走る、君の元
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自分の手を握るラタルの手から
心からの「すまない」が伝わってきた。
何を謝っているのかはわかっていた。
怪我を負わせた事より何より
彼の中の、心の問題なのだ。
「ラタル…私は……ラタルが好きだから大丈夫……」
途切れ途切れに、ルルは言った。
「……だからだ。お前が俺を想ってくれているのに、俺はお前を護れなかった」
ラタルは深く俯き、ルルの顔を見ようとしない。
「当たり前でしょ…?あの時は……ダリアを護ろうと……してたのだから……急に飛び出て来た私を……護れるわけ……ない……」
「違う!……違うんだ……すまない……」
「……謝ってばかりね……謝る必要など少しもないのに……」
ルルのクスッと小さな笑い声で、ラタルはゆっくり顔を上げた。
辛そうに熱い息を吐き、目を潤ませながらも、ルルは微笑んでいた。
「ダリアを迎えに行って……話をすれば……きっと伝わるわ」
「……それはできない」
ラタルは静かに首を横に振った。
「…これは価値観や考え方の問題だ。今まで過ごしてきた環境や学んできた常識……教えられて、受け入れて来た事が違いすぎる。
ダリアは俺を異質だと感じたんだ。あの目を見て、わかった」
俺を見るダリアの目には
はっきりと"恐怖"が映し出されていた
俺が怖いと……
瞬間的に、終わりの予感がしたんだ―――
「諦められるの…?離れられるの…?」
「簡単な問題じゃない」
「気持ちだって…簡単じゃないわ」
「わかってる。でも、俺からはもう何も言えない。後はダリアが決める事だ」
「違うわ…!貴方が彼女の気持ちを変えるのよ!
好きならできるでしょ?そんな……事で諦められるなら、今すぐに私にちょうだい!」
ルルは泣きながら声を上げた。
痛む傷を押さえて、叫んだ。
「ラタルをちょうだい!私なら、諦めない!私なら絶対、この気持ちを貫くから!何があっても……」
「ルル……」
「…っ、行きなさい、ラタル!ダリアが好きなら離れたりしちゃ駄目よ!
一生後悔するから!私がそんなのは嫌なの!」
ボロボロと大粒の涙が横たわるルルの頬を斜めに下り、幾つも幾つもシーツに染み込んでいく。
その自分への想いがどれだけ深いかを、ラタルは初めて知った。
ルルはラタルを心から愛していて
叶わない想いを、ラタルの幸せを願う事で意義とした。
そうする事で、辛さはどんどんなくなった。
ラタルを思う気持ちだけで幸せになれた。
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