屋根の上
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満ち足りた月が高らかに昇り、世界を照らす夜。
静まり返った家の屋根の上で一人、ラタルは夜空を仰いでいた。
「まぁラタル、どうやって登ったの!?」
どこぞから例の甲高い声が。
見れば勝手にラタルの部屋へ入ったらしいルルがベランダからこちらを見上げている。
「またお前は無断で」
「私も行きたい!」
「…………」
「……ダメ?」
不安そうに声をすぼめるルル。
「……俺の部屋のクローゼットの隣に梯子があるから登ってこい。天窓を開ければこちらに来れる」
どうせ断ったって聞きはしないんだ…
「ええ、わかった!!」
美しい顔に笑顔を咲かせ、部屋へと入っていった。
直ぐさまガタガタという音と共に天窓が開き、ルルが窮屈そうに顔を出した。
「ずいぶん固い窓ね、力を要したわ。ラタルもここから出たの?」
「俺はベランダから跳び上がった。普段その通路は使わない」
「そうなの?すごいわね…わっ、手摺りもないわ!怖くないの!?」
「怖くない」
「さすが!あら、それ何を飲んでいるの?」
「…飲むか?」
月光を受け、ラタルの白い肌が柔らかく浮かぶ。
洗い上がりの髪が、琥珀の瞳が、いつもより優しい笑顔が
ルルの胸を高鳴らせた。
"飲むか"と差し出された青い瓶。
ラタルが今しがた口を付けていたものだ。
受け取ったもののルルは硬直。
「あっ、すまない!」
ルルが今まで男性嫌いだった事をすっかり忘れた軽薄な行動を謝罪し、ルルの手から瓶を取り上げようとした。
しかしルルはそれをかわし、瓶の中身を一気に飲みほした。
「わっ馬鹿!それは…」
止めに入るも時既に遅し。
瓶の中味はワインだった。
「………む"っ!!これ……お酒!?」
即座に気付いたルルは噎せながら眉間に深くシワを刻み込み、口の端を指で拭う。
「大丈夫か!?お前……全部飲むなんて!」
「だって……」
カァーッと頬を真っ赤に染め、今にも屋根から転がり落ちそうにグラリと体が揺れた。
咄嗟にラタルが抱き止める。
「おいっ!もうお前は降りろ!」
「ふ…不良ね……両親が寝た後にこんな所でこんな物を飲んでいるなんて……」
具合が悪そうなのに何故か笑っている。
「なんか楽しそうだな」
「だって今最高だもの……こんな素敵な場所であんな綺麗な月を見ながら……ラタルの秘密を知れて……ラタルの腕の中にいられて……」
未来に続く恋ではないとわかっていても
なんて輝かしい一瞬を
貴方はくれるの
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