刃-やいば-
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痛みはなかった。
俺はダリア共々、強い力に退けられるまま地面に飛ばされていた。
「ラタ……」
ドサリと鈍い落下音と、噴き出す血の匂い……
そして弱々しく呟かれた名前
目の前の光景は、まるで悪夢のようだった。
「……ルル―――!!」
俺はダリアを残し、血まみれで地に伏したルルの体を抱き起こした。
「ルル!何故……何故お前が!!」
肩先を切られたらしい。
支える場所からドクドクと脈動に合わせて血が溢れ出す。
「ラタル……大丈夫……?怪我……してな……」
「!!何を!!お前こそ!俺なんかを……なんで……!!」
なんで!!
王室で何不自由なく暮らしてきたはずのお前が
何故、命を賭して俺を…
そんな覚悟に直面する場面など今までなかったはずなのに
何故、何故―――!
「私は大丈夫……血は出てるけど、ちゃんと動脈を押さえておけば、まだ持つわ……
それより、ダリアを……」
飛んでいた脳がルルの言葉で瞬時に状況を再確認する。
敵はユラリと曲がった背中で嬉しそうに得物についた血を舐めている。
「ああ……この娘にしようかな……でも全部欲しい……でも一つでいい……
もうすぐ腐るあの首の代わりに俺の側に置くのは―――」
先程までの地響きのような低い声とは違い、ヒソカのように上擦った声でブツブツと独り言。
改めて見るその男は随分と細身で、身長は高くない。
青白い顔にはルルの返り血が滴っている。
「貴様が……ニグナ=リバル……」
「あ……俺の事、知ってるの……?じゃ……君が……いいかな……
腐り落ちるまで俺の側に……いてくれる……?」
ハァハァと息を荒くして、ゆっくりこちらに歩み寄ってくる。
「はっ…いいだろう。その寒気がするほど熱いプロポーズ、受けてやる」
濃くなっていく闇の中、ラタルの瞳が煌々と燃え始めた。
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