逃げ場所
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その日、ラタルはダリアちゃんの元へ会いに行ったきり帰って来なかった。
「おい、どういう風の吹き回しだよ。
わざわざこんな遠くまでいきなり来るなんて」
自宅のワンルームの一角にある狭いキッチンで、キルアはけだるそうにココアを煎れる。
アポなしで突然押しかけて来たラタルは押し黙ったままベットに突っ伏している。
キルアは溜め息をつきながら枕元にカップを置いた。
「おい、俺が寝れねーだろーが。つーか何なんだよ?何かあったのか?」
「…………」
「シカトしてんなっつーの!来たからには相談か何かあったんだろ?ないなら帰れよ。
悪いけどマジでここ一月位まともに寝てねーんだよ」
「…………」
「マンション買って俺にも安らげる場所を確保したってのによ。聞いてんのか?」
「…………」
どれだけ問いかけても返答なし。
身動きひとつしないで俯せになったまま。
まさか寝てんのか?
疲れも調度ピークに達し、安眠を邪魔された苛々でキルアは不機嫌MAXに到達。
ドカッとベットの足を蹴り上げた。
「おいラタルッ!聞いてん…」
「帰れない……」
勢いよく首根っこに手を延ばしかけた時、漸く聞き取れるような微かな声で、今日初めてラタルが言葉を発した。
「……帰れないって、なんでだよ。リンと喧嘩でもしたか?」
自分のココアを啜りながらベットに腰を下ろすと、ラタルも仰向けになり、ゆっくりと上体を起こした。
「……今日は帰れない。母さん達に何を聞かれても……まだ答えたくない。
いつも通りに振る舞う自信もないし、家の空気を悪くするだけだ」
「はぁ?意味わかんねーよ。何を聞かれたくないって?」
「………ダリアの……事だ……」
"ダリア"
その名前を口にするだけで胸が締め付けられる。
心が痛くて、引き裂かれそうで
こんな気持ちは初めてで―――
「ダリア?リンが言ってたお前の女か。が、どうしたんだ?」
怪訝な表情が一気にワクワクと興味津々な顔に変わり、続きを急かしてくるキルア。
しかし、次の瞬間でそれも終わった。
………ポタッ………
涙が、落ちた。
俯くラタルの膝の上に、ポタリ、またポタリと
いつも生意気な程に凜としているラタルの肩が震えている。
「お前――――」
「なぁ、キルア……教えてくれ……」
どれだけ愛していても手が届かない苦しみはどうやって越えればいいんだ?
キルアはどうやって乗り越えた?
どうすれば
俺は
「忘れる事すら怖いのに…!」
心だけ
愛しい人の元に
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