三日目
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夕食を終えると、ゴンは約束があるからと言って帰っていった。
寂しがるルビーを何とか寝付かせ、俺も隣で眠りについた。
深夜。
ベランダに微かな気配を感じ、目を開けた。
「……ちっ」
閉められたカーテンに、月の光がその人物のシルエットを映し出す。
すぐに誰かはわかった。
わかった瞬間、緊張感が胸に走る。
ルビーを起こさないよう静かにベッドから起き上がり、ベランダに出て窓を閉めた。
「やぁ。久しぶり、キル」
気配の主は予想通り、ウチの長兄のイルミだった。
相変わらずの長髪は年齢を重ねても瞳と同じ漆黒のまま。
能面みたいな無表情も、昔のままだ。
「何の用だよ」
兄貴を前にしても、脳に針刺されてた子供の頃みたいな恐怖感はもう感じない。
ただ、俺が兄貴を苦手な事に変わりなかった。
「最近音沙汰ないからさ。キルが元気にしてるか見に来ただけだよ」
「それがホントでも大きなお世話だっつの。
どうせまたお袋からの伝言だろ?」
「…それより中に誰かいる?ゴンじゃないね?」
チラリと俺の背後へ移された視線。
塞ぐように腕で遮った。
「関係ねーだろ。早く用件だけ置いていけよ」
殺気立った俺の目に、兄貴はどこか満足そうに口角を上げた。
「母さんから。近いうち、一度家に帰って来いってさ」
「はぁ?何の為に。結婚ならしないぜ」
「それはもう母さんも諦めてる。ただキルと話したいみたいだよ。
もう何年も帰ってないんだから、たまには顔出してやりな」
まるでどこにでもある普通の家族のような話。
普通の兄みたいな台詞。
…空々しくて反吐が出るぜ。
内心、「ぜってー嫌だ」と突き飛ばして追い返したい気持ちだったが、とにかく俺は穏便に手短にコイツとのやり取りを終わらせたかった。
「…わかったよ。近いうち行ってみる。
本当に何の魂胆もねーんだよな?」
「昔に比べて母さんも丸くなってるから大丈夫だろ」
俺の承諾を得て、目的を果たした兄貴は立ち去ろうとベランダの欄干に飛び乗った。
しかし、窓の内側から乱暴にガラスを叩く音によって、その足は引き止められてしまった。
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