黒白を争う 編
name change
夢小説設定ここでは名前を自由に入力できるぞ。お前の好きな名前を入れてみてくれ。それにより面白みも増すだろ。
と言っても女性ばかりだが……
ん? 最後だけ男か。奴は、アイツが初めて……
いや、すまん。何でもない。では、よろしく頼む。
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「美味しい〜!」
円滑に特訓は進み、このあたりで一息つくためハーフタイムに。
ほのかな甘みが口内に広がり喉の渇きを癒していく。ご馳走様、と差し入れされた清涼飲料水を飲み終えると、綾は少し急いだ様子でゴールに向かっていった。
覚えたてのシュートフォームを身体に叩き込む様に何本もシュートを放つ。その姿を見ていた牧は、ごく自然に彼女のもとへ。
「段々と板についてきたな」
「そうかな?
宗くんに比べたらまだまだ……」
これまでの出来高を認め、良い調子だと言葉をかけると低姿勢なお決まりのセリフが返ってきた。基本ストイックな牧であるが、それは彼女とて同じ。現状に満足せずさらなる高みを目指している。
昨日教わったものとは逆のパターンで、いきなり6mからではなく5、4、3メートルと少しずつ距離を詰めていく独自のやり方で練習に励んでいた。
「規定の位置からだと今の私の実力じゃさっきの2本が限界だし、心が折れちゃいそうで……
近距離は3、4メートルだったらほぼ命中できるけど、なかなか難しいね」
「そうか……だが、そのうち慣れるだろ」
「……うん」
ボールを両手にしがなく笑い、あまり彼の顔を見られずにいたが、次の発言を境にその凛々しくも優しい表情を視界いっぱいに入れた。
「私たちもこれと同じで、徐々に距離を詰めていけたね」
「いや、違うな」
「え?」
「俺たちは、しっかり規定のラインの前にいたぜ」
「……!」
覆い被さった言葉はバスケットに似通っているが、非物理的なことだった。心の距離は遠く、ゴールの真下どころか当初からずっと6メートルの位置にいたと言う。
互いにギリギリの限界値に達していたが奇跡的に心を通わせることができたのだ。
ほくそ笑む彼に、トクンと胸の鼓動が高ぶってゆく。
「そ、そうかな……あれ? そのタオル……」
「ああ、これか」
首元にかかっている真っ白なタオルの存在に気が付く。プレゼントの品を早速利用していることを知り、綾の表情がパッと明るくなる。
――‥
これと同じものを欲しそうにしてて……健司くんにもあげた方がいいのかな?
そしたら、紳ちゃんとおそろいだね!
どうして? おそろいはイヤ?
――‥
「綾。洗い替え、期待してるぜ」
「えっ……
時間がかかっちゃってもいいなら……」
「それは平気だが、なるべく早いほうがいい。
お前とペアで使うのも悪くないと思ってな」
「……私とおそろいでいいの?」
「ああ。お前とがいい」
「紳ちゃん……」
「綾……」
――‥
いや……奴にはやるな。
……そういうわけじゃない。
――‥
お揃いなのが嫌なんじゃない。
藤真とではなく、お前が、綾がいい‥‥
憧れの彼と一緒に訪れたスポーツ用品店にてタオルをもう1枚欲していた綾だが、財布の中身を見て泣く泣く断念。
湘北戦のあとで購入に至れなかったとのぼやきを、牧はきちんと覚えていたのだ。
互いの顔を見上げて、見下ろして。
無事に分かり合えた男女はじっと見つめ合い、空間はいつしかムーディな雰囲気に。
一方、取り残された後輩たちは先ほど味わい尽くしたスポーツドリンクよりも糖度の高い光景を傍目に、次の様な言葉をこぼしていた。
「神さん。やっぱ邪魔だったかもしれないっすね……」
「……そうだね」
いつになれば治るのか。時間差で受け答えをするその声は小さく、羽根の様にふわりと空を舞う。
胸が軋むような切なさはもうしばらく続くことだろう。
2人の愛の絆の深さに、自身はますます蚊帳の外だったと実感する神であった‥‥
「みんな、今日は私のために朝早くからどうもありがとう! どっちも一気に上達できるように、これからも精一杯頑張るね!」
「どういたしまして。シュートが見れて良かったよ」
「綾さん、カッコ良かったっす!」
「宗くん、清田くん……」
時間はあっという間に過ぎ去り、間もなく帰宅時間となる。礼儀礼節がなされている綾は締めくくりに感謝の言葉を口にし、今後の意欲を示すと
「焦るな、綾」
「え?」
「二兎を追う者は一兎をも得ずだ。一朝一夕で身につくものじゃない。
今後も1つずつ、じっくり技を磨いていけばいい」
「うん……そうだね、分かった……!」
あとは日々の鍛錬だと付け足した。
フリースローに3ポイント、そして基礎体力づくり。
同時進行では効率が悪い。1つずつ時間をかけて技術を身につけよう。覚えていこう。
最適解を導いてくれた彼に胸がいっぱいになり、同時にほんわかとした安心感を得ていた。
「日々の積み重ねだね。やっぱり」
「うん。ものすごく実感してる……」
「そーいうこと! かっかっか!」
「清田、お前もだ」
「わっ、分かってますよ! 牧さん!」
すぐさまそう突かれ、清田は墓穴を掘ってしまう。
そんな彼だが王者・海南のスタメンとして将来性があると監督や大先輩らに期待されているに違いない。
ケラケラと高笑いをする余裕は無くなり、焦った様子で話題を切り替える。
「それにしても、楽しみっすね! 横浜! あの仙道が主催者ってのがシャクっすけど……」
「「 ………… 」」
( だから、なんで静まんだよ……!? )
予期せぬ無言の圧力が襲いかかる。
先ほど、手紙を粗末に扱うことはないと話していた牧。ヤキモチを焼かれることよりも、仙道の気持ちを大事に思う綾は‥‥
「紳ちゃん。
仙道さんに、もう意地悪しないでね……?」
「綾ちゃん」
「綾さん」
「イエスとは言えん」
「えっ……」
ためらうことなくそう答えた。
最愛の女性にくっつく虫を排除することが、彼の広い胸の中に根強く使命づけられているのだ。
また、彼女は昨日の牧の発言に違和感があった。
藤真を旅行に誘うことに賛成していたのに、次に会う日は雌雄を決する時だと話していたからだ。
2人で沢山の思い出をつくっていきたい‥‥
綾は、恋人と一緒でなくては気乗りしないはず。
是非とも願いたいと相手側は行く気満々であり、当日は必然的に対面することになる。
となればインターハイ予選終了後、外出するより先に対決の日を迎えると推測できる。
「横浜、紳ちゃんは行かないの……?」
顔色をうかがう様に尋ねると、清田が咄嗟にその質問の答えを代弁した。
「え? 牧さんも行くって言ってましたよ」
「確かに。「お前も来るか」って言ってたね」
「紳ちゃん、ほんと……?」
「ああ」
「じゃあ、決着は予選後すぐってこと……?」
「そうなるかもな」
そして、牧は今最も彼らの話題の中心にいるであろう1人の男の名を挙げた。
「藤真……
奴とは、いずれ白黒つけたいと思ってたからな。今から腕が鳴るぜ」
「あ……」
以前にも全身全霊で挑むと張り切っていた牧。ニヤリと笑い、藤真との勝負に応戦すると話す。
一緒に出掛けられると分かり安堵するも、未だに良い返事ができずにいる綾は気が進まず今この場でも的確な返事ができずにいた。
― そして
あれは救出劇の数十分前。海南大の部室にて張り詰める空気の中、牧は藤真とバスケットでケリをつけるとチームメイトたちに話していた。
拳を握り、勇ましく熱意表明をする先輩に清田は‥‥
( キャプテンが静かに燃えてる……!!
かっ、カッケー!!
ついに恋敵同士の対決か!?
連日の特訓に、翔陽の藤真のことも、課題……!!
牧さんが直々に特訓したってのもあるが、中学の時に県大会決勝まで勝ち抜いたのも伊達じゃねえ。
殻を破った綾さんはウチにお試しで入った時よりも別人のように明るくて、頭脳的で活発で、とにかく圧倒された。
顔は小せえけど、やっぱ胸はデカいな……って
やべっ! 何考えてんだ俺は! 牧さんに殺される……!
あの時、手加減されたらされたで2人を軽蔑してたかもしれねえ。マジで勝ちにきてくれた男気のある2人だからこそ、尊敬できるってもんよ!!
それにしても感激だよなー……フラれた後でもこーやって綾さんとバスケができるなんて。
告白した日には考えられなかったことだぜ。
俺の帽子も未だに被っててくれてるし。まさに天使……
それに、この短時間でなんとなく分かった。
神さんが言ってた「運命」ってやつが…… )
こうして2日間の特訓は終了。
昨日の赤木の思惑通り牧から直接指導を受けている彼女の成長は非常にめざましく、その内訳は未だエアボールはあるものネットをかすることも増え、さらには10本中2本のシュートを決められるように。
フリースローも8割程度といった上々な記録を残した。
― しかし
( 紳ちゃん、私…… )
困惑する女神。
自分はどちらに微笑めばいいのか分からない。
そもそも力比べをする必要なんてないのに。
戦わずに済むなら、それに越したことはないのだから。
実力の差を確かめる必要性は皆無であり、意気込む彼を前に否定的な発言ができず尻込む。
度々呆れられるほど素直すぎる彼女だが、こればかりは素直に喜ぶことができなかった。
旅行に誘うことは構わないが今朝の特訓には呼ぶなと、それらの言い付けを守ってきた。
あれは良くても、これはダメ。それは何故なのか?
男たちの対決の日を目前に控えてもなお、
牧の真意は分からぬまま‥‥
綾の心はグッドとバッドの狭間でぐらぐらと揺れていた ――。
‥――