喪失〜再愛 編
name change
夢小説設定ここでは名前を自由に入力できるぞ。お前の好きな名前を入れてみてくれ。それにより面白みも増すだろ。
と言っても女性ばかりだが……
ん? 最後だけ男か。奴は、アイツが初めて……
いや、すまん。何でもない。では、よろしく頼む。
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綾と……別れた。
今思えばインターハイ予選が始まってから、
アイツが倒れてから嫌な予感はしていたんだ。
流川も、仙道も、そして藤真も
どいつもこいつも彼女を狙っている。
二人きりにならないでほしいと注意を促したつもりが……結果、アダとなり
綾から笑顔を奪う羽目になってしまった。
泣かせたかったわけではないのに。すまない……
キスや抱きしめられたと告白された時、俺の辞書から "余裕" という言葉は消え去った。
綾と上手く話すことができず、行動で示した。
アイツのためを思ったら、黙っていることしかできなかった。
自分で撒いた種なのに……本当に申し訳ない。
決して、嫌いになったわけじゃない……!!
追いかけて、引き止めたかった。
大好きだと……
愛していると…… 伝えたかった ……
綾……
ガラッ‥‥
「「……!!」」
牧が体育館に戻ってきた。
綾に別れを告げたのだろうと、部員たちの誰もが察した。隣に彼女の姿が見えなかったからだ。
バスケットは基本チームプレイ。
皆、こんな気まずい空気のまま通常通り練習を続けることは不可能だろう。
できないのではない、したくない。
というのが本音かもしれない。
神の近くにいる清田は俯きながら全身を震わせ、何かを訴えたくて仕方のない様子だった。
「牧さん、綾ちゃんは……」
神は、おそるおそる声をかけた。
「……だと。」
「え?」
「大嫌い……だとさ。」
「「!!」」
「アイツとは、もう別れてきた……」
「「 牧…… 」」
「きっと、こうなる運命だったんだろう。
これでいいんだ。
真実を知らない方がいいこともある。
傷付くのは俺だけで充分だ。アイツのことを好きな奴は、ごまんといるからな……」
もうどうしようもない、と物憂げな表情で語った。
ー すると
「ふっ……ふざけんなぁっ!!」
「「!?」」
突如、清田が吠えた。
「俺は……俺はっ……
牧さんのことを好きな綾さんが、大好きだったんだ!!」
「清田……」
「だから、辛くないと言えば嘘になるけど
ダチとして仲良くしたいって……
ようやくそう思い始めてたんすよ!?
っ……お互い好きなクセに……
なんで、なんで別れなきゃならねーんだよ!? ワケわかんねーよ!!」
清田は溜まりに溜まっていた胸の内を赤裸々に告白した。
納得がいかない、こんなことは間違っていると彼なりに必死で主張している。
「…………」
「信長……」
そんな中、神はふと何かを思い出す。
ーー‥
私と紳ちゃんを引き合わせてくれた、大事なお友だちなんだ……!
‥ーー
「牧さん……翔陽って、湘北の今度の対戦チームですよね……?」
「ああ。」
「このままじゃ、本当に藤真さんに綾ちゃんを取られちゃいますよ…!?」
「「!?」」
ーー‥
ここまで綺麗になってるとは驚いたぜ。
春野を悲しませたら、ただじゃおかないからな!! 覚悟しておけよ!!
健司くん……!
‥ーー
「……既に、別れたと言ったろ!
俺にはもう関係のない話だ!
この話はよせ、早く練習を……「嘘だ!!」」
牧の言葉を遮り、神が叫んだ。
「神……!?」
「神さん……!?」
「どうして、牧さんも綾ちゃんも自分の気持ちに嘘ばかりつくんだ!!
幸せな未来のため!?
愛しているのなら、なぜ……!?
彼女の想いは……!?
綾ちゃんの気持ちは、どうなるんですか!?」
「「!!」」
今まで言いたくても言えなかった思いの丈を、尊敬する先輩に向けてぶちまけた。
普段は温厚な性格の彼が豹変し部員たちは驚いている。彼は闘志を内に秘めた男なのだ。
スッ‥‥
神はジャージのポケットから
一枚の写真を取り出し、牧に差し出した。
「これは……」
それは綾が中学一年の頃のものであった。
とても幼く見えるが、どこか大人っぽい雰囲気を醸し出していた。
ユニフォームを着用し当時のチームメイトたちと楽しそうに笑っている。三年も前にも関わらず現在とちっとも変わらない
屈託のない、その笑顔。
牧が会場で初めて見た時と瓜二つであった。
「綾ちゃん……この頃、失恋したって言ってましたよね。」
「!!」
ーー‥
同じクラスの彼に一目惚れして……電話で告白したの。
当たって砕けろの精神で挑んだんだけど、ほんとに砕けちゃった……
あの時は辛かったな。
悲しくて、一日中ずっと泣いてたもん……
‥ーー
「今も……
きっと、泣いてるんじゃないかな……」
「……!!」
「神さん……」
そして、彼は追い討ちをかける。
「俺……綾ちゃんの悲しい顔なんて見たくない。もう、見ていられない……!
あの雨宮っていう女性も、牧さんも、絶対に許さない!
……俺は彼女に、真実を伝えに行きます。」
「神、やめろ!!
そんなことをすれば、アイツが……」
「綾ちゃんが野郎に襲われるって……? 危ないって!?
そんなこと、絶対にさせませんよ。
俺が、彼女を守る。必ず守ってみせる!!
藤真さんにも、渡さない……!!」
「神! 貴様……まだ諦めていなかったのか!?」
ガッ‥‥!
牧は神の胸ぐらを掴み、睨みつける。
「「牧、やめろ!!」」
「牧さん! 神さん!」
「っ……前にも言いましたよね。
俺……負けませんから……!!」
「くっ……」
再び衝突する牧と神。
この深刻なムードに部員たちはどうすることもできずにいたのだった‥‥
ーー
「騒がしいぞ! 何をやっとるか!」
この直後、海南大附属高校・男子バスケ部の高頭力監督が現れた。
「「…………」」
部員たちは皆、何も話さない。
ただ事ではないと一目で分かる、この殺伐とした重苦しい雰囲気‥‥
監督は状況を整理しようと声を荒げる。
「お前たち、何があった!?
ここは王者海南のバスケットコートだぞ!!
牧、お前がいながらなんてザマだ。
さっさと練習を再開せんか!!」
「はい……すみません、監督。」
牧は深々とお辞儀をし、謝罪をした。
「ん……? なんだそれは、見せてみろ。」
「はい。」
ふと、監督は牧が手にしていた写真が視界に入った。
「この娘は……!
まさか、コート上の天使の……春野 綾か!?」
監督は目を見開いて驚いている。
「「!?」」
「て、天使って……!?
監督……綾さんのこと、知ってるんですか?」
「ああ。気が付いたのはつい最近だがな。
先日、陵南の田岡先輩ととある会議をしている最中にこの娘の話題になったんだ。
安西先生も太鼓判を押すほどの選手だからな、ワシも一目置いておる。」
一区間置いた後‥‥監督は牧の目を見ながら静かに、ゆっくりと話し出す。
「……牧、この娘とはまだ交際しておるのか?」
近頃噂になっている、牧と綾の二人の関係性。
無論、教員たちの耳にも届いているのだろう。
当事者である牧の表情に未だ覇気はなく、監督の問いに対し俯き加減に答える。
「いえ……」
「!? まさか……別れたのか?」
「…………」
「なんて勿体無いことを……
正直なところ、試合に私情を持ち込むのは感心せんな。勝ちにこだわる主将のお前が女一人のことで一喜一憂しているようでは
常勝を掲げる我が海南大の歴史に傷がつく。」
監督は話を続ける。
「だが……あの娘は、お前にとって何なのだ?
一番の良き理解者であり、支えてくれる存在ではないのか?」
「!!」
牧はハッとし、顔を上げた。
「これは憶測に過ぎんが……
牧、お前のことを一番に好いておると思うぞ。
あの娘にはウチの勝利の女神として、そばにいてもらわんとな!」
「監督……」
ーー‥
紳ちゃんへ
紳ちゃん、大好き…
これからもずっとずっと、応援してるよ!
ナイッシュー!! 牧さん!!
こうして一緒にいられるだけで、私は充分幸せだよ! 本当にありがとう……!
このお兄ちゃんたちはね、とーっても優しいんだよ。お姉さんの大好きな人なんだ……!
紳ちゃん……!
‥ーー
以前綾から貰った手紙と、笑顔と‥‥言葉の数々が牧の心を占め、胸を締め付ける。
( ……綾!
だが、もう、俺はお前を手放して…… )
しかし‥‥後悔先に立たず。
牧は拳を強く握りしめ、わなわなと震わせて
自責の念にとらわれていた。
「ま、牧さん……」
「「 牧…… 」」
「女心と秋の空……」
「!」
監督がボソッと呟く。
「昔から、そのように言うだろう。
牧……女の心変わりには気をつけろ。ましてや、こんなに可愛いらしい娘だ。
悪い虫がつかないよう急ぐんだな。」
と、チラッと神や清田の顔を見た。
「「……!!」」
「期限は……決勝リーグで
ウチと湘北が対戦する日までだ!」
「!」
「それまでに、ヨリを戻さんといかんぞ。」
なんてな。ハッハッハ!
と、監督は手持ちの扇子を広げ豪快に笑った。
「監督……分かりました。
ありがとうございます……」
監督の意外な言葉に励まされた牧。
彼は心からの感謝を述べた。
胸に抱え込んでいた迷いが少しずつ、少しずつ晴れていく様な、そんな気がした ー