刃-やいば-
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ダリアはいつもよりずっと落ち着いていて、その態度がラタルの不安を助長させた。
しかし、ふと振り向けばルルはラタルを庇って負った傷を押さえながらも、ラタルの無事を手放しで喜んで笑っていた。
苦しいだろうに、心配をかけないように明るく振る舞って。
「……家に行こう。母さんが手当てしてくれる。医者もすぐ呼ぶから」
手の届く範囲にいたダリアの腕をまた掴むと、反射的に音を立てて振り払われた。
「……あっ……私……怪我してないから……」
大丈夫だから、とボロボロ涙を零し続けてダリアはラタルを拒絶した。
「ごめんなさ……」
「泣くな」
何も言うな
たった今
傷付いたルルの事を最優先に考えられない自分に
ただでさえ苛々しているのに
ルルの事より
無傷のダリアの
言葉の続きを恐れている
自分が何より嫌なのに
「行こう。抱えてもいいか?」
ダリアを置き去りにしてルルの体を支えながら言った。
「それよりダリアを!私は本当に大丈夫だから!」
悲痛な表情で自分の動脈を押さえながら、ルルは何度もそれを繰り返した。
彼女にそんな殊勝な心があったなんて、今まで全くわからなかった。
血だらけのルルに促されても、ラタルはダリアの側へは行かなかった。
「いいから掴まれ」
「ラタル!ダリアは貴方を信じられないんじゃない!ただ、未知に触れたショックで受け入れられないだけよ!
必ず時間が解決するのよ!だから手放しちゃ駄目!駄目よ!!」
「……とにかくお前は自分の身を案じる事が先だ」
世間知らず。経験値の少ない少女の未熟な言葉。
…そんな風には到底思えなかった。
二人の不毛なすれ違いを必死に阻止する為に、ルルは命を削って声を張り上げていた。
それなのに、やはりラタルはダリアの方へと足を向ける事はできなかった。
ダリアもこちらを見ていない事を、暗に感じていた。
「すまない、ルル」
ラタルが謝ると、ハッと驚いたように顔を上げた。
「私に謝る前にダリアを支えてあげて!」
「もう俺からは手を差し延べる事はできないんだ」
「何を言っているの!?今貴方が手を差し延べなければダリアはもう」
「いいんだ。……いい……んだ」
いい……わけはなかった
それでも、もうどうしようもなかった
これはダリアとの道を分ける確かな出来事だったのだと、確信した
ダリアがハンターという存在を受け入れられるかどうか
危険に晒されるのをわかっていて見送れるか、迎えられるか
目の色が変わる
身体に宝石を持つ
未知の力を遣う
……そう、時として味方にすら……
そんな俺と
この先も同じ未来を目指して生きていけるかどうか―――――
「母さん、ダリアを頼む」
ビルの谷間、空へ向かって呼びかけると、返事もしないでどこからともなく母さんはやはり現れた。
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