逃げ場所
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「俺はダリアにそう言われた時、ほんの少しだって迷う余地を持たなかった。俺の中で、それを量る天秤すら見当たらなくて……
俺には人を好きになる資格はないんじゃないかと思った」
噛み締める唇から、血が滴る。
何を置いても優先してしまったのは自分。
自分の夢。
ハンターとして生きる道だけだった―――
黙って聞いていたキルアは冷めたココアを一気に飲み干し、床にマグカップを置いた。
「……なかなか想像できないけど俺の場合、あいつがそんな事言うわけねーし。
けど、昔の俺ならあいつの為にハンター止めたと思うぜ」
「あいつって……まだ好きなのか?」
一人しか思い浮かばない"あいつ"を指して言うと、キルアは怪訝そうに眉をしかめた。
「今日だけだぞ!今日だけはホントの事をちゃんと話してやるよ」
否定しない。
やっぱりまだ母さんの事を―――
「…あいつは最初からクラピカ一筋だったからお前とは事情が違うけど、もしあの頃にハンターをやめればあいつが手に入るって言われてたらやめてたな。
それぐらい好きだった」
「過去系なのか?」
「いちいち突っ込むなよ!とにかく、俺の場合はそうだけど、たぶんゴンは違うぜ。
ハンターを目指した理由からして違うし、もっともゴンは根っからのハンターだからな」
キルアから言われ、ラタルは「確かに」と内心で納得する。
確かにゴンなら例え大切な女ができてもハンターをやめるなんて決断は絶対にしないだろう。
しかし…ゴンなら
ハンターである事もその人も
何とかして手放さない道を見つけるような気がする……
「…しかしキルア…あの頃の自分なら、と言ったが…今は?」
「今はもう興味本位でハンターやってるわけじゃねーし、仲間もいるし、ちゃんと意義も持ってるからな」
つーか今更あいつが手に入る想像すらできない、と言って空笑いするキルア。
「俺は……俺の場合なら何が正しかったのだろう?今だってダリアを愛する気持ちは変わらない。だが、ハンターを止める事は到底考えられない」
「じゃあいいんじゃねーの?お前が選んだ道で」
深刻なラタルの表情とは真逆に、あっけらかんと投げ捨てるように答えるキルア。
「実際お前はクラピカよりゴンに傾倒してると思うぜ。クラピカなら迷いなくリンを選ぶ。
ハンター自体に意義を持ってる訳じゃなくて、元々は仇討ちの為だしな」
「しかし今は本業として」
「何にせよ、人生の中でどうしても譲れない物があるって事だろ?代償があって当然だ。
後はお前がどれだけ耐えられるかだろ。犠牲を払ったぶん、糧にして前を向かねーとな」
「………っ……」
ダリアを失う代わりに
前を………
" 離れても、応援してる……"
ダリアに押された背中
振り返らずに進む為の……
「本当のハンターになれよ。お前ならなれる」
涙を隠すように再び俯くラタルの頭を、キルアはぽんぽんと叩いた。
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