逃げ場所
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例の如くクローゼットの中の小さな冷蔵庫からテキーラを取り出し、コルクを開ける。
「つまみがないな」
ぼやきながら、くっと一口飲み込んだ。
相変わらずシャツの裾はルルに掴まれたまま。
いつもと違い、うんと静かなルルが慣れなくて違和感を感じる。
「……何も訊かないんだな」
「さっきリンと話してたの、聞こえたから……」
「……そうか」
抑揚ない返事を返し、またテキーラを流し込む。
ルルも起き上がってベットの上で膝を抱えた。
「……すまなかったな。必死になって背中を押してくれたのに。俺にはダリアを引き止める事はできなかった」
「私に謝る必要なんて全くない。私は……ただ、ラタルが幸せならいいと……思って……」
かける言葉が見つからない。
ラタルが今どんな気持ちでいるか……
何を言っても救えはしない。
「ねぇラタル、私ね……国に帰るわ」
「帰る?何故?」
ラタルは驚いた表情で振り返り、手に持っていたボトルからテキーラが少し零れた。
「だって……私が来なければこんな事にはならなかった。私がいたからラタルが……」
「違う!……それは違う。俺はどの道ハンターは捨てられなかった。そしていつかはダリアにも俺の全てを知られる日が来ていたんだ。
だから……」
――思いたくない
運命だったなんて思いたくないけれど
いつかはこんな岐路が必ず来ていたんだ
だから――
「ルルのせいじゃない」
「でも」
「俺は……今ルルがここにいてくれて……救われてる」
もう必要はないのに、ダリアに対して少しだけ罪悪感の伴う言葉だった。
しかし、真実の気持ち。
それを聞いたルルの見開いた瞳から、一粒の涙が零れ落ちた。
「言う通りだな……今は……確かに俺にお前が必要だ」
あらゆる想いが胸を埋め尽くして、微笑むラタルの頬にも雫が流れた。
ダリアが恐れた朱い瞳も
その涙も
ラタルは全てがどうしてこんなに美しい
「ラタル……愛してる……」
口に出すと、尚更に想いは募る。
間近にあるラタルの端正な顔が、少しずつ近くなる。
「ルル……」
無意識、だった。
ルルは自然に、引き寄せられるかのように
ラタルに唇を重ねていた。
一瞬、世界が消えた。
音もなく、光もなく、空気すらない
宇宙の中に二人きり、放たれたようだった。
ルルからキスをされるのだと気付いた時、ラタルは拒絶するでもなく、まるで誘われるように瞳を閉じた。
触れるだけの、小さなキス。
一瞬がとても短く、永く感じた。
唇が離れ、同時にゆっくり目を開く。
かちあう視線。ラタルは目の前の美しい少女の顔を見つめ、柔らかく微笑んだ。
「…ふっ。らしくない事して…」
聞いた事もない優しい声でそう囁くと、ルルの頭をヨシヨシと撫でるラタル。
ルルは我に返って自分のした行動に思わず赤面するが、ラタルの余りに優しい態度にまた涙が溢れた。
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