喪失〜再愛 編
name change
夢小説設定ここでは名前を自由に入力できるぞ。お前の好きな名前を入れてみてくれ。それにより面白みも増すだろ。
と言っても女性ばかりだが……
ん? 最後だけ男か。奴は、アイツが初めて……
いや、すまん。何でもない。では、よろしく頼む。
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事の始まりは、1件のメールだった。
――――――――――――――――――
To : 綾
お前に話がある。
体育館の脇に綺麗なアジサイの花が咲いてるんだ。
見に来ないか…?
――――――――――――――――――
To : 紳ちゃん
話って何?お花も楽しみだな~。
じゃあ、学校が終わったら行くね。
またあとでね!
――――――――――――――――――
今思えば、どうしてこの時
気付いてあげられなかったんだろう。
大切な貴方の想いに……
翌日‥‥
綾は、もうすっかり着慣れた湘北高校の夏服を身に纏い愛しの彼が待つ体育館へとひとり足を運んでいた。
ガラッと入り口を開けると
「綾……」
「……綾ちゃん!」
「綾さん……!」
「「春野……!!」」
部員たちは皆、突然の彼女の登場に驚いている。
「失礼します。
練習中に突然お邪魔してしまい、すみません。
宗くん、清田くんも先輩方もお元気でしたか?」
綾は靴を脱いで手持ちのバッシュに履き替え、きちんと一礼をしてから体育館に入った。
挨拶も含め、本人からしたら当然の行為なのだが
その礼儀正しさが今の彼らには胸にグッとくるものがあり何とも言えない気持ちになっていた。
「綾さん、ダメだ……」
「信長、待て……」
「紳ちゃんがね、
話があるって言うから来たんだけど……
あ……! 見つけた!」
清田と神が何やら小さく呟いていたが
体育館の隅に佇む牧の姿を発見し
駆け寄ろうとした、その時
「綾さん、行っちゃダメだ!!」
「!?」
清田は大声で叫び、とっさに綾の腕を掴んだ。驚き振り返ると‥‥
「清田くん……?」
清田は今にも泣きそうな、切ない表情で綾を見つめていた。
「清田、その手を離せ。」
「!」
「紳ちゃん……」
牧は素早い動きで綾の前に立ちはだかり、後輩の手を振り払った。
「ま、牧さん……」
「……綾、よく来たな。外に出よう。」
そう言って牧は綾の手をつなぎ、入り口へと向かった。
「待って、紳ちゃん……」
綾は後ろを振り返り清田の姿を見た。
部員たちはその場に呆然と立ち尽くしていた。
( みんな……どうしたんだろう? )
明らかに様子がおかしい。
思うことは多々あるが今の綾には彼につながれたこの大きな手の温もりが、ただただ嬉しかった。
導かれた先でどんな運命が待ち受けているとも知らずに‥‥
ーー
入り口の外に出ると、そこには
色彩豊かな紫陽花の花々が咲き乱れていた。
「うわぁ……!
この間、公園で見たものも綺麗だったけど
ここのアジサイはカラフルで特に目を引くね。
今この時期しか見られないもんね。
ふふっ、来て良かった~。」
綾は笑顔と共に思ったことを素直に口にした。
「でも、珍しいね? 紳ちゃんの方から花を見ようって誘ってくれるなんて。」
「…………」
「どうしたの……?」
一定の距離を置き、互いに見つめ合う二人。
しばらくして牧はゆっくりと口を開く。
「最後に……お前と二人きりで見たかったんだ。後々、後悔したくないからな……」
「え……? 最後って……紳ちゃ……!?」
突如、綾をギュッと強く抱きしめ
唇にそっと触れるだけのキスをした‥‥
その後、体を解放し彼女の顔を見た。
「紳、ちゃん……」
綾は頬を紅潮させ、目の前にいる彼を見つめている。
「…………」
牧は、未だかつてないほどの切ない表情をしていた。
ー そして
「綾……別れよう。」
「え……?」
牧は綾の目をしっかりと見つめ、そう告げた。
「ちょっと……待って。何かの冗談だよね?
私、何かした? だとしたら謝るから……!」
「……冗談なんかじゃない。
藤真や流川たちのことが好きなんだろ?
さっさと付き合ったらいいじゃないか。
……もう俺のことは忘れてくれ。」
「えっ……」
この人は、一体何を言っているのだろう‥‥?
突然の通告に綾は動揺を隠せない。奈落の底へ一気に突き落とされた様な気分。つい今しがた口づけを交わしたというのに。何かの間違いではないのかと気ばかりが焦り、体の奥底から目頭に向かって熱がこもっていくのを感じていた。
「すまない……」
これが、彼が最後に放った言葉だった。
「どうして謝るの……?
私のこと、嫌いになった……?
この先何があっても、好きでいてくれるって……
誰にも渡すつもりはないって……
信じてくれるって……
愛してるって……
そう言ってくれたじゃない……!
あれは全部、嘘だったの……!?」
綾の本音が爆発する。
腕時計に刻まれた、隠れた愛のメッセージ‥‥
「あの日以来……
もう何があっても貴方から逃げないって
信じるんだって、ちゃんと向き合うんだって……
そう心に誓ったんだよ。
それなのに……それなのに……!」
「……!!」
瞳から雫がとめどなく流れ落ちてゆく‥‥
が、牧はずっと黙ったままだった‥‥
「どうして何も言ってくれないの……?
この間だって、
そうやってずっと一人で抱え込んで……
私、隣にいるのに……不安で、不安で……
いつも自分ばっかり、卑怯だよ……」
「もう…… 紳ちゃんなんて、大っ嫌い!!」
「!!」
「さようなら……」
そう言って、綾は去っていった‥‥
こうして二人は別れた。
彼女が持つ、ほのかな花の香りが
牧のすぐ傍を通過し
言葉の一つ一つが頭の中を横切っていた。
もう‥‥後戻りはできない。
鮮やかに咲き誇る紫陽花の花が
何かを主張している様に見えて
辛くて‥‥
胸が、苦しかった‥‥‥
( 綾…… )