空っぽの心〜獅子奮闘 編
name change
夢小説設定ここでは名前を自由に入力できるぞ。お前の好きな名前を入れてみてくれ。それにより面白みも増すだろ。
と言っても女性ばかりだが……
ん? 最後だけ男か。奴は、アイツが初めて……
いや、すまん。何でもない。では、よろしく頼む。
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軽快な挨拶と共に姿を現した者は、まさかの‥‥
「湘北のみなさん、どうも。」
「仙道さん……!」
「「仙道……!?」」
陵南高校バスケ部のエース・仙道彰であった。
重力に抗う様に逆立った特徴的なヘアスタイルは健在で、190cmと長身の彼。
半袖のスクールシャツとズボンの学生服姿がよく似合っていた。
突然の訪問者に館内はどよめいている。
綾はその注目の人物の元へと駆け寄っていく。
「どうしたんですか、突然……?」
「綾ちゃんがなかなか連絡くれないからさ。来ちゃった。」
「えっ……」
「それにこの前、君も突然ウチの学校まで来ただろ。だからこれでおあいこだな。」
「……!」
そう言って仙道はニコッと微笑んだ。
以前、陵南高校を訪れた綾。
友人であるカナに強制的に連れて行かれ当初は戸惑っていた彼女だったが、終わり良ければすべて良し。
体の疲れを感じ、後々の試合に影響を及ぼしたが魚住をはじめ陵南の選手達たちと交流を図ることが出来、充実した一日となったのだった。
この時、仙道の迫力あるダンクシュート姿が頭をよぎり彼の顔をまともに見ることができなかった。
そんな中、桜木が二人の元へと近付く。
喧嘩を売る様な面持ちでいきり立っていた。
「くぉら、センドー!!
のこのこと現れやがって、一体何の用だ!?」
「相変わらずだな、桜木。
てっきり死ぬほど練習してるのかと思ったけどな。」
「この天才、庶民とは頭の作りが違うんでね。努力などしなくても……
って、今はそれどころじゃねーんだ!」
と、チラッと視線を落とし綾の顔を見やる。
( 桜木くん…… )
「それどころじゃない……?」
桜木の発言に不思議がる仙道。
すると彼の視線を遮る様に、ある人影が綾の目の前に現れた。
「ルカワ……!」
「次は絶対負けねー……コイツに何の用だ。」
「楓くん……」
男を鋭い目つきで睨みつける。
以前、陵南との練習試合で敗北した彼ら。
桜木と同等‥‥いや、それ以上に仙道を目の敵にしている流川のその眼力は凄まじかった。
「よう、流川。そんなおっかねえ顔すんなよ。
ちょっと綾ちゃんに会いたくてさ。」
口角を上げ、用件をさらっと言いのけた。
「「 何……!? 」」
「え……?」
「すいません、赤木さん。
少しだけ、マネージャーをお借りしますよ。」
「ああ……
仙道、一体何のつもりだか知らんが、今は一刻を争う大事な時期なんだ。頼む……春野をあまり刺激しないでやってくれ。」
( キャプテン…… )
今はただ、そっとしてやってほしい‥‥
彼女の気持ちや心の迷いを理解した赤木は
解決に至るまでこれ以上問題を増やさないでくれと切望していた。
「……分かってますよ。綾ちゃん、おいで。」
次の瞬間、仙道は綾の手首を掴み走り出した。
「えっ……!?」
「センドー! 綾さん!」
「綾!」
彼らの声も虚しく二人は何処かへ消え去った。
「南郷に神に藤真といい、モテるのね~、綾。
仙道も一体何をしに来たのかしら。
もしかして、愛の告白だったりして……?」
「「!?」」
「あ、アヤちゃん……?」
「まったく……」
突然の爆弾発言に驚きを隠せない男たち。
こりゃ牧も大変ね、と同情する彩子。
綾を取り巻く彼らの恋を応援して(?) 人一倍楽しんでいるのは、実は彼女なのかもしれない‥‥
ーー
行き着いた先は、人気の無い体育館裏。
仙道は頃合いを見計らい
パッとその大きな手を離した。
「仙道さん、突然こんなこと……困ります……」
流川に続き、二人きりとなった綾と仙道。
牧への罪悪感と予測不可能なこの事態に動揺を隠しきれずにいた。
「ごめんな。
でも、こうでもしないと二人きりになるチャンスなんてそうそうないだろ。」
「…………」
( あまり元気がないな…… )
「ついさっき、桜木が言ってた
" それどころじゃない " って……?」
昨日、翔陽との試合を観ている時から感じていた。髪型の変化も然り持ち前の元気さや明るさが無くなり、まるで別人の様に沈んでいる彼女。事情を聞き出そうと話題を変えた。
「私、彼と……牧先輩と別れてから
バスケのことがよく分からなくなっちゃって……
インターハイ予選の真っ只中なのに、何言ってんだって感じですよね。」
「牧、先輩……?
別れた……? バスケが……?」
自身が心に抱える悩みを自嘲気味にそう話した。
が、仙道は大して驚いた顔をしていなかった。
「ある事情があって一度は別れたんですけど、またお付き合いをしていただけることになって……」
「……なるほどな。」
彼女の様々な事情を汲み取った仙道。
二人の間にわずかに沈黙が流れた。
そして、彼は意味深な一言を口にする。
「翔陽の4番とは、ずいぶん親しいんだな。」
「え……? 藤真さん……のことですか?」
突然の藤真の名に、思わず顔を上げた。
「ああ。」
「親しいだなんて、おこがましいですけど……
藤真さんは……いつも優しくて……
出会った頃からよく相談に乗ってもらっていました。私にとって、とても大切な人です……」
そう言って両手の指先を口元に当て、過去を思い出すかの様に話した。その表情はどことなく嬉しそうで頬をほんのりと染めていた。
「…………」
その顔を黙ったまま見つめる仙道。
( 優しいのは……相手が君だからじゃないか……? )
と、ほんの少しだけ切なげな表情をした。
口にするのは容易い。
一瞬、しようとも考えた。
しかし、してはいけない様な気がして止めた。
" 時期尚早 " の言葉が彼の脳裏をかすめる。
「……まあいいか。これで確信したぜ。」
「仙道さん……?」
「わりィ。実は昨日、牧さんと藤真さんが二人で話してるのを聞いちまったんだ。」
「え……!?」
「別に、盗み聞きしていたワケじゃないぜ。」
偶然だからな、偶然。
と誤解を招かぬよう事実を伝えた。
試合後に通路で起きた出来事。
牧と藤真が対立し綾への想いを激白していたあの時‥‥なんと彼は壁際で真実を聞いていたのだった。
「二人は、何を話してたんですか……?」
神と会場を後にする際、一目見たくて
なぜか本能的に見なくてはいけない様な気がして振り返って見た彼らの最後の姿。
二人は前例を見ない異様な雰囲気を醸し出しており、どうしてしまったのかと胸の奥底でずっと気にかけていた。
少々ためらったが意を決して尋ねると
「……それは、俺の口からは言えないな。」
彼女の顔を見据え
あまりにも真剣に、切なそうな表情で話す彼。
「え……どうして……?」
不意に、藤真の顔や声が綾の頭をかすめた。
ーー‥
春野……これで涙を拭くんだ。
相変わらず、優しいんだな。
久々に会えて本当に嬉しかった。
ここまで綺麗になってるとは驚いたぜ。
じゃあな。" コート上の天使の綾ちゃん。"
俺はこれでも一応、監督なんだ。
出会った頃のように、何でも相談してほしい。
俺たち、友達だろ……?
早めに帰って、ゆっくり休めよ。またな。
春野……!
‥ーー
( 健司くん……? )
大切な「何か」に気付かなければいけないのに。どうしても、分からなかった。
( 無自覚か…… )
口角を上げ、不敵に微笑む仙道。
この時、運命の歯車が動き出した様な
空気が一変した様な、そんな気がした ‥ーー
残された湘北メンバーたちはというと
予想だにしなかった仙道の登場に加え、迂闊にもマネージャーの綾まで奪取されてしまった。
二人が何を話しているのか気が気ではない彼らだが、それよりももっと気になるのは先ほど彼女が暴露していた重く苦しく、そして切ない悩みの数々‥‥
宮城と赤木が沈黙を破る様にして喋り始めた。
「あれは、俗に言うスランプってやつだな……」
「ああ……そうならざるを得ない程のショックな出来事があったんだろう。
今朝も思い詰めた顔をしていたからな。
よほど奴は……藤真は春野にとって大きな存在であり、心の拠り所なんだろう。」
「ホケツ君が、憧れの人……」
「「 だから補欠じゃねーっての。」」
三井と宮城は手を左右に振り、間違いを正す。
「ぬ……!?」
「テメーとは月とスッポンだ。」
「んだと!?
やいルカワ!いつもいつもカッコつけやがって、この目立ちたがり屋め!
綾さんが何を隠してるって!?
疑ったりしたら綾さんに失礼だろーが!!」
藤真と桜木では立ち位置も経験値も全てにおいて差が開いていると、次元が違うと指摘する流川。
それも含め、綾への救済の言葉と疑いをかけたことに腹を立てる桜木だが
「泳いでた。」
「何……?」
「アイツ……目が、泳いでた。」
「「!?」」
「テメーは見抜けなかったのか。
アイツは……思ってることが、すぐ顔に出る。
だから嘘をついてるって分かった。」
「「 流川…… 」」
( 綾さんが、嘘を……? )
自分に正直であるがゆえに、嘘をつくことが下手な彼女。やはり彼の目はごまかせなかった。
「あのコ、牧とまた付き合い始めたって言ってたけど、どうして別れちゃったのかしら……」
「何か……あるな……」
なぜ自分たちに隠す必要があるのか?
一緒にいた女性とは?
牧の想いに、そして真実とは一体何なのか。
正直に打ち明けてくれたはいいが疑問点だらけの彼ら。考えれば考えるほど謎は深まっていく。
「チッ……」
牧とは何事も無かったかの様に見えた。
問題ないと思っていたのに。
実は、一番の問題点だった。
( 作り笑いなんかすんな……どあほぅが…… )
「そういやゴリ、なぜ綾さんがジイと再びお付き合いを始めたと分かったんだ?
別れてしまっていたと、ついさっき発覚したばかりなのによ。
それに今朝、綾さんに手を上げようとしやがって……!!」
「本当なのか、赤木!?」
「赤木先輩が……!?」
「あの時はさすがにヒヤッとしたぜ。」
「俺も俺も。」
「確かに。」
桜木のトンデモ発言に、その場にいなかった木暮と彩子の二人は驚いていた。
そんな彼に対し、赤木は怒り口調で叫ぶ。
「たわけが!!
はなっからそんなつもりはないわ!!
……今朝の件は、ほんの験担ぎに過ぎん。ここのところ思い詰めた顔ばかりしていたからな。
退部するのかとそう勘をくぐっていただけだ。
それに、噂が立っていなかったからな、噂が。
春野は貴様よりも" 有名人 "ということだ。」
「ぬっ、ゴリ……!」
的を射た回答に、ぐうの音も出なかった。
今朝、校門前で綾に喝を入れた赤木。
" 牧の大事な恋人 " を預かっていると‥‥
そう発言した理由は、牧と別れたというデマや悪い噂が流れていなかったため。
よって二人の関係が戻ったのだとすぐに察したのだった。
また、綾がバスケットから身を引こうとしているのではないかと彼は懸念を抱いておりそれは見事に的中していた。
全国制覇を夢見る男・赤木剛憲。
大好きなバスケットから、部活から退いていく人間を過去に何度も目の当たりにしてきた。
その辛く苦しい経験によりトラウマに、特に敏感になっているのかもしれない。
( 赤木…… )
( ダンナ…… )
( 赤木先輩…… )
( 綾さん……
あんなに震えて、悲しそうな顔を……
そういえば、あの時も洋平に何かを言いかけて……!? )
ーー‥
バスケのことだけは……言わないで!
新聞に載るなんてすごいねぇ。
桜木くんはウチの学校の有名人だね!
うん、 " 天才 " って意味だよ!
ごめんね、何でもないの!一緒に教室行こっ!
‥ーー
彼女に握られた、小さな手の温もりを思い出す桜木。
今朝の妙な行いも含めモヤッとした気持ちで胸がいっぱいになっていた。
( 今度、綾さんに直接聞いてみよう…… )
すると、ボールを指で器用に回転させた宮城が桜木にとある疑問を投げかける。
「花道、大体 " ジイ " ってのは何なんだよ。藤真のことと言い、そんな風に呼んでたらさすがの綾ちゃんも怒るんじゃねーか?」
「まさか、あの天使のように優しい綾さんが?天地がひっくり返ってもありえん!
この間リョーちんも見ただろ!
あの老け具合、どう見てもハタチを超えてるとしか……」
陵南の練習試合で姿を見かけて以来、牧のことをジイと呼んでいる桜木。
ひょっとして歳をごまかしているのでは?と彼は素直にそう思った。
「「 ハァ…… 」」
「まあ、牧は全国的にも有名だから顔ぐらいは知ってるけどな。どうなっても知らねーぞ。」
それより、と宮城は三井に話を振る。
「三井さん。さっき、何を言いかけたんすか?
それにあの慌て様……フツーじゃないっすよ。」
「ああ?」
「ダニーズに行ったの、この中で三井さんだけですからね。試合前にも綾ちゃんと仲良さそうに話してたし。」
「そうだ、ミッチー!
何か知ってるなら教えてくれ!」
翔陽戦の前日、レストランへと足を運んだ綾と三井。
控え室での出来事や先ほどの不審な行動に疑問を抱いた宮城は、彼なら何か詳細を知っているのではないかと予測を立てていたのだ。
「…………」
「三井……どうしたんだ?」
「三井先輩……?」
「……?」
沈黙の状態が続き、再び静まりかえる体育館。彼はあの日の夜に起きた出来事を思い返していた。
( あの時……
とんでもない現場に遭遇しちまった。
修羅場というか地獄絵図というか
見てはいけない物を見てしまった感じだった。
一緒にいたあの女は、一体何者なんだ……?
牧の昔の女か……?
雰囲気からして……きっと、キスをして……
馬鹿の一つ覚えみてえに
あれだけ " 紳ちゃん " って言ってたのによ。
それに、藤真は……春野のことを…… )
拳を震わせ、グッと力を込める。
「……知らねーな。」
「「 !? 」」
「先輩……顔が赤い。」
見兼ねた流川が、ボソッと小さく呟く。
「あっ、赤くなってねーよ!
ヨリを戻したんなら、俺の罪滅ぼしも無事終了ってわけだ!
ハッピーエンドで結構じゃねえか。
バスケのことだって……牧がいるんだ、別に何の問題もねえだろ。
お前ら、さっさと練習を始めるぞ!!」
「三井さん……」
「み、ミッチー……?」
「「 三井…… 」」
ーー‥
ゔっ……
うわぁぁぁぁ!!
紳ちゃん、紳ちゃんっ……!!
‥ーー
( 言えっかよ……
アイツが、あんなに泣きわめいて……
言い出しっぺのクセに気の利いた言葉ひとつかけてやれなくて
俺は何もできずに、ただそばにいてやることしかできなかったなんてよ。
カッコ悪ぃ……
唯一の救いは、奴らが元に戻ったってことか……
流川が言っていたことも……どうも引っかかる。
隠し事もそうだが、他にもきっと何かを企んでいるに違いねえ。
くそっ……!
春野、早く戻ってきやがれ……!! )
そして、仙道は本題に入った。
「ラブレターの返事、聞かせてくれるかな。」
「!?」
( あれ、やっぱりラブレターだったんだ……! )
津久武との試合後、流川からの告白と口づけに困惑した彼女は瞳から大粒の涙をこぼしていた。
そんな中、二人は通路で偶然出会した。
力強く抱きしめられ、小さな掌にゆっくりと握らされたもの。
それは仙道から綾への恋文だった。
ーー‥
コート上の天使・綾ちゃんへ
綾ちゃん、君のことが好きだ。
だけど、君を困らせるだけだろうから
すぐに付き合ってほしいとは言わない。
今は俺を意識してくれればそれでいい。
仙道 彰
天使を、このまま放っておけないさ。
牧さんと……今後、何かあったら俺のところにおいで。いつまでもずっと、待ってるから……
‥ーー
( 仙道さん…… )
手紙の内容に、抱きしめられた感覚と
彼の優しさあふれる言葉の数々。
途端に恥ずかしくなり、綾は頬を染めた。
が‥‥その後すぐある肝心なことに気が付く。
「ごめんなさい。あの手紙……
一度は目を通したんですけど、牧先輩に取り上げられてしまって……」
「!?」
以前、牧と藤真の三人で訪れた小さな公園。
綾が手紙を読み上げた際、ラブレターだと分かり気を悪くしたのか牧の手によって即没収されてしまったのだった。
実際に廃棄したのかどうか定かではないが、それは紛れもなく仙道が真心を込めて書き綴ってくれたもの。
罪の意識や申し訳なさが募り謝罪をした。
( 紳ちゃん、本当に捨てちゃったのかな……? )
「そうか、それなら仕方ないな。
だけどその真っ赤な顔……少しは俺のこと意識してくれてるってことだよな。」
「は、はい。もちろん……」
「 オッケー……! 」
今の一言でスイッチが入ったのか、仙道は嬉しそうに微笑んだ。
スッ‥‥
ズボンのポケットからある物を取り出し、綾の前に差し出す。
「これ、知り合いから譲ってもらったんだけど良かったら一緒に行かないか?」
「え……アクアリウム横浜のチケット……?」
彼から差し出されたそれは、手のひらサイズのペアチケットだった。
イルカが水しぶきを上げて元気良く飛び跳ね、夜景に映える煌びやかな観覧車の写真も印刷されている。
「ああ。一度行ってみたくてさ。
予選が終わったあと、インターハイまで10日位あるだろ。もし良ければその時にでも……」
「……!」
彼が指すその場所とは、巷で大人気の水族館。
遊園地も併設されており小さな子どもからお年寄りまで老若男女問わず一日中楽しめる大型施設。
雑誌やメディアでも注目されている、言わずと知れた恋人たちのデートスポットだ。
「二人きりが理想なんだけど……無理だよな。」
「もっ……もちろん、ダメですよ!」
と、両手の人差し指で咄嗟にバツマークをつくり禁止であることを伝えた。
( ! 可愛いな…… )
「じゃあこうしよう。
集団旅行ってことで牧さんや友だちも誘って、複数人で楽しく行こーか。」
「はい……分かりました。」
「よかった。来た甲斐があるってもんだぜ。
それじゃ地区予選、お互い頑張ろうな。
海南との試合……必ず観に行くから。」
「は、はい……仙道さんも頑張ってください。」
「サンキュー。
桜木や流川によろしく言っといてくれ。
あと……牧さんにも。」
そう言って踵を返し去って行くのかと思いきや
突然こちらを振り向き、何かを思い立ったかの様に話した。
「あ、藤真さんを誘ってみたらいい。
そうすれば真実が分かるはずだぜ、きっと。」
「え……?」
「じゃあね、綾ちゃん。」
「せ、仙道さん……お気をつけて!」
仙道はそう言い残して湘北高校を後にした。
挨拶をする綾に右手を挙げ、それに応えていた。
ーー
その後、体育館に戻ってきた綾。
想定外の出来事に彼女の顔は未だ真っ赤なまま。
「「 春野……!!」」
「……!」
皆が驚く最中、桜木がとてつもない速さで綾の元へ駆け寄ってきた。
「綾さん!センドーはどこに……!?
ハッ……!
その顔は、まさか……!?」
( 本当に愛の告白を……!? )
「予選が終わったら、みんなでデートしようって……」
「「……!?」」
「「 なっ、何だって……!? 」」
「断らなかったのか。」
流川の問いかけに対し、彼女は
「うん……断れなかった。
だって私、彼にひどいことしちゃったし……
それに、あんなにスマートに誘われたの、牧先輩以外で初めてだったから……」
結局、告白の返事をすることができなかった。
大切なラブレターを小声だったとはいえ公衆の面前で、牧や藤真の前で読み上げてしまい
終いには取り上げられてしまうなんて。
断る理由なんて‥‥何ひとつなかった。
「おっ、おのれセンドー!!
今度こそ、絶対に何がなんでも俺が倒す!!」
「チッ……あんにゃろう……」
「予選が終わったらだと……?
野郎……ナメやがって、上等だ!」
「くそっ、余裕かましやがって……!」
「仙道……刺激するなと言ったばかりだろうが!」
「まぁまぁ赤木……
お前たちも、あまり殺気立つなよ……」
仙道からデートの誘いを受けた綾。
照れ臭そうな彼女とは裏腹に血の気の多い男たちはそれを彼からの挑発と受け止め、メラメラと怒りに震えていた。
決勝リーグを目前にして、本日の練習は
通常よりも燃えに燃えた彼らなのであった。
( 仙道さん……手紙のこと、本当にごめんなさい。
すごく積極的で、思わずドキドキしちゃった。
でも、どうしてこのタイミングで……?
それに、健司くんを誘えば真実が分かるって、どういうことなんだろう……?
インターハイ前に横浜でデートかぁ……
みんなと一緒なら、それなら大丈夫だよね。
その日までに貴方と……
堂々と向き合えるようにならなくちゃいけないね。
とりあえず、このことをきちんと報告しなきゃ。
メールもいいけど、やっぱり電話かな。
紳ちゃんの優しい声……聞きたいな…… )