黒白を争う 編
name change
夢小説設定ここでは名前を自由に入力できるぞ。お前の好きな名前を入れてみてくれ。それにより面白みも増すだろ。
と言っても女性ばかりだが……
ん? 最後だけ男か。奴は、アイツが初めて……
いや、すまん。何でもない。では、よろしく頼む。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「埋め合わせ?」
「ああ。なんでもいいぜ」
思い出の地にて意思の疎通が図れた2人。
ズボンやスカートが湿ってしまっていてもお構いなし。
しだれ桜の様にうなだれ泣いていた彼女。しかし、今はもう違う。八重桜となり沢山の花弁をのぞかせていた。
彼らは川沿いを並行して歩いている。
立ち上がってからというもの腕を掴むでも身体に密着するでもなく互いの指を絡め合い、恋人つなぎをしていた。
牧はその大きな手で小さな手を一度も離すことなく優しく、時に力強く握り締める。
「そんな、私のために距離を置こうって言ってくれたんでしょ? なのに……」
「我ながら英断だと思ったんだが、お前にさみしい思いをさせちまったのは事実だからな……
言い出したのは俺だ。
どんなことだっていい。遠慮はいらんぞ」
独断は英断かと思われた。彼女のためを思ってのことだったが、その判断により辛く淋しい思いをさせた。
距離を置いたことによる埋め合わせをしようと、どんなことでも出来る限り希望に沿おうと回答を待つが‥‥
「紳ちゃん……でも、私……」
「綾……
お前は、もう少し貪欲になってもいいんじゃないか?」
彼女の良くも悪くも控えめなところ。
日頃から欲を出さないが、時には相手の厚意に甘えることも大切。怒るでも諭すわけでもなく1年以上連れ添っている恋人の口からそんな言葉が飛び出した。
「そうかな……本当に、なんでもいいの……?」
「ああ」
足を止め、彼の顔を見上げて確認を取る。
色々ある中、もじもじと恥ずかしがりながら口にしたことは
「紳ちゃんと、くっついてたい……」
「何? そんなものでいいのか?」
と拍子抜けをしていたが、その後すぐ補足として発せられた言葉に驚いた様子を見せる。
「うん。できるなら一日中、ずっと……」
「……!」
先日、2人は初めての一夜を過ごした。
彼女がぐっすり眠る顔を前に落ち着かず、牧はモヤモヤとした眠れぬ夜を過ごしていた。そんな男心など露知らず‥‥
三井らと原点回帰に精を出していたあの日、カラダとカラダをただ密着させているだけではダメなのかと考え込んでいた綾。この時、あの日に思っていたことを初めて彼に伝えると
「ずっとくっついていられても困るんだが……」
「そっ、そうだよね。お手洗いとか、ご飯の時とか……」
「いや、そういうことじゃない」
「……?」
「我慢できないかもしれんぞ」
「えっ……我慢……?」
ーー‥
その時はイヤとは言わせない。
男の部屋に上がり込むってのは、こういうことだぞ。
‥――
真っ先に日常生活に支障をきたすものと考えたが、そんな単純なことではなかった。彼が指すものは、おそらく男女の営みのこと。
我慢できないかもしれない。下半身が欲情するかもしれない。その意味は日頃鈍感な彼女にも理解できているはず。
牧の目線から綾の顔を見ても、暗闇の中だろうと頬が紅潮していることは明らかだった。
ほのめかす様な言い方に過去に押し倒された一件などを思い出してしまう。
「いっ、今のは冗談だから、忘れて忘れて……!」
「…………」
傍にある灯りが川の水面にぼんやりと反射する中
双方の瞳の奥もきらきらと光り輝いている。
「ホントはね、まだあるの……」
立ち止まり、じっと彼の口元を見つめた。口ごもり何かを言いたそうな様子の綾。その一挙一動を牧が見逃すことはない。
「この間も、そうやって口元を見てたよな」
彼の言うそれは白熱した湘北戦の試合後のこと。
以前カナに当然の様にしているかと聞かれ、意識が高まっているのだろうか。
「うん……あのね……」
「ん……?」
「ふっ、深いキス……したいな……なんて……」
「!」
ねっとりとした深く濃いディープキス。
彼女にとってその行為(愛情表現)は大人っぽくも魅力的なものであり、レベルが高く、また未知なるものだと感じているよう。背伸びをしたい年頃。
が、それを催促することはない。だがしかし興味がないわけでもない。すべては彼次第なのだ。
「……なおさら、歯止めがきかないかもしれん」
「え……?」
この時、1枚の葉が川の水面に不時着した。
「試してみるか……?」
「た、試すって……」
顔がこちらに近付いてくる。
暗い中、男の表情は詳しくは分からない。
( 言い出したのは自分だけど、まだ心の準備が……!)
ドキドキと心臓が跳ねる。何の下準備もしておらず、言動と行動が伴わない。女は反射的にきゅっと目を瞑る。
「……すまん。冗談だ」
「あ……うん、そうだよね……!」
身体と身体をくっつけていたい。深いキスがしたい。
互いにジョークだと言いこれらの件は一旦終了となる。
残念な様な、ホッとした様な。著しく顔を赤くする綾だが、彼はというとどういった表情でいるのか分からない。
― そして
「やっぱり、バスケット!」
「……!」
「紳ちゃんと2人で、また一緒にしたいな……」
「綾」
これがホントのホントに最後だよ、と慈愛に満ちた可憐な花は広く雄大な海の男に向けてそう告げた。
「フリースローとかも、百発百中とまではいかなくても連続で入れられるようにしたい!」
「なるほどな。それがお前の一番の要望か」
「うん……!」
この話題が上がると、先ほどまでの空気感が嘘の様に会話が弾む。
最愛の人との仲をもっともっと深めたい。それは決して嘘ではなく、その時が来れば意外とあっさり受け入れられることだろう。
が、本来の姿に戻ったばかりの彼女が一番に望むものは2人の共通の好きであるバスケットを共に楽しむこと。これ以外は考えられなかった。
「内容は言えないけど……
桜木くん、今すごくノリに乗っててね。明日から赤木キャプテンとみっちり特訓なんだって」
「ほぅ」
絶不調どころか大絶好調。
日中の練習試合で、桜木は武里と陵南の戦いを前にアグレッシブな動きを見せていた。
履修していない練習内容だけでいうならば自分も元コーチと同じポジションに立っている。
綾は唐突に彼の名を出し、己の課題であるシュートやボールを自在に操れるよう努めたいと意気込みを表す。フルモデルチェンジした桜木の上昇気流に乗っかろうということも考えられる。
彼の一挙手一投足は心に強く働きかけを示した様だ。
「元コーチを見習って、私も頑張ろうと思う!
今はまだ手探りの状態だけど徐々に形になっていけたらいいなぁ、って……」
「綾……」
試合当日に驚かせるつもりだろうか。
綾は特訓内容はもちろん髪型が劇的に変化したことさえも言わなかった。
また、自身を天才だと自負している桜木。
プライドを傷つけないためにもここは内密にしておくべきだと咄嗟に判断したのだろう。
「そうか。形づくるためにも、俺たちも明朝から取りかかるとするか」
「えっ……海南ももうすぐ試合だし、私のことは後回しでいいよ?」
「そう言うな。物事は早いとこ始めたほうがいいぜ」
「でも……」
試合が近ければ近いほど重荷になるのではないかと引っ込み思案になってしまう綾。
それでなくとも、明日にはできない理由がありそうだ。
「……それなら、明後日はどうだ?」
「でも、2日前じゃあ……『迷惑じゃない』」
「!」
「俺にその要望を叶えさせてくれ。手遅れにならないうちにな」
「紳ちゃん……うん……! 分かった、明後日ね!」
迷惑ではないかと渋る様子に牧は容赦なくメスを入れ、2日後に自分たちも着手しようと口約束を交わした。
「桜木がどうパワーアップするか、楽しみだな」
「ねーっ!」
悪意も下心もない。
打算のない笑顔に彼も釣られ、フッと笑みがこぼれる。
「それにね。明日、絶対にやらなくちゃいけないことがあって……ちゃんとハッキリさせてくるね……!」
( 綾……? )
「男か……?」
「う、うん……だけど、どうして分かったの……?」
「直感だ」
「……そうなんだ……」
さみしい、と正直な気持ちを伝えることができた。
やり残していたことをきちんと済ませてから次のプロセスへと進みたい。
それが具体的でない物言いだとしても、牧には何のことなのか十中八九理解できていた。
携帯電話を開けば時刻は19時半を過ぎている。2人はゆかりの地を後にした。
季節は夏に向かっている。よって時期外れな手袋やマフラーなどは持ち合わせていない。が、日の入を過ぎればひんやりとした空気が全身を覆い肌寒さを感じるもの。
「寒くないか?」
「うん。大丈夫……」
途中、ブレザーを脱ごうとしていた牧だが
必要なかった。彼女には手のぬくもりだけで充分で、この上ない幸福を感じていた‥‥
何度も通った綾の自宅への帰り道。
夜道は危険だと送ってもらっていた。
以前は事件直後で身も心もくたくたであったが、分かり合えた現在では180度まるで違う。
制服が少々濡れても関係は冷え切っておらず、温かい。
男女の熱の高さに今にも乾いてしまいそうだ。
かおりの一件以降、交際の許しを得たもの
娘の安全を考慮し門限が定められた。
部活動もあるが最低でも20時までには帰宅するよう両親により決められていた。
自宅の前に到着すると、名残惜しそうに手をほどく。
「じゃあな。また明後日にな」
「うん。ありがとう」
別れ際、恋人の肩に白い糸くずが乗っかっていることに気付いた。
「あれ? 紳ちゃん、肩に何かが……」
「…………」
先日、快復祝いに贈ったタオルの一部のものだろうか。腕を伸ばして取ろうとすると牧は綾と身体を向き合わせ、ふたたび顔を近付けた。
「……!?」
不意を突かれ
夜空から星屑の様な、キスが降ってきた ――。
と思いきや、あたたかい静かな吐息が額に当たる。
「……っ」
綾の顔を見つめる牧の表情が、切なく歪む。
「おやすみ」
そして‥‥耳元でそう囁いた。
「おやすみ……なさい……」
( しっ……紳ちゃん……? )
背を向け、去ってゆく牧。
大胆かつ謎めいた行動に驚くも囁き声や眼差しが片時も頭から離れず、胸を焦がす。
" 我慢できないかもしれない "
あれはストッパーという名の理性に打ち勝った彼から彼女への配慮なのだろうか。
高揚し、あまり眠れぬ夜を過ごした綾‥‥
――
「ただいま」
「おかえり……って、どうしたのよ。それ」
「ん?」
「ズボン。濡れてるじゃないの」
自宅に帰り、階段を上る途中で
例の跡を発見した母親は息子に声をかけた。
「新しい思い出だ」
「え?」
綾と同じ言葉を返した牧。
少しくらい制服が濡れたってそんなもの屁でもない。
何故ならこれは、最愛の彼女と分かり合えた印であり証拠だから。
その一言だけを告げ、淡々とした足取りで自室へと向かうのだった。
( ハッキリさせたいってのは、おそらく水戸のことだろう。
俺が親父さんに言ったように自分もケジメをつけたいってことか。
大丈夫、か……まるで " まじない " のようだな。
綾。
何があっても、お前のことを信じている。
もっと強欲になってもいいと思うが……
それにしても、バスケットを2人でやるのはいつ振りだろうな。
ディープキスか……
やはり、ここ最近は性に積極的になってきたな。
意味が分かって言ってるんだよな。
誰かに触発されたんだろうが
無意識に俺を誘ってるのか……?
自分から言っといて、あの反応はねーだろ……
恥じらう様子と花の甘い匂いに惑わされて、今にもおかしくなっちまいそうだ。
しかし……アイツのことを一番に考えたら
その線を飛び越えることはできんな…… )