喪失〜再愛 編
name change
夢小説設定ここでは名前を自由に入力できるぞ。お前の好きな名前を入れてみてくれ。それにより面白みも増すだろ。
と言っても女性ばかりだが……
ん? 最後だけ男か。奴は、アイツが初めて……
いや、すまん。何でもない。では、よろしく頼む。
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ここは海南大附属高校。
ある日の放課後、招かれざる客が現れた。
ガラッ‥‥!
突如、体育館の入り口が開かれた。
「ねぇ、ここに牧紳一って人いるでしょ? 呼んできてちょうだい。」
誰だ……?
見たことない女だな……
先輩の知り合いか……?
練習していた手がピタッと止まり、館内中がザワザワと騒ぎ始めた。
入り口の傍にいた神と清田は彼女に声をかける。
「うほっ……色っぺー女。」
栗色で艶のある長い髪。
制服の上からでも分かる、出る所は出て、キュッと引き締まったボディ。
清田は彼女の容姿端麗な出で立ちにだらしなく鼻の下を伸ばしている。
「牧さんは確かにいますけど、どちら様ですか?」
神は特に気にする様子もなく、淡々と質問に答えた。
「私の名前は、雨宮かおり。
紳一の昔の恋人よ。」
「「なっ、なんだって……!?」」
一同は驚愕した。
「何だ、どうしたんだ?」
更衣室から戻って来た牧は静寂に包まれた館内に妙な違和感を覚え、部員たちの元へと急いだ。
牧の姿を捉えた"かおり"と名乗る謎の女性はなんと土足のまま館内に入り、ダッシュで駆け寄っていってしまった。
「おい、ちょっとアンタ!!」
「ちょっ……」
「紳一、会いたかった……!」
「……!?」
彼女は、牧に思いきり抱きついた。
彼は突然の出来事に驚いている。
「……すまん。誰だっけ、君?」
ガクッ。
「ま、牧さん……?」
「ははは……」
一同は目が点になってしまった。
彼女のことを本当に覚えていないのか‥‥意外にも彼はこうした天然な一面も併せ持っているのだった。
「なっ……!?
女に恥をかかせるなんてサイテー!!
私のこと、忘れたなんて言わせないわよ!
アナタの元カノの、雨宮かおりよ! どう、思い出した!?」
「ああ、かおりか……久しぶりだな。」
「覚えていてくれたのね! うれしいっ♡」
そう言って嬉しそうに牧の腕に手を回す。
雨宮 かおり
海南大附属高校三年。
牧とは違うクラスで、中学三年の頃に
無理矢理とも言える彼女の猛アタックにより過去に一ヵ月間だけ付き合っていた。
牧は部活の忙しさに加え彼女の傲慢さに嫌気が差し、すぐに別れを告げた。
復縁を望む彼女は近頃噂になっている彼の新しい恋人の綾の存在を知り、何とか蹴落としてやろうと復讐に燃えていた。
先日‥‥同じクラスの友人が教室にてある物を拾ったことにより、この様な事態に発展してしまったのである。
「おい、あまりくっつくな。」
「どうして? いいじゃな~い。」
牧は、彼女とは対照的に顔が引きつっていた。
「牧さん、その人は一体……?」
「「おい! それよりも先に、靴を脱げ!!」」
聞きたいことは山ほどあれど、ここは神聖なバスケットコート。土足で上がった罪は大きい。
清田や武藤をはじめ部員たちは彼女を睨み付け、怒りを露わにしている。
「え~? 何よ、うっさいわね。
どうだっていいじゃない、こんな所。」
かおりは外野の声に面倒臭そうに話した。
ピクッ‥‥
「こんな所……だと?」
牧は今の一言を聞き逃さなかった。
「……紳一?」
「ここは俺たちにとって青春の全てを懸けた大事な場所なんだ。
突然現れて、その口の聞き方はなんだ?
ふざけるのも大概にしろ。
用が無いならさっさと出ていってくれ。」
牧は彼女の手を振り払い、冷たく言い放った。
「ふ~ん……
しばらく会わない間に、体も態度もデカくなったものね。さっすが神奈川No.1。」
「何……?」
彼女は皮肉たっぷりな言い方で返した。
「春野 綾……」
「!!」
「用ならあるわ、コレよ!!」
バサッ‥‥
突如、綾の名前と共に
宙にばら撒かれた大量の写真。
おそらく隠し撮りをされたのであろう
流川とのキスや仙道とのハグ‥‥
授業中、プライベート等の光景が写っていた。
部員達は不謹慎だと思いつつも
まるでアイドルのブロマイドを眺めるかの様に興味津々に目を通している。
ペンを持ちながら頬杖をつき、真面目に勉強に取り組んでいる姿
友人と昼食を食べている姿
桜木にバスケをレクチャーしている姿
三井と楽しそうに笑い合っている姿
家族と買い物をしている姿 etc‥‥
これらは全て
今まで見たことのない、綾の素顔。
中には、中学時代や着替え中の写真まであり
一同はとんでもない物を見てしまった感覚に陥ってしまっていた。
すっげー、これ隠し撮りじゃねーの?
めっちゃ可愛い……
なんで仙道と春野さんが……!?
「やめろ、ジロジロ見るんじゃない!!」
大事な恋人を晒され、牧は怒り心頭だ。
「ち、ちょっとトイレ行ってきます……!」
清田は顔中を真っ赤にして鼻血を出していた。彼には刺激が強過ぎた様だ。
「…………」
一方、神は中学時代の
幼い綾の写真を見て胸が締め付けられていた。
( 流川に仙道、三井さんも……どうして……
だけど、中学生の綾ちゃん……やっぱり可愛いな。)
写真の中の彼女は、笑っていた‥‥
先日、綾に失恋話を聞かされてから時々友人としてではない不思議な感情が湧いてしまっていた。
( ……あんまり女々しいと、嫌われちゃうかな。)
ー そして
「プライバシーの侵害だぞ!!
こんなことをしてタダで済むと思ってるのか!? 一体、どういうつもりだ!!」
牧は凄まじい形相で彼女を睨み付け、叫んだ。
「へぇ……そんなにこの女のことが好きなワケ?
まぁいいわ、強気でいられるのも今のうちよ。
紳一!
もう二度とこの女に会わないって約束して!
昔みたいに、また私と付き合いなさいよ!!」
「「……!? 」」
「何を馬鹿げたことを……
そんな約束、できるわけがないだろう!」
「あっ、そう……
知ってる? 私、こう見えて顔が広いのよ。
さっきの写真だって友達ヅテに頼んで撮影してもらったんだから。
もし断るなら……知り合いの男友達にその女を襲わせることぐらい、簡単にできちゃうのよ?」
彼女はニヤリと不気味に微笑んだ。
「なっ……!? どうせ、ハッタリだろう!!」
「ハッタリなんかじゃないわ! 本気よ!」
二人は声を荒げる。
「っ……ふざけるな……
綾を傷付ける奴は、誰であろうと許さん!!」
「……なによ、なんなのよ!?
こんな女のどこがいいっていうのよ!!
こんなワケ分かんない物をプレゼントする女、ウザいったらないわ!!」
怒りが最高潮に達した彼女は、ある物を床に叩きつけた。
「それは……!」
そのある物とは、先日のデートで綾に貰った四つ葉のクローバーのしおりであった‥‥
牧はこの時、初めて紛失したことに気が付く。
お世辞にも綺麗とは言えないほどボロボロに折れ曲がり、泥汚れもついてしまっていて本来の用途に使える状態ではなかった。
" どんなに小さな花だって、大輪の花を咲かせる資格を持ってる……よね? "
裏側にそう記された直筆のメッセージ‥‥
ーー‥
授業中や勉強中でも、私を思い出してくれたら嬉しいなって……
声を聞いたら少しだけ安心したの。電話してくれてありがとう……
紳ちゃん……大好き……
紳ちゃんの心が、優しさが
すごくあったかくて……
これ以上のプレゼントなんて
世界中を探しても、どこにもないよ!
‥ーー
彼女の笑顔や言葉の一つ一つが、鮮明に思い出されていく。
( 綾……俺は、お前のためなら……!! )
牧は、しおりを大事そうに握りしめる。
「牧さん! ダメだ!
そんな女の言うこと、聞くことないっすよ!」
「牧さん! 綾ちゃんを裏切るんですか……!?」
「「牧!!」」
彼らは必死で二人の仲を繋ぎ止めようとするが‥‥
「いや……
俺は、アイツのことを愛している。」
「「!!」」
「だったら、どうして……」
「愛する彼女のために身を引くんだ。
アイツの幸せな未来のためにな……
これ以上の理由など、存在しない。」
「牧さん……」
「……かおり。
アイツと、最後にあと少しだけ話がしたい。
お前の言う通りにするから
綾にだけは、手を出さないでくれ。
頼む、この通りだ……!」
牧は深々と頭を下げた。
「物分かりがいいじゃない。
さすが私の彼氏ね。いいわ、約束してあげる。
さっ、もう行きましょ!」
「ああ……」
去り際、神と清田と目を合わせた。
それは哀愁に満ちた、生気の無い男の目。
" このことは綾には言うな "
そう言っている様に見えた。
そして、二人は去っていった‥‥
「ま……牧さんの、バカヤローーー!!!!」
清田の悲痛な叫び声だけが
館内に響き渡っていた ー