残りの半分
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抱きしめる代わりに、自分のハンカチでダリアの涙を拭いてやった。
辺りは行き交う人々の声や道路を走る車の音
風が揺らす木々のざわめき
色々な音で溢れているのに
二人の間に流れる沈黙は、それら全てを遮断していた。
「……そろそろ行くよ」
ラタルがそう言って、その場を去ろうとした時、ダリアが口を開いた。
「ねぇラタルくん……
ラタルくんはもう、私を好きじゃないんだよね?」
落ち着いた瞳。
区切りをつけようとしているのか、その声も冷静だった。
ラタルは瞬間的に返答を迷った。
イエスと答えた方が彼女の為にはいいかも知れないと思った。
しかし―――
「今でも、俺は君が好きだよ」
――この言葉を彼女に言うのはきっと最後になるだろう
だから、有りのままを正直に答えた。
「君をとても愛してる。今でも変わってない。
でも、いずれこの気持ちは終わる。
俺は自分の護るべき者を命を懸けて護っていくから」
「ラタルくん……」
ダリアはまた溢れそうになる涙を、唇を噛んで食い止めた。
ちゃんと、止める事ができた。
「……頑張って……
私は……ラタルくんをずっとずっと応援してる……」
「ありがとう。俺も、ずっと君の幸せを祈ってる。死ぬまでずっと」
この身が果てるまで
燃え尽きるまで
「また、ね」
「またな」
以前の別れとは違い、二人は微笑みながら握手を交わし、さよならではない言葉で最後を閉じた。
次にもし、どこかで会えたその時は
きっと笑って手を振れる
そう、思った。
先に去ってしまったラタルの後ろ姿をダリアは見えなくなるまで見つめていた。
大切な思い出が、ただ懐かしいと笑える日が来るまで
まだ少し胸は痛いけど
もう、八方塞がりな苦しみはない
彼は最後に、ちゃんと終わりをくれたんだ
「ありがとう、ラタルくん……」
冬の寒さは真昼の陽気に掠われて
心の底まで温もりに満たしていた。
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