逃げ場所
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
母さんに悪気は全くない事はわかってた
ああいう人なんだ
無神経で
真正直で
天真爛漫すぎて
「……くそっ…」
でも、到底謝る気にはなれない
ラタルは自分を責めながら、珍しくそれっきり何も言ってこないリンにも何だか無性に腹が立った。
ルルの部屋に行かなきゃいけないのに、また同じ事を聞かれるのも言うのもうんざりだ
傷の具合も気になるし、顔も見たい
でも行けない―――
本気で最低だ、俺は…
悶々としたストレスが一身にのしかかる。
どうしようもない苛立ちに頭を抱えていた、その時だった。
「ラタル……」
コンコンと小さなノックが聞こえ、扉の向こうからルルの声が聞こえた。
「ルル!?」
腰を下ろしていたベットから跳ぶように立ち上がり、慌てて扉を開けるとルルが微笑んで立っていた。
「起き上がって大丈夫なのか?」
「ええ、リンに貰った薬で熱は引いたの。傷の痛みも今のところないし…凄いわね」
「そんなのはその場凌ぎだ。まだ寝ていなきゃ駄目だ」
「じゃあ、ラタルと一緒がいい」
気まずそうに淋しそうに俯き、そして少し申し訳なさそうにそう呟いた。
控えめながら、ワガママは健在。
しかし、何故かルルの顔を見た瞬間に心の中の苛立ちはスッと消えた。
まるで洗われたように。
「……このベット、二人で寝るには狭いぞ」
「構わないわ」
ラタルの一言でたちまち笑顔になるルルが、何だかとても可愛く思える。
部屋に引き入れ、少し乱れていたベットを整える。
「どうぞ」
「ありがとう」
素直に横になるルルの体に毛布をかけた。
「ラタルは寝ないの?」
ベッドの端に腰を下ろすラタルのシャツを引っ張って問い掛けると、ラタルはなだめるようにルルの頭を撫でた。
「まだ眠れないから、ルルは先に寝ていい」
「また屋根の上でお酒を飲むの?」
「少し」
「私も一緒に飲む」
「怪我人は酒なんか飲んだらダメだ」
「一緒にいたいのよ。今ラタルには私が必要なの」
「………………は?」
今何か間違っただろう?
と、突っ込みたくなる言葉。
「逆だろ?」
「いいえ。ラタルに、私が、必要なの」
………う~~~~ん……
堂々と言われ、返す言葉もない。
「屋根の上じゃなくて私の隣で飲めばいいじゃない。月なら、ここからも見えるわ」
「今日は月は出ていない」
「なら月の代わりに私が光るから」
「じゃあ今すぐやってみろ、すぐ光ってみせろ」
「……意外とサディストね」
ムーッと膨れるルルを見て、ラタルは可笑しそうにクスクス笑った。
・