附属高等学校 VS 武園学園高校。
ベスト4および決勝リーグ進出を賭けた戦い。
綾は開始時間よりも少し早めに訪れていた。
何者かに狙われていると、一人きりになるのは危険だという発言を先立って耳にしていた水戸とカナ。
綾と共に海南の控え室へと向かう。
「すげー量だな。これ全部差し入れなのか?」
「うん。全部持ってもらっちゃってごめんね。大丈夫……?」
「いいってことよ。このぐらい何ともねえって。俺はいわば、近衛兵なんだからな。お姫様の側近でお守りする義務があるってわけ。」
「お姫様とか、マドンナだなんて……私……」
近頃よく耳に入ってくる、自身の肩書き。
真っ直ぐな眼差しでそう語る水戸に対し頬を染める綾。
そんな顔を見てふっ、と目を細めた。
「控え室、なんなら俺が渡しに行っても構わねえけど?」
「ううん。ドアの前に、床に置いてくれればそれでいいから……」
( 春野さん…… )
彼には、まだ会う勇気がない。
扉を開けば、その先には愛しの人がいるというのに。一歩ずつ己のペースで戻って来てほしいと彼はそう言ってくれたのに。
恋に億劫になり気迷い、二の足を踏んでいた。
ドサッ‥‥
目的地に到着した三人。彼女の指示通り、水戸は両手に持っていた袋を壁際に置いた。
「これで良しと。じゃ、観客席まで行くか。」
「水戸くん、悪いけど先に行っててくれない?」
「「え……?」」
突如として割り込んできた聞き覚えのある声に驚く二人。咄嗟に後ろを振り向くと、そこには友人、クラスメイトの姿が。
「二人だけで、大丈夫なのか?」
「へーきへーき。女同士で積もる話もあるから。」
「カナちゃん?」
「そっか……じゃ、あとでな。
春野さん、西東さんも。」
「は~い、じゃあね~。」
カナの思惑が分からないままだが、真面目な性格である彼女は
これだけはきちんと伝えなければいけないと去りゆく後ろ姿を見て呼び止めた。
「あっ……待って!」
「!」
「ドリンク、わざわざ運んでくれてありがとう。この間も言ったけど本当に無理しないでね。今日はお互い頑張って応援しようね……!」
と、ニッコリ微笑み感謝を伝えると
「どーいたしまして。
春野さんの方こそ、力み過ぎてあの時みたいにぶっ倒れないようにな。
それこそ彼氏に顔向けできなくなっちまうからさ。」
じゃーな、と力無く微笑み返し去っていった。
「水戸くん……」
綾は昨日から極端に元気が無い様子の水戸を気にかけていた。
表情こそ明るく和やかだが、どことなく影を背負っている様に思えて仕方がなかった。
また、有名な昔話に登場する犬・猿・キジの如く強力な助っ人を味方につけた彼女はあれから彼らにもうひとつの依頼をしていた。
共に会場まで足を運んだ理由はというと‥‥
――
「明日、海南と武園の試合があるんだけど……
良かったら一緒に行かない?」
「「 試合? 」」
「知り合いの男の子にね、応援に来てって誘われたの。
差し入れを持って行こうかなって思って。でも、一人じゃ心細くて……」
「応援……ってことは、スタメンなんだな。」
「うん。二年生でね、ポジションはシューティングガードなの。」
「おお! ミッチーと同じですね!」
「……!」
突然の三井の名に、ピクッと体が反応する。
「その人はね、私の心の救世主なんだ。」
「「 心の救世主……? 」」
自分にとって彼はいつだって救いのヒーロー。
位置情報を把握しているのでは? と疑念を抱いてしまうほど緊急時には真っ先に駆けつけ、また淀んだ心をすくい取ってくれる。
気さくで、穏やかで、賢くて。
彼女にはなくてはならない存在となっていた。
「ぬっ……綾さん!
この天才・桜木も湘北を全国へと導く救世主ですから!! ぜひ期待していてください!!」
「うん。そうだね、頑張って……!」
( ふーん…… )
はにかみながら話す彼女に、面白くなさそうな態度を取る水戸は
「彼氏は……もちろん試合には出るんだろ?」
「ううん。出るまでもないって……」
「ぬ!? 控えの選手でジューブンってことか!? おのれ、ジイめ……!」
「構わねえけど……海南の応援はできねぇな。」
「そ、そっか……」
「ラーメン屋の帰りに葉子ちゃんに会ったんだけど、少し様子が変でさ。
放課後、ちょっくら武園に顔出そうと思ってんだよね。」
「葉子ちゃん……?」
初めて耳にする名前に綾は小首を傾げる。
昨夜、路上で偶然出会った彼らは
ただならぬ様子の彼女を不思議に思い、その真相を突き止めるべく出向こうと決心した様だ。
「そっ、島村葉子ちゃん。彼氏の小田って奴がレギュラーなんだけどさ。
聞いて驚くなよ、実は花道が50人目にフラれ……ふごっっ!」
「よっ……葉子さんとはフラットな関係ってやつで、友達なんですよ。そう、友達! 50人目の……!」
「フラット? 50人?」
( ばっ、バカモノ! 綾さんが気にするだろうが! )
( なに動揺してんだ。別にヤキモチなんて焼かねーだろ。)
( うむ、断じて無い! )
( おーい大楠、大丈夫かー? )
石頭によるヘッドバットをモロに喰らい、地面にのびている彼を心配する水戸。額からは空に向かって白煙が上がっている。
「そっかぁ、お友だちがたくさんいるんだね!
ふふっ。桜木くんって、清田くんと気が合いそうだよね?」
「ぬ……清田? 誰すか、その野郎は?」
「彼もベンチみたいなんだけど……一度会ってみたら分かると思うよ。
一等星のデネブみたいにね、すっごく明るくて楽しい人だから!」
「ほぅほぅ、オットセイですか。なるほど……」
「ちげーよ、一等星だって。
本当に意味分かってんのか? 花道。」
「うむむ……」
「「 ダメだ、こりゃ…… 」」
( それに……楓くんと、桜木くんのこと……
気付かせてくれたんだよね……… )
ーー‥
流川と桜木って奴も、きっと、綾さんのことが好きだから……!!
綾さん、行っちゃダメだ!!
‥ーー
以前、清田が発した衝撃発言。
別れる間際、辛い目に遭わせまいと必死で声を張り牧との仲を一分でも一秒でも長く繋ぎ止めようとしてくれたことを思い出す。
また、直近で話したのはそこまでで姿を見られることも楽しみだった。
以来綾はあの言葉が忘れられず、二人のことを少なからず意識していた。
( まさか、桜木くんまで……違うよね……? )
自意識過剰だと思いつつも、少し照れた様にしてジッと桜木の顔を見つめる。
「綾さん?」
「あ……何でもないの……!
でもそうだよね。それじゃあ海南の応援はできないよね。
勝った方がウチと決勝リーグで当たることになるから、頑張って応援しようね。桜木くん!」
そう言って、綾は力なく笑った。
「は、はいっ!」
( 綾さん、辛いはずなのに……
健気だよな…… )
( 春野さん……? )
(( 可愛い……だけどニブい、ニブ過ぎるぞ、綾ちゃん!))
( 葉子ちゃんか……武園が勝てば、花道と因縁の対決が見られるかもな? )
― そして
後方から一部始終を見ていた友人は
「見~ちゃった!」
「!」
ハッとした綾は、声のする方へと顔を向けた。その人物はニヤニヤと悪戯に微笑みながらこちらに近付いてきた。
「お姫様……ねぇ~?
水戸くんってクラスのみんなには素っ気ない感じなのに、綾にはかなり紳士じゃん!」
「えっ、カナちゃん?」
どういう風の吹き回し? と攻め寄る友人に対し徐々に体温が上昇していく感覚を覚える。
「西東さん " も " って、私はついでかい! とも思ったけど。お邪魔だったかな~。」
「そんな、邪魔なんかじゃ……」
その感覚が錯覚ではないことが証明されるまで、そう長く時間はかからなかった。
「ずばり、既に告白されたとみた……!
どう? 当たってるでしょ?」
「うん……ご名答、です……」
「あはは、やっぱり?」
顔面に熱を帯び、恥ずかしそうにして答えた。
その後、二人は観客席へと並行して歩く。沢山の人だかりの中、しばしの沈黙が流れる。
綾は会場に向かっている最中に仙道、藤真、そしてバスケットへの想い。
今日に至るまでの経緯をカナと桜木軍団にザッと話していたのだった。
彼女のこの一言で、その沈黙は解かれた。
「綾……水臭いんじゃないの?」
「え……?」
「あの女の件で、水戸くんとかに助けを頼んだのは良い判断だと思う。
なんでも喧嘩の強さはピカいちで? 中学時代、かなりのワルとして知られてたみたいだし。」
「でも……すごく優しいし、イイ人だよ?」
「まぁ、そりゃ~好きな人にはねぇ……」
「……?」
( 普通、好きな女の子には優しくするでしょ。
実際、特に桜木くんもアンタのことが好きだって態度バレバレだし…… )
「命がけで守るって約束してくれたって話してたけど……
牧くんもバスケ選手だし、なんたって神奈川No.1だもんね。大怪我でもされたら大変だし、辛いだろうなって思う。」
「うん……」
「でも、私は綾のことが一番心配だよ。
人のことよりも、まず自分の身を心配しないとダメじゃん!!
私さ……どうして牧くんが別れを選んだのか……今なら分かるような気がするよ。」
「カナちゃん……」
彼もきっと、別れたくなんかなかったはず。
考えに考え抜いて己を犠牲にしてまでも彼女の映えある未来を、幸せだけを願った。
木製のジュエリーケースに大事にしまっている四つ葉のクローバーをあしらったブローチとペンダント。
牧の気持ちを、優しさを踏みにじってはいけない。友人からのダメ出しを受け思い出した様に心の中でそれらをギュッと包み込んだ。
それにさ、と彼女は話を続ける。
「仙道くんは……芸能人みたいなもんだよ。」
「! 芸能人……?」
「そう。テレビとか雑誌とか、違う次元に存在する人って感じ。
陵南で初めて会った時も「綾ちゃん」なんて言ってたし……
アンタと同じで一種の憧れみたいなもんだから、気にしなくていいって。」
自分とは違った、例えるならば別世界の人間。単なるファンの一人なのだとそう言い切った。
「……絶交されちゃうんじゃないかって思って、敢えて言わなかったの。本当にごめんね……」
「だーかーら、全然気にすることなんかないんだってば! ラブレターとかデート云々よりも
綾が話してくれなかったことの方がショックだわ。絶交なんてするわけないっしょ!」
「カナちゃん、ありがとう……」
友情にヒビが入ってしまうことを恐れ、敢えて伝えることをしなかった綾。
大らかな心を持ったカナの言の葉に感謝を述べた。
気に留めていた一つの悩みが解消され安堵していると‥‥
「いつまでも辛気臭い顔してんじゃないわよ。
スマイル、スマイル!
横浜に行ったら景気付けにケーキバイキングにでも繰り出すかぁ!
……というか、私も一緒に行ってもいい?」
「うん、もちろん。カナちゃんが来てくれたら私も嬉しい!」
「……!」
「そうと決まれば、善は急げよ!
その日までに髪型やメイクに洋服のコーディネートとかも考えておかないと!
ただでさえ綾は(美人で)素材が良いんだから。
さらにとびきり可愛くなった彼女の姿を見たら……牧くん、惚れ直しちゃうかもね?」
「えっ……そ、そうかな……?」
「そうそう、そんな顔するかもね~?」
と、綾をおちょくるカナ。照れ臭さから頬を真っ赤に染めていた。
( ホント、気を遣い過ぎだっつーの。
今日だって海南の、神さんのためだとはいえ無理して観戦しなくてもいいと思うけど…… )
からかいつつも彼女の気持ちを察し
切ない表情で見つめるカナだが‥‥
数秒後、予想外の言葉に目を見張った。
「あのね……近々、翔陽高校に行かない……?」
「え? 翔陽に……?」
ー すると‥‥
前方からズン、ズンと言った足音が聞こえる。その音は段々とこちらににじり寄ってきた。
「おや、君は……」
その人物とは、一体‥‥?
「高頭先生……」
二人の前に現れた者とは
" 智将 " で名高い・高頭力監督であった。
長い年月に渡り海南の男子バスケット部を勝利に導いて来た威厳や風格と、本質を掴まれそうな凄味をまじまじと感じる。
「湘北のマネージャーの春野くん、だったね。」
「はい。高頭先生、お久しぶりです。」
( 先生? あ~なるほど、海南の監督ね。
でも綾、なんでまた翔陽に……
あの人とは友達だって言ってたけど……? )
牧と出会いを果たし、その後
交際をスタートした頃も何度か挨拶を交わしたことはあるが
この様にきちんと会話をするのは初めて。
また、先ほど話が途切れてしまったカナの脳内には疑問ばかりが渦巻いていた。
( まさかここで先生に会うなんて……
翔陽を応援したこと……言われるのかな。
そういえば、宗くんが言っていた
" 監督との約束 " って、一体何だろう……?
それも気になるけど
バスケのことは顔に出さないように
絶対に悟られないようにしなくちゃ…… )
先日、神が明かしてくれた話の中で少しばかり気になっていたこと。
聞いても良いものかと迷っていた。
バスケに対して後ろめたさを感じていると悟られないために、できるだけ無表情で
ポーカーフェイスでいられるよう徹していた。
監督は彼女の顔をじっと見やり口角を上げる。
「フハハハ……!
よく見れば、噂通りのめんこい娘だ。
あの写真よりもずっと良いじゃないか。」
「あの写真……?」
その直後、監督は笑い声を上げた。
めんこいとの発言に驚き少々顔を赤くする綾。今ではあまり使われない言葉だが、その意味合いよりも
" あの写真 " という語句が引っかかっていた。
「決勝リーグまでには間に合ったようだな。」
「……?」
そうぼやき、先ほどまでとは違うシリアスな表情で語り出した。
「藤真率いる翔陽が敗れた今……
牧は、今回の県予選でチームを優勝に導き、個人でもMVPを獲得するほどの選手だろう。
武園には悪いが今日の試合も海南(ウチ)が勝たせてもらう。」
( 健司くん……
MVPかぁ……すごいなぁ、紳ちゃん…… )
心苦しさに、気高さ、羨ましさ。
制服のリボンをしがみつく様に握りしめる。
無機質な顔つきではいられず、自分でも気付かないうちに段々と表情が曇っていった。
監督は矢継ぎ早に、ゆったりとした口調に変わった。
「人間というものは、強くて賢い。
だが……時に弱く、そして脆いものだ。
この世に完全無欠の人間は存在しない。
よって、アイツにも欠点がある。」
「えっ……欠点……?」
「それは……まだ " 高校生 " だということだ。
今後の人生において行き詰まることが多々あるだろう。
その時には春野くん、君が全面的にカバーをしてやってほしい。
牧がウチの揺るぎない大黒柱ならば……君は精神的支柱だ。
なくてはならない存在になっているのだと、私は思うよ。」
「……!」
「無事に復縁ができたようで何よりだ。
来たる湘北との試合では、キャプテンの赤木くんとの接戦になるはずだ。君を勝利の女神として是非、力添えをお願いしたい。
一番の良き理解者(パートナー)として私からもよろしく頼むよ。」
「高頭先生……」
高校生‥‥その若さこそが欠点であり、盲点。
やがて命取りとなる。
非の打ちどころが無い様に見えても、大人からすればまだまだ未熟な子ども。
辛く苦しいことが待ち受けているとしても今後も決してくじけず支え続けて欲しい。
牧紳一という全国区のスタープレイヤーと交際するにあたり大切なことを教えられた綾。
王者・海南の勝利への軌跡は監督のこうした礎により出来上がっているのだと実感すると共に、広く大きな温かさを感じていた。
「控え室の前に差し入れがあるので、彼と……選手のみなさんに渡してください。
観客席から応援してますね! それでは先生、失礼します。」
「いつもすまんな。有り難く頂戴するよ。安西先生や赤木くんにもよろしく。」
「はい……!」
軽く会釈をし、友人とこの場を後にした。
監督は去りゆく彼女の背中に
本当の親の様な、優しい眼差しを送っていた。
「めっちゃ意味ありげなこと言ってたけど……
要は、監督公認のカップルってわけ?」
「うん、そうなのかも……」
「ハッ……! それよりも、藤真健司って人のこともっと詳しく教えてよね!
翔陽まで付いて行ってあげるからさぁ。」
「本当? いいの……?」
「いいに決まってるでしょ。というか、綾と一緒にいると男に不自由しないわよね。目の保養になるわ~。」
「も~、カナちゃんは……
でも……ありがとう。
そろそろ試合が始まるし、また今度ね……?」
キラキラと目を輝かせるカナ。
そんな彼女をよそに、半ば呆れ顔の綾は返事をする傍ら先ほどの言葉が頭から離れず、しばし考え込んでいた。
( 決勝リーグまでには間に合った……?
過去形……?
無事に復縁って……
そっか! 高頭先生との約束って、そういうことだったんだ……!! )
" 決勝リーグまでに復縁せよ "
乱雑に並べられていた言葉の数式が合致し1つの答えを、問題を解くことができた。
二人は嬉々として観客席へと歩を運ぶ。
一方、花道軍団はというと‥‥
「すげぇ、ギャラリーは女子ばっかりだな。」
「さすが武園……! 男の楽園じゃあ……!
いくらでもナンパし放題! たまらんな~。」
「バーカ。お前じゃ相手にされねーよ。
……それにしても、なんで綾ちゃんはあんな言い方したんだろうな。」
「何がだ?」
「もし俺が女だったら「水戸くん、怖いよー! 助けてー!」って泣いて飛びつくけどな~。」
疑問を抱く水戸に対し、大楠は甲高い声を上げ抱擁のジェスチャーをした。
自身ならその様に言うはずだと、引っかかっていた部分を思い出しながらそうぼやく。
「…………」
「確かに。謙虚というか、控えめというか……」
「うんうん。女心ってのは複雑なんだなぁ……」
「気色悪りぃ声出すなよ、大楠。
その欲の無さが春野さんらしくてさ……いいんじゃねーかな。」
飾り気がなく、低姿勢。
こんな時ぐらいもっと貪欲になればいいのに。
しかしその腰の低さが彼女らしくて良いとコートを、遠くを見て彼はほくそ笑んでいた。
「洋平、お前……ベタ惚れだな。」
「まーな……けど、俺も雑草みたいなモンだしそのうち取り除かれちまうんだろうな。」
「「……?」」
「SOSのサインを出された以上、俺らの業務はただひとつ!
マドンナをお守りすることだけさ……!」
「「 ラジャー! 」」
ーー‥
助けてくれたら、嬉しいな……
‥ーー
昨日、綾の口から告げられた
遠慮がちで控えめな‥‥小さな、小さなSOS。
ボディガードを依頼された桜木率いる桜木軍団の5人組。
彼らはいわば「正義の不良」。悪さを企む連中を放ってはおけない。恐怖心を少しでも和らげようと受諾したはいいが牧とヨリを戻したと知り
はぁ、と深いため息が漏れてしまう。
( 復縁したってことは、本格的にフラれる日も近いってことだよな……
ここに来る途中、様々な真意が発覚した。
俺らのことを心配して……って思ってたけどまだ不安半分みたいな表情だったな。
そういうことだったんだな、春野さん。
だから昨日、花道がいたらバツが悪かったってわけか…… )
その後すぐ、観客席にたどり着いた綾とカナ。彼らの姿を探していると‥‥
「「 おーい! 綾ちゃん、こっちこっち!」」
「みんな!」
「最前列、確保しといたぜ。」
( ……元気出せよ、洋平。)
( 綾ちゃん、辛いだろうになぁ…… )
( まぁどんな事情があるにせよ、今日は綾ちゃんとの楽しい楽しい試合観戦だもんな。
メシに本に護衛、って
これだけ尽くしてんだから、手ぐらい握ってもバチは当たらねーんじゃねーの? )
( !? ンなこと……できるかよ。
それに俺は、見返りなんて求めてねえよ。)
( なんだよ、カッコつけんなよ。
告白する時は脇目も振らずハグしてたクセによ~。)
「…………」
屋上での激励から始まり、ダニーズへと誘い、図鑑を購入し更には用心棒として請け負った。
ここまで貢いでいるのだから何かしらの報酬が、アクションを起こしても良いのでは? と金髪の彼は尋ねる。
そして、少し離れた場所には偵察に訪れていた赤木と木暮の姿が。
「あれ、赤木キャプテンに木暮先輩……?」
「「 春野……! 」」
「どうしてここに……?」
「……牧の、海南の応援か?
しかし、あいにく奴はベンチだぞ。」
「はい。分かってます。
あの、一緒に観戦してもいいですか?」
「ああ。別に構わんが……」
「辛いんじゃないのか……? 無理するなよ。」
「はい……ありがとうございます。」
一昨日、バスケットに対するヘビーな胸中を湘北のメンバーに語っていた綾。マネージャーだからと無理をすることはないと二人は彼女の気持ちを察し、労っていた。
「桜木くん、早く来ないかな。
昨日はみんなで武園に行くって言ってたけど……そうだよね? 水戸くん。」
「ふーん、そうなんだ?」
「ああ。」
「あの馬鹿が……!
翔陽との戦いでちょびっとだけ良いところを見せたからって、完全に調子に乗っとる……!」
練習をサボった事実に腹を立てる赤木だが‥‥
「どうやら徹夜で練習してたみたいっすよ。今頃、くたばって寝ちまってるのかも……」
「! そうなんだ……」
「桜木はちゃんと練習してたらしいじゃないか。良かったな、赤木。」
「どこまで甘いんだ、お前は……」
内部事情を知り、咄嗟にアシストをする彼に友情の深さを感じた。
昨夜‥‥軍団と別れた桜木は体育館へと足を運び、一睡もせず黙々と練習に励んでいたらしく席を外していた。
その後、綾はあるお詫びの言葉を述べる。
「水戸くん。昨日は無神経なこと言っちゃって本当にごめんね……」
「!」
「綾?」
ーー‥
……俺はパスしとくぜ。
神奈川最強のエース御一行様と一緒な上に、みんなでワイワイガヤガヤ……
なんて俺の性分じゃねーからな。
‥ーー
仙道に誘われた、IH終了後の横浜デート。
水戸が自身に好意を抱いていると知っていながら‥‥一緒に行こうと軽薄な発言を、不愉快な思いをさせてしまったことに申し訳なさを感じていた。
「……デートする日。当然、彼氏も来るんだろ? なら俺の出る幕じゃねーなって、そう思っただけさ。」
「水戸くん……」
だから気にすんなって、と彼は笑った。
「うん……
でも、前向きに考えておくとは言ってたけどまだ行くって決まったわけじゃ……」
( 大体の事情は飲めたわ。
牧くん、ああ見えて案外嫉妬深いもんね~? )
「それは裏を返せば綾のことが心配で心配でたまらないってことでしょ!
まったく……第一、彼女を放ったらかして置いていく彼氏がどこにいるのよ?」
「そっか……そうなんだ、そうだよね。
さすがカナちゃん。
恋愛のスペシャリストだね?」
「ハテナはいらないでしょ、ハテナは!」
「ごめんなさ~い。」
( 西東さん、すげー迫力だな。
仲良きことは美しきかな、ってか?
……ホント、謙虚だよな。
俺らとタメだとは到底思えないぐらい大人びてるよな……春野さん。
それに、何も無神経だとは……
俺が勝手にヤキモチ焼いちまってるだけで…… )
笑い合う二人を横目に
また彼も、綾のことが心配でならない憂わしげな表情の水戸なのであった‥‥
「「武園! 武園!」」
「「海南! 海南!」」
主将の黛(まゆずみ)や小田らに向けた黄色い声援と、常連校のサポーターたちに見守られる中
双方のチームがついに会場入りを果たした。
白いユニフォーム姿の選手たちを捉えた綾はスーッと息を思いきり吸い込み‥‥
「宗くん! 武藤先輩!
みんなも、頑張って~!!」
「!!」
「綾ちゃん……!」
「健気だよな、春野は。
牧はベンチだってのによ……なぁ、神?」
「あれが、綾ちゃんの良いところですよ。」
( 嬉しいな。本当に来てくれたんだ。
俺が先に見つける予定だったのに……
そういうところなんだよな……綾ちゃんは。)
当初は自分が先に発見してみせると‥‥自信があると意気込んでいたのに。先を越され、ちょっぴり悔しいけれどお腹から大きな声を出し、いち早く名前を呼んでくれた。
明るくて、無邪気で、優しくて‥‥
そんなところが、好きで好きで、たまらない。
どうしようもなく愛おしい。
( 頑張ってくるね、綾ちゃん。)
少しの間‥‥神は綾の姿形を目に焼き付ける様に、じっと上方を眺めていた。
「おいおい春野……あくまでも偵察なんだから、あんまり目立つなよ……? 武園にも悪いだろ。」
「まったくだ……」
「先輩……ご、ごめんなさい……」
その直後、観客席では顔中に冷や汗をかく木暮と赤木の姿があった。軽く注意を受け咄嗟に謝る綾だが
あの人は、春野さん!
コート上の天使だ!!
牧さんの、俺たちの応援に来てくれたんだ!
よっしゃ! これなら百人力だぜ!
主将・牧紳一の恋人である綾のその叫び声、声援の効果は凄まじく海南サイドは大盛り上がり。
「すごっ……綾、人気者じゃん!」
「「 さすが我らが誇るマドンナ! 」」
「噂になってるだけのことはあるな……」
「そんな……」
天使……? この女、一体何者なの……?
海南の知り合い?
彼女の知名度の高さに一同は驚いていた。
その時、ヒソヒソと話し声が聞こえ後ろを振り返ると
「「!!」」
「あ……うるさくしちゃって、ごめんなさい。湘北高校のマネージャーの春野です。」
「きゃー! 可愛い!」
「えっ……」
「海南のキャプテンと付き合ってるっていう、美男美女のカップル!?」
「は、はい……」
「彼氏は? 試合に出ないの? 声かけたらいいのにー!」
「…………」
各高校に知れ渡っている牧と綾の二人の名前。噂通りの清楚な風貌に武園学園の女子生徒たちは大興奮。
綾は恥ずかしさから顔を真っ赤にしていた。
そんな人気絶大な彼女だが、声を張るまで気付かれなかったワケは
ゆったりとした身のこなしが
路辺に咲く冴えない花だからなのだろうか。
( カップル……かぁ。
すぐ下に、近くにいるんだけどな……
紳ちゃん…… )
一方、海南側のベンチでは清田と牧の二人が何やら話し込んでいた。
「清田、しっかり試合を見ておけよ。
こうして観戦することも大事な勉強のうちだ。
相手の良いところは盗んでも構わんからな。」
「はっ、はい……!」
( 綾さんが応援に来てる……!
くそっ、俺も試合に出てえ!
そんでもって、今度こそカッコいいところを見せたい! )
「?」
何やら緊張している様子の清田。
以前、屋外のバスケットコートで2on2を楽しんだ彼らだったが、結果は惨敗。
次こそは汚名返上をして綾に良いところを見せたいと燃えていたのだった。
「どうした、清田。」
「た、武園は女子が多いっすね!
緊張しちゃうなー、なんて……」
「臆するな。その女子生徒に囲まれて日々精進しているからこそ、ベスト8まで勝ち残れたんだろう。
次の試合では日頃の練習の成果を発揮してもらうからな。今回はここで大人しく見学だ。」
「なるほど……分かりました……」
牧は清田の頭をぐしゃっと掻き回し、試合に出られない彼の気持ちを諭した。
心の内をバッチリと見抜かれていたようだ。
一目綾の姿を見たい清田は、立ち上がって先ほど声がした方向を見やると
「お~い、綾さ~ん!」
「清田くん!」
額に巻いてあった紫色のヘッドバンドを外し、左右に高く振り回して己の存在を示した。
それに気が付いた綾はすぐさま手を振り返す。
「フッ、デネブか……」
「はい?」
そんな明るい出で立ちの彼を見て、牧はニヤリと微笑む。当の本人は首を傾げている。
「牧さん……なんで綾さんの顔を見て、振り向いてあげないんすか?」
「……いいんだ。
アイツとは、いずれ……なんとかなるさ。」
「えっ……!?」
事情を知らない清田は、先ほどから一度も綾の姿を見ようとしないことと、この妙な発言にある懸念を抱いていた。
( なんとかって……まだ別れたままなのか……!? )
「それよりも、顔が赤いぞ。どうした?」
「えっ!? いや、何でもないっす!」
「まさかお前……例の写真のことを考えてるんじゃないだろうな?」
ギクッ‥‥!
言い当てられ口から心臓が飛び出そうになる。
" 例の写真 "
それは綾の着替え中のもので、事故とも呼べるほど衝撃的で刺激的な一枚だった。
真横に座っている高砂を含む他の部員たちも、彼の冷や汗まみれの顔を見て唖然としていた。
「なっ……そんなわけないじゃないすか、牧さん!!
思ったより胸もデカくてエロい体してんな~なんて、ちょびっとも思ってな……」
「「 !? 」」
ついうっかり本音が漏れてしまった。
静かに怒りを燃やす中、牧のつりあがった凛々しい眉が一層高くなる。
「清田、貴様……もういっぺん言ってみろ……」
「はっ……やべっ、牧さん! すんません!」
が、気付いた時にはもう手遅れ。今日一番の大失言を犯した清田。あまりの恐怖に彼はおののいてしまった。真っ赤な頬は瞬く間に青ざめ、大慌てで平謝りに謝った。
「まったく……人の彼女で、何を考えてんだ!」
ゴツン! と頭上に牧の鉄拳が炸裂した。
よほど印象的だったのだろう。綾の淫らな下着姿が記憶に焼き付いてしまい、なかなか拭い取ることができずにいたのだった。
「清田って奴、殴られてたけど何かあったのか?」
「何だろう?」
まさか自身のことで揉み合いになっているとは露知らず‥‥綾は首を傾げていた。
「でも、" 人の彼女 " ……か。
良かった、綾さんと元に戻れたんすね。」
「ああ。課題は山積みだがな……」
「課題……ですか?」
二度目の別れを告げた後、牧は一枚の便せんに自身の嘘偽りない気持ちを書き綴った。
半ば諦めかけていた矢先に彼女からのまさかの告白。
トントン拍子に事が運んでいると思いきや、実際にはこなさなくてはならない問題が数多く存在していた。
「清田、お前の馬鹿野郎……あれはなかなかに効いたぜ。」
「……!」
それが功を奏したのかも知れんな、と悪戯に微笑んだ。
ーー‥
ま……牧さんの、バカヤローー!!
‥ーー
元恋人が体育館に訪れたあの日
別れを決心した牧に対し、清田は初めて悲痛な叫び声を上げた。綾以外の女性と一緒になることが
どうしても、どうしても、許せなかった。
「あっ、あれはつい勢いで……
勘弁してくださいよ~、牧さん!」
「それに、ゴンさんとも約束したからな。」
「ゴンさん……?」
「ある時計屋の爺さんでな。俺たちの恩人なんだ。」
ーー‥
牧くん、君は実に誠実な好青年だ。
これからもお嬢さんを守ってあげてほしい。
二度とあんなことがないように、
今後もずっと仲良くしておくれ……
‥ーー
「俺は……もう二度と無理強いはしない。
どんなに時間がかかっても構わない。
焦らず、アイツのペースに合わせると決めたんだ。だが、何かあればすぐに駆け付けるつもりだ……!!」
過去に嫉妬心に狂って襲い、傷付けた‥‥
二人三脚で歩んで同じ景色を見ていきたいと、そう宣言した。
もう、心に迷いや気持ちが揺らぐことはない。
ただただ、愛情を惜しみなく注いでいきたい。
だから‥‥
けれど‥‥
急がなくてもいい。ゆっくりでも構わない。
一歩ずつ、自分の元へ戻ってきてほしい‥‥‥
彼は綾との将来のビジョンを見据えている様な、そんな力強い目をしていた。
「牧さん……」
「「 牧…… 」」
( 綾さんと、一体何が……? )
見知らぬ人物の名に不思議がる清田だったが
先ほど述べられた " 課題 " の中に
綾の方を振り返れない理由があるのだと、
元恋人から彼女を守りたいと言う強い想いが、体中を通してひしひしと伝わってきた。
そんな男気を目の当たりにし
緊張のあまり思わず息を呑んだ、その時
「勝利の女神からの置き土産だぞ、お前ら。」
「「 監督…… 」」
後方から高頭監督が現れ、ドカっとベンチの脇にスポーツ飲料が詰まった袋を置いた。
「牧よ、どうやら約束を果たしたようだな。」
「!」
「お前のその目を見ていれば分かる。
何かが吹っ切れたみたいだな。」
「はい……!」
「よかろう。それでこそウチのエースだ。」
意気揚々と受け答えをする様子に、監督もまた心嬉しそうに破顔した。
「そこの通路で少々話し込んでな。
何か訳ありな表情をしていたが、私がつべこべ言わんでも大丈夫だろう。
実に素直そうで、気の良い娘じゃないか。
お前が選んだだけのことはあるな。」
( 綾…… )
缶を一つだけ取り出し、じっと見つめる。
手にした瞬間ひんやりとした冷たさが全身を突き抜けた。
それはまるで、ドアを閉めた後の冷蔵庫。
恐怖に怯えながら延々と暗所を彷徨っている。
彼女の心の温度もこれと同様なのだろう‥‥
" 訳あり " この言葉に牧は額にしわを寄せた。
( 暗闇からお前を救い出し、
あのいつもの笑顔を取り戻させてやる。
そして……バスケットのことも、必ず……! )
希望という名の暖かい一筋の光を差し込ませ
この腕で、強く、優しく包み込みたい。
彼はその到来を日々待ち焦がれている‥‥
「さあ、こんな所でぐずぐずしているヒマはない!
天使に報いるためにも、最低でも100点以上は取るぞ!
我が海南のバスケットがどういうものか武園に見せつけて来い!!」
「「 はいっ!! 」」
監督は選手たちに発破をかけ、コートへと送り出した。
「牧さん、この差し入れ……嬉しいっすね!」
「そうだな。」
( 綾、サンキュ…… )
「あの写真はちょっと良くないよな、牧……」
突如、神妙な面持ちをした高砂が話を振ると
「ああ。近々、アイツにはそのことも……
「打ち明けないといけませんね。」」
「!」
「いつまでも秘密にしておくわけにはいきませんよ。ですよね、牧さん。」
ベンチの傍にいた神が、言葉を被せる様にして話しかけてきた。
「神!」
「神さん、いつの間に……!」
「神……もうすぐ試合だ。行ってこい!」
「はい……頑張ってきます。牧さん。
いや、" 牧先輩 " 。」
「「!?」」
「何……?」
彼はそう言ってコートの中心へと駆けていった。
元恋人であるかおりが激白した、友人が盗撮をしたとされる大量のスナップ写真。
綾にはいつか話さなければならないことは分かっていた。
彼女を巡り、何かと対立する牧と神。
一触即発な空気と言ってしまえば大袈裟だが
あの日以降‥‥やっと口を聞いたと思いきや、この様な挑発ともとれる発言と態度。
表情が歪み、雨雲の如く薄暗さを帯びていく。
( 神……あの野郎…… )