空っぽの心〜獅子奮闘 編
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夢小説設定ここでは名前を自由に入力できるぞ。お前の好きな名前を入れてみてくれ。それにより面白みも増すだろ。
と言っても女性ばかりだが……
ん? 最後だけ男か。奴は、アイツが初めて……
いや、すまん。何でもない。では、よろしく頼む。
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6月初旬の雲ひとつ無い、短夜に‥‥
彼らの想いは高ぶるばかり。
プルルル‥‥
神と通話後
しばらくして牧に電話をかけた。
静寂が支配する中、幾度となく耳元に響き渡るコール音。
その機械的な音色が彼女の緊張感を高めた。
「もしもし。綾か?」
「牧先輩……」
大好きな愛しの彼の声。
昨夜、電話したばかりなのに。
今までずっと当然の様に会話をして、隣で聞いてきた声だというのに。
そんな野太くて、大人びた優しい声を
いつまでも、いつまでも、聞いていたい。
「飽き」「マンネリ」「倦怠期」
こんな言葉は二人には存在しないのであろう。
付き合いたての初々しいカップルの様に
ドキドキして、心が弾む。
やわらかなクッションをぎゅっと抱きしめた。
「お忙しい中、今晩も電話してしまって……ごめんなさい。」
「いや、大丈夫だ。晩メシや風呂もとっくに済ませたからな。あとは寝るだけだ。」
「え……お風呂……?」
綾はとある事を思い出し、顔中を真っ赤にさせた。
いつぞやの、鍛え抜かれた彼の逞しい肉体や凛々しい表情が脳裏に浮かび上がったのだった。
「? やらしい妄想でもしていたのか?」
「そっ、そんなこと……!」
「ハハ、冗談だ。
綾、連絡ありがとう。また話せて嬉しいぜ。」
( 紳ちゃん…… )
他人行儀な呼び方、言葉遣いになっても変わらない、彼女の慌てた声色。
牧は綾が今どんな表情をしているのか容易に想像ができた。
かれこれ一年以上も交際を続けている二人。連絡をくれたことが、ただただ嬉しかった‥‥
「今日一日、無事だったか?」
「はい……」
「そうか。良かった。もし何かあれば、遠慮なく言ってもらって構わんからな。」
彼女の安否を確認し、安堵する牧。
綾はゆっくりと立ち上がり
机の上に置いておいたチケットを手に取った。
「あの……
実は今日、仙道さんが体育館に来て……」
「!?」
「この間の、ラブレターの返事と……
県予選が終わったら、みんなで横浜の水族館に行こうって誘われて……
先輩によろしくって言っていました。」
「何……? それで、返事はしたのか?」
「手紙の件は、まだなんですけど……
お出かけはみんなで行く分には問題ないかと思って、OKしました。
勝手に決めてしまって、ごめんなさい……」
「綾……」
その後、綾は牧に是非とも聞いておきたかったことを尋ねた。
「先輩……あの手紙、捨ててないですよね……?」
「……ああ。廃棄などしていない。」
「ですよね、良かった……!」
「綾……俺がお前に贈った手紙は大事にしてくれているか?」
「はい、もちろん……!
クローバーのアクセサリーも大切にしまってあります。」
「そうか。それを聞いて安心したぜ。
これは例えばの話だが
もし、俺が仙道なら……
捨てられたと発覚したら、とても残念に思うだろうな。奴の気持ちは痛いほど分かる。
だから俺はそのようなことは絶対にしない。」
他人の気持ちになって考える。
それは恋愛に限らず、とても大切なこと。
筆を走らせ‥‥
熱い想いを綴った愛しの彼女へのラブレター。仙道と同じ立場である牧は気持ちを逆撫でする様なことはしないと、そう強く言い切った。
「良かった……!
私に色々と非があるんですけど、仙道さんに申し訳が立たなくて……
断る理由が見つからなかったんです。
先輩がそんなひどいことをするはずないって
心のどこかで信じていました。
やっぱり、牧先輩はすごく優しい方ですね!」
「!」
「……サンキュ。
だが、おだてても何も出んぞ。」
「何も、要らないです。」
「ん……?」
「先輩と……こうして通話ができて
声を聞けただけで、たまらなく嬉しいから……」
「綾……」
ーー‥
私は紳ちゃんとこうして一緒に居られるだけで、充分幸せだよ! 本当に、ありがとう……
‥ーー
花芽吹く春にデートをした、あの日‥‥
入学祝いの品として綾に贈った腕時計。当時の記憶が瞬時に思い出される。
あの時と、全く同じ。
決して見返りを求めない
彼女の姿勢に、優しさに‥‥
胸を揺さぶられた牧は頬を桜色に染めていた。
ー そして
「あと、藤真さんを誘ってみたらいいって、仙道さんが……」
「何……? 藤真を……?」
今の一言で、重い現実に引き戻された。
湯冷めをした様に全身の火照りがとれていく。
眉をひそめ、明らかに不満そうな声を漏らす。
「はい……
でも、どういうことなのか分からなくて。
私……健司くんにものすごくいけないことをしてるんじゃないかと思うんです。
とても、とても、大切な何かを見落としてるんじゃないかなって……」
「…………」
「試合の後も……決意を、自分の気持ちを表明してたんじゃないかって、宗くんが……」
「!」
「それに……今ひどく落ち込んでいるのかもって考えたら、心配で……」
( 綾……
お前ってヤツは、本当に…… )
「大丈夫だ。」
「え?」
「藤真は、これしきの事で落胆するような男じゃない。
冬の選抜大会を目標に鍛錬しているはずだ。負け試合など考えたくもないが、
俺が奴の立場でもそうするだろうからな……」
昔から、根っからの負けず嫌いである牧。自分達が敗北した姿など考えたくもない。
が‥‥藤真も同等にズルズルと尾を引く様なメンタルの弱い人間ではないと、そう断言した。
「なるほど……冬の選抜が……
もう既に気持ちを切り替えてるってことですね。」
( 健司くんも、強いなぁ…… )
ーー‥
春野綾か……
俺たち、恋のライバルになるのかもな。
牧……俺と勝負しろ!
決して飾らない、
ありのままの彼女が好きなんだ!!
いつかきっと……いや、必ず……!
春野の心を手に入れてみせる!!
‥ーー
牧への挑発と、力強い決意。
そして‥‥綾への熱い想い。
忘れるはずもない真新しく、且つ今なお鮮明に思い出される当時の記憶。
「奴を誘ってみろ、か。
こればかりは、俺も仙道の意見に賛成だ。」
「……!」
「綾……
これは、もしもの話だが……
以前、藤真には恋愛対象として見られていないと言ったな。」
「は、はい……」
「だが、奴は……
お前をそのように見ているとしたら、どうする?」
「え……先輩……?」
" 一人の男として、女として
異性として見られているとしたら‥‥? "
突如、彼の口から湧いて出た一つの疑問。
この設問は一体何を意味しているのか。綾は戸惑いを隠せずにいた。
( 紳ちゃん……?
どうして、そんなことを聞くの……? )
「ごめんなさい。よく、分からない……です。」
これが、今できる精一杯の答えだった。
「そうか……」
( 分からない、か…… )
自分たちの出逢いの架け橋となり
先輩として、頼れる兄の様に接してくれ、いつも優しく微笑みかけてくれる。
そんな彼を、藤真健司という男性を
" 憧れの人物 " として尊敬しているのに。
自身を恋愛対象として見ていたら、なんて大それたこと、今まで考えたこともなかった。
しばしの沈黙が続く中‥‥
牧は彼女の気持ちを汲み取り、優しい口調で、また情熱的に徐々に声を大きくして自身の思いを伝えた。
「負い目を感じることはない。
その「何か」の意味が、いずれ分かる日が来る。そして……その時を迎えたとき
綾……お前は
決して現実から目を逸らさず、全てを受け入れてほしい。
俺も奴の熱意に、全身全霊で応える!!」
「! はい、分かりました……!」
勝負に受けて立つ‥‥!
熱意には、熱意で応える。
それが最大の恋敵である藤真に対する
友として、男としての、精一杯の誠意。
スポーツマンとしての礼儀でもあった。
近い未来、きっと真実に気が付く日が来る。
だから後ろめたさを感じる必要もない。
奴としっかり向き合い、気持ちを受け止めてやってほしい。
恋人である綾の存在が
いかに大きかったのか、かけがえのない大切なものだったのか‥‥
別れを宣告して以来ずっと後悔し通しの日々が続いていたが失って初めて気付き、ようやく気持ちにカタがついた。
完全に吹っ切れたであろう
牧の瞳には、少しの濁りも見られなかった。
( 紳ちゃん…… )
けど、と彼女は捕捉をする様に喋り始めた。
「ん……?」
「百歩譲って、その仮説が正しいとしても
彼は監督も選手もこなす立派な人で……
私なんかよりも可愛い女の子が周りにたくさんいるんじゃないかなって。
それに、健司くんにだって選ぶ権利があると思うし……」
「…………」
「何より、私は先輩の彼女……なんですから。」
「! 綾……」
彼に、私はそぐわない ーー‥
どこまでも控えめで、謙虚な姿勢。
引き際と言うものをよく理解している。
しかし、その様な所でさえも魅力的で‥‥
且つ藤真の心を惹きつけていることを彼女は自覚していない。
自分は正真正銘、牧紳一の恋人。
これは揺らぐはずもない、確かなこと。
頬を染めた綾は照れ臭くなり慌てて話題を他のものへと変えた。
その赤くなった箇所を少しでも冷まそうと、窓を開けてバルコニーへ。
手すりを掴み、携帯電話は耳に当てがったまま
その直後、空を見上げると‥‥
「それよりも先輩、ほら……!
夏の大三角が……!」
「何?」
綾は、牧を星空の旅に誘った
彼も同じ様にしてバルコニーへと向かう。
その後‥‥二人は天の川に光り輝く
三角の形をした星座を捉えた。
「すごくキレイ……先輩も、見えてますか?」
「ああ……よく見えてるよ。
あれが、かの有名な七夕伝説か。」
一等星である「こと座 」と「わし座」
この2つの明るい星は年に一度しか会えないと言う七夕伝説の主人公としても知られている。
その時
そよそよと冷気が吹いた。
その正体は、ひんやりとした穏やかな夜風。
「綾、大丈夫か? 寒くないか?
夜はまだ少し冷えるからな。上着でも羽織って暖をとっておけよ。」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。
先輩も……気をつけてくださいね。」
「ああ、サンキュ。」
風邪を引かぬ様にと互いを気遣う。
何気ない優しさに、思いやりに‥‥心がじんわりと温まっていく。
「あれが彦星のアルタイルで、織姫のベガで……アルタイルは牧先輩で、ベガは私かな……な~んて……」
「フッ、そうかもな。」
自分たちを星座に当てはめ、おどける様にして話す彼女に牧は思わず声を出して笑った。
( まぁ、お前に年に一度しか会えないってのはさすがにこたえるがな…… )
「あれ、じゃあ残りのデネブは誰だろう……?」
「!」
" はくちょう座 " を誰に例えるか考えていると
「アイツか……?」
「え?」
「ちっ、デネブは余計だな……」
一体どんな人物を思い浮かべたのか?
舌打ちをして面白くなさそうな表情をした。
" 邪魔者は排除する。ただそれだけのこと。"
間に割り込もうとする輩に、嫉妬心から少々苛立っていた。
「? それだと大三角にならないんじゃ……
宗くんに、清田くんですかね?
二人とは今まで以上に良いお友達になれそうな気がしていて……
中でも清田くんはすごく明るいし、適役かなって……」
「うーむ、清田か……」
「あと……宗くんが言っていました。
今日は星月夜だから、よく星が見えるねって。
私……こんなに素敵な景色を先輩と一緒に見ることができて、とっても嬉しいです……!」
「綾……」
電話越しで、こんなに小さな端末を通してだけど、顔は見られないけれど‥‥
リアルタイムで繋がっていることが
彼と同じ景色を見ていることが、嬉しかった。
ー その後、バスケットの話に移った。
「あさっての武園戦、応援に行きますね……!
先輩は試合に出場されるんですか?」
明後日に迫った海南大附属 対 武園学園高校の公式戦。決勝戦へと駒を進めるためにも、両校にとって重要な一戦だ。
「いや、俺と清田、高砂らはベンチだ。
スタメンは神と武藤を投入する予定でいる。」
「……そうなんですね。」
「ああ。俺たちが出るまでもないからな。
……神に、頼まれたのか?」
「はい。可能なら応援に来てほしいって……」
「そうか……」
ーー‥
俺……綾ちゃんの悲しい顔なんて見たくない。もう、見ていられない……!!
あの雨宮って言う女性も、牧さんも、絶対に許さない!
綾ちゃんが野郎に襲われるって……? 危ないって!?
そんなこと、絶対にさせませんよ。
俺が、彼女を守る。必ず守ってみせる!!
藤真さんにも、渡さない……!
" 俺…負けませんから "……!!
‥ーー
( 神……アイツは、未だにお前のことを…… )
試合同様に不可避である、この話題。
先日、海南の体育館で殺伐とした空気の中
再び神と対立した牧。
両者の間には未だ確執が残ったまま。
また、綾のバスケットに対する気持ちの変化にそっと寄り添う様に
牧は慎重に言葉を選びながら話した。
「アイツらも、きっと喜ぶだろうぜ。
しっかり声援を送ってやってくれ。
当日、よろしく頼む。」
「はい……!」
「しかし、会場まで一人では心配だな……
前にも言ったことだが、あまり単独では出歩かないようにな。」
二度目の別れを告げた、元恋人の存在。
どの様な猛威を振るってくるのか現状では全く想像もつかない。
自身が護ってあげられたらどんなに良いか‥‥
彼氏であるにも関わらず何もしてやれないこの歯痒さが悔しくて、悔しくてたまらなかった。
「ボディガードがいるから、大丈夫です。」
「ボディガード……?」
予想もしていなかった言葉に、声を漏らす。
「同じクラスの、水戸洋平くん。
桜木くんのお友だちで、高校に入学して初めてできた私の大切なボーイフレンドです……!」
「……!」
牧は過去の出来事を思い出していた。
陵南高校や津久武との試合会場などで何度か姿を見かけた事があったのだ。
そして、あの現場でも‥‥
ーー‥
テメェら……許せねー!!
春野さん…!
‥ーー
( 確か、リーゼント頭の……アイツか? )
「以前、三井先輩たちが学校の体育館に攻めて来た時も体を張って守ってくれて……
他にも高宮くん、大楠くん、野間くんも。腕っぷしも立つし、みんなすごく強いんですよ。」
「そうか……
それは頼もしいな。なら、安心かもな。」
「はい。」
( ボーイフレンドか…… )
― そして
夜のしじまに、物音一つしない静まり返った
この穏やかな夜に山場を迎えた両者は‥‥
「牧先輩……
私……先輩と一日でも早く向き合えるように、頑張ります。」
「! 綾……?」
「もっともっと努力して、貴方に相応しい女性になりたい。」
「…………」
「具体的にそれがいつになるのか、そもそもなれるのか……分からないけど……」
「なれる!! よな?」
「えっ……?」
「でなきゃ困る。
そうでなくては、俺の女は務まらんぞ。」
「はっ、はい……!
必ず、素敵な女性になってみせますから……
これからも期待していてくださいね!」
「ほぅ……そりゃ楽しみだ。期待してるぜ。」
二人は、そう言って微笑んだ。
いつもより幾分、声を張り願望や意気込みを語った。
そんな彼女を後押しする様に鼓舞をする牧。
肩書きなんて気にするな、と
そのままでも充分に綺麗だと
自分には勿体ないぐらいのイイ女だと‥‥
ただ笑ってそばにいてくれさえすれば良いと‥‥
そう、伝えたはずなのに。
現状に満足せず倒れてもめげずに起き上がる。
上へ上へと向上心を忘れない。
そんな精神力の強い彼女だからこそ、尊敬出来て、楽しくて‥‥そして互いを高め合える。
綾の健気で純粋な心に、牧は胸を打たれていた。
「そろそろ切るか……?
次からは電話ではなく、メールで構わんぞ。
その方が負担が少ないだろうからな。」
ぐすっ‥
「!?」
次の瞬間、耳元からすすり泣く声が聞こえた。
「先輩、ごめ……なさい。私が臆病者なばっかりに……名前で呼べないで、顔向けできなくて……
本当は……すごく怖くて、怖くて……
みんなの気持ちが温かくて、優しくて……
もう……誰にも傷付いてほしくない。
何も隠してないって、部活のみんなに嘘をついてしまって……」
( 綾…… )
通話の途中、感極まった綾は涙した‥‥
その透き通った雫と共に
次々と本音が、素直な気持ちがあふれ出た。
( 紳ちゃん……
泣いてばかりで、本当にごめんね……
私ね、一度は辞めようって思ったけど……
バスケもマネージャーも、まだまだ続けるよ。
嫌いになってしまいそう、なんて
このことは、今はまだ言えないけど……
絶対に無意味なものにはしないからね。
これには……バスケットには
貴方と歩んで来たかけがえのない日々が、
一緒に過ごした大切な思い出が、
ぎっしりと詰まってるんだもん。
笑顔で再会するためにも
大好きだよって胸を張って言えるように
私、頑張るから……!
だからそれまで、首を長くして待っていてね。)
「っ……綾……もう泣くな。
ゆうべ話したこと、覚えているか?」
「はい、もちろん……」
「あの言葉の通りだ。男に二言は無い……!
だからもう、泣くんじゃない。
お前に泣かれると、俺も辛い……」
「牧……先輩……」
ーー‥
" 牧先輩 " のままで……いい。
敬語のままでも、しばらく会えなくても構わない。
ゆっくり、一歩ずつ、お前のペースで
俺のそばに……俺のもとに戻って来てほしい。
お前が全力で応援してくれるのなら、俺も……全力で守り抜いてやる。
この命に代えても、必ずな……!!
‥ーー
忘れるはずもない
彼の優しさあふれる想いの数々‥‥
「水族館の件だが……前向きに考えておくよ。」
「! 本当ですか……?」
「ああ。」
「長電話になってしまって、ごめんなさい。
たくさんお話ができてとても楽しかったです。
先輩、おやすみなさい……」
「俺も、楽しかった。
風邪を引かないようにな。おやすみ……」
ピッ‥‥
通話を終了させた後、牧は部屋には戻らずバルコニーで物思いにふけっていた。
( 綾……
俺が不甲斐ないばかりに
泣かせてしまい、すまない……
まだまだ俺も、青二才だな……
もっと……強くありたい。
もっと寛容な心で……アイツを包んでやりたい。
それにしても仙道め……またしても余計なことを……
綾と藤真を急接近させて
とことん俺にたてつこうって魂胆なのか?
厄介なことにならなければいいんだが……
水戸か……
なるほどな。専属の用心棒ってワケか。
きっとそいつにも、告白されたんだろ……?
アイツの心を……
綾を、誰にも渡してなるものか……!
恋愛の対象としては、よく分からない……か。
奴は、藤真は……ただの友人なんかじゃない。
綾にとって、何か特別な存在なのかもしれんな…… )
しばらくの間、満天の星空を‥‥
一際明るく輝く夏の大三角を眺めていた。