喪失〜再愛 編
name change
夢小説設定ここでは名前を自由に入力できるぞ。お前の好きな名前を入れてみてくれ。それにより面白みも増すだろ。
と言っても女性ばかりだが……
ん? 最後だけ男か。奴は、アイツが初めて……
いや、すまん。何でもない。では、よろしく頼む。
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ーー‥
春野のことが、好きだ。
俺と付き合ってほしい。
これからも、
ずっと応援していてくれないか……?
‥ーー
未だ記憶に新しい
桜が満開に咲き誇る昨年の春のこと。
( あの日、まさか彼の方から告白してくれるなんて夢みたいで……
もうどうしようもないくらい嬉しかった。
貴方もこんな風にドキドキしつつも、勇気を振り絞って伝えてくれたんだよね?
ありがとう……
あれから一年以上が経過して、私もちょびっとだけだけど、心も体も成長したんだよ。
いつまでも受け身のままじゃいけないよね。
貴方に甘えてばかりいられないって、そう思ったんだ。
だから、攻守交代。
次は……私が想いを届けるから。
受け取ってくれたらいいな……
紳……ちゃん…… )
ほんの僅かな淡い期待と、心の中に宿ったひとかけらの勇気。ただただ彼のそばに居たい。今後もずっと支え続けていきたい。
元通りに‥‥以前の様な恋人同士になりたい!
そんな募る気持ちを胸に
その日の夜、ついにその時はやってきた。
綾は自分の部屋にあるベッドの上に座り、ある物を見つめていた。それは‥‥数日前、机の引き出しにしまった牧との2ショット写真。さらには時を刻まなくなった未だ壊れたままの腕時計。
( 結局、忘れることなんてできなかった。
だけど……無理して忘れる必要もなかったんだ。
最初から……もっと早く気付いてあげられたら、思考が追い付いていたら……
自分の気持ちに正直になっていれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに。
ここに写った当時の二人のように、いつまでも笑顔でいられたのに。
宗くん……
私、貴方の気持ちも、話してくれたことも
絶対に無駄にしないからね。頑張るね……! )
彼に別れを告げられて以来‥‥
周りからの支援を受け、ようやく本当の気持ちを再確認することができた綾。
傍らに置いてある携帯電話を手に取り極度の緊張の中、思い切って電話をかけた。
「……もしもし。」
「もしもし……牧……先輩、こんばんは。」
「綾……」
耳元から聞こえる、男らしく低くて深いどこか甘みもある彼の優しい声。
受話器の、機械越しの‥‥聞き慣れているはずのその声は何故かとても新鮮に感じられた。
「あ、あの……手紙……読みました。
プレゼントも、すごく素敵で、とっても嬉しかったです。本当にありがとうございました!」
「そうか……気に入ってもらえたようで良かった。」
「それと……今まで散々ひどいことを言って、ごめんなさい!」
「!」
彼女の幸福を願って贈った、四つ葉のクローバーのブローチにペンダント‥‥
綾は最大限の感謝と
あの日、彼に放った失言に対し詫びを入れた。
「先輩が抱えていた不安や悩みに……
大切な思いにも気付かず傷つけてしまって……」
「…………」
突如、別れ話を切り出してきた牧。
あの時は頭が混乱して何が何だか分からず、ただただ勝手だと責め続け、彼の胸中など考えず自身はずっと被害者面をしていた。
しかし‥‥本当に勝手なのは自分自身だった。
その事実が発覚し気が付くのが
少しばかり‥‥いや、だいぶ遅すぎた‥‥
綾は精一杯の気持ちを込めて謝罪をした。
ー そして
「わっ、私……牧先輩のことが、好きです……!!」
「綾……」
ーー‥
失って、初めて気が付いたんだ。
俺には綾が必要なんだ、と。
お前も同じ想いでいてくれたら嬉しい。
これから先、どんなことも二人三脚で乗り越えていきたい。そう思っている。
‥ーー
彼から貰った、直筆の恋文の一節‥‥
「私も……あの日から……
離れ離れに、一人ぼっちになって……まるで心に穴が空いてしまったみたいに、淋しくて……」
「…………」
「先輩の優しい笑顔が、だいすき。
本当に私の笑顔に力があるのなら……
ずっとそばで笑っていたい。
全力で応援していきたいって、そう思っています。
だから……ご迷惑でなければ……
これからも、貴方の隣にいてもいいですか……?」
「……!」
ついに伝えた「大好き」という、この想い。
今‥‥彼はどんな顔をしているのだろう?
驚いているのか、怒っているのか、はたまた怒りを通り越して呆れているのだろうか‥‥?
ーー‥
電話ってさ、ガチャって切られたらそれでもうおしまいでしょ?
むしろ普通の告白よりも難易度が高いんじゃないかな。相手の反応が見られないって不安だよ。俺なら無理だな……
‥ーー
日中、神に言われたことを思い出す。
確かに相手側の反応が得られないのは不安で不安で仕方がない‥‥しかし、今の綾にはこうするしか術が無かったのだった。
先ほどから口数の少ない牧。
ほんの少し間を置いた後、彼女に合わせるかの様に‥‥ゆっくりと話しだした。
「迷惑なワケねーだろ……」
「え……?」
「むしろ、大歓迎だ。
正直……もうダメなのかと思ったぜ。」
「!」
「まだ俺のことを気にかけて……こうして電話をかけてきてくれた。
それに、告白までされるとは思ってもみなかったからな。嬉しいよ、ありがとう……」
「先輩……」
予想外の展開に驚き、安堵する牧。
そう。彼はとても嬉しそうな声色を、表情をしていたのだった。
「……俺の方こそ、すまなかった。」
「え……」
「俺があの日、栞を失くして……
以前、二人きりになるなと忠告を受けたばかりなのにな。
お前との約束を守れなかった上に、あのような光景を見せてしまい本当に申し訳ない………」
「……!!」
ズキッ‥‥
思い出したくもない、元恋人とのキスシーン。胸が張り裂けそうになるほど辛く苦しく、そして悲しかった‥‥
ーー‥
他の女の人と…二人きりにならないでね。
こんなに素敵な人なんだもん……心配だよ。
‥ーー
以前の彼女の言葉が頭をよぎる。
牧自身も女性と二人きりになり、また栞を紛失してしまった過去を非常に悔やんでいた。
「い、いえ……もう……大丈夫です。」
「本来ならば電話ではなく、直接会って謝りたかったんだが……」
「あの……私……
貴方の顔は、会う勇気までは……名前も以前のようには、まだ呼べなくて……本当に、ごめんなさい!」
「綾……」
恋人らしく「紳一」と呼び捨てに‥‥
「紳ちゃん」と気軽に呼ぶこともできない‥‥
つい最近まで当然の様にしていたことなのに。
一度はこの恋を諦めようと心を閉ざしかけていた彼女には難題であり、完全に元通りになるまでにはまだ少し時間がかかりそうだ。
ー その後
牧は意外な言葉を口にする。
それは綾にとって朗報とも言えるほど重要で、且つ驚くべき内容だった。
「アイツに……
かおりには……あの後、別れを告げた。」
「え……!?」
「 " 牧先輩 " のままで……いい。
敬語のままでも、しばらく会えなくても構わない。
ゆっくり、一歩ずつ、お前のペースで
俺のそばに……俺の元に戻ってきてほしい。」
「せ、先輩……」
「そしていつか
しっかりと向き合えた暁には……
俺はお前と……綾と一緒に、もっと色々な景色を見たい。いや、見ていきたい……!!」
( 紳ちゃん……! )
「はい……! 私も……!」
ついに想いを‥‥自分の正直な気持ちを告白した綾。
感無量になり、ぽろぽろと嬉し涙を流した。
やはり意中の彼は、牧紳一という男性は
とことん誠実で、充分過ぎるほど優しかった。
目の前に積まれた問題をひとつひとつ、ゆっくりと着実にクリアしていけばいい。
まだまだ不完全で手直しが必要な関係だが再スタートを切ることに成功した二人。
彼のことが心底大好きなのだと、あらためて実感した綾なのであった ‥‥