灰色の王女
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部屋に向かうまでは共の者も従えていたが、部屋に着くなり王女は皆に散るよう促した。
侍女達は特に反抗もせずにそれぞれの仕事をする為、散っていった。
王女がパタリとドアを閉める。
いよいよ二人きり。
何のつもりだか二人きり、だ。
「ふ~っ、やっと落ち着けるわ!」
王女は心の底から気の抜けるような溜め息を吐くと、身に付けたネックレスやらイヤリングやらを外し始めた。
そしてボスンとベットに仰向けに倒れ込んだ。
「……大丈夫ですか?」
「ん~、今日は語学からフェンシングからダンスから……予定ぎっしりだったの。疲れたぁ!」
「それは大変でしたね……」
なんだこれは。
呼ばれたかと思えば放置?
どこに座る許可も出されていない俺はその場に立ち尽くす。
「あ、ソファーにでも腰掛けなさい。お茶も飲みなさい。お菓子も食べなさい」
命令か。
俺は甘い物は嫌いだ。
(お菓子作りが大好きな母さんにいつも嘆かれる)
だが、とにかく座る許可が出たのでとりあえず言われた通りソファーに腰を下ろす。
王女は暫く横になっていたが、一時してからムクリと身を起こしてベットの上に座った。
「どう?美味しい?」
「まだ飲んでいません」
「あら、飲みなさい。遠慮はいらない」
「ありがとうございます」
そう答えたが、何だか欲しくならずにお茶にも菓子にも手をつけなかった。
「いきなりごめんね。でも皆は私を絶対一人にしてくれないから。
どうせなら貴女みたいに何も知らない人と静かに過ごしたかったの」
胡座をかいて背伸びをする王女。
「…しかし皆、よく許しましたね。お…私のような新参者と二人きりなど、かえって危険な場合もあるのではないでしょうか?」
「ああ、そんな事もう、皆どうでもいいのよ。私はもうすぐ去る人間だから。
もともと第五王女なんて、ただでさえどうでもいい存在なの」
眉を下げて笑いながら王女が言う。
「まさか。そんな事はありません」
「そうなのよ。そんなものなの。我が儘も許される。
あ、さっきは謁見の間で嫌な事言ってごめんなさいね。決まり事だから仕方なく」
どの事を詫びているのかわからないが、俺は恐縮して否定した。
王女は皆の前とは全然態度が違う。
こういうものなのだろうか。
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