残りの半分
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欲しい物も、買いたい物も、頭の中から一気に吹っ飛んだ。
ラタルは寄ろうと思っていた店を全て素通りして、街の中央にある公園に立ち寄った。
人が多い割にベンチは空いていて、ラタルは力を無くしたようにそこに乱暴に身を倒した。
仰向けになり空を見上げると、朝と変わらぬド快晴。
グシャグシャになった心の中を、青く青く染め上げて
不甲斐なく涙が溢れた。
今、ルルと母さんはどうしているだろう?
父さんもいるのだから、大事はないと信じているが
――いや、大事があれば、すぐに連絡があるだろうと信じているが
"ラタルくん……!"
―――ダリア
君が好きだよ
忘れる事すら恐いと思っていたけれど
今は、忘れる方法があるなら教えて欲しい
俺はルルを裏切りたくない
心の半分はもうルルにあげたんだ
残りの半分も
なぁ
返してくれないか……?
「ラタルくん……」
……ほら、な?
声だけで戻ってしまう
顔を見たら……
「ラタルくん……逃げるなんて酷いじゃない」
泣きながら笑う声が、頭上でしゃがむ気配がした。
ベンチに横たわる俺の耳元で、少し荒れた息が聞こえた。
遮るように額に添えていた腕を下ろし、ゆっくりと目を開ける。
そこには、いつもと変わらぬ鮮やかな紅があった。
涙の筋をいくつも作って。
「……少し髪……伸びたな……」
勝手に綻ぶ頬。
ダリアはまた後から後から涙を流した。
「ラタルくんは……少し痩せたかな……」
何気ない会話が、奇跡のように感じる。
「よく…気付いたな……」
「気付くよ…待つのが癖になってたのに、簡単には抜けない」
「そうか……」
ダリアの顔から目を逸らす。
無意味なのはわかっていても、見ている事にすら罪悪感が湧くのはルルのせい?
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