屋根の上
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どれ位寝たのか
久しぶりの熟睡だった。
窓の外はすっかり暗くなっていて、携帯を見るとPM8時を過ぎていた。
ダリアからの連絡は来ていなかった。
電話をかけてみるが、出ない。
一応「疲れてないか?来てくれて嬉しかった」とだけメールを入れておく。
部屋を出て階段を途中まで下ると、いい匂いが漂って来た。
「……シチュー?」
『あ、おはようラタル!ルルちゃんがシチュー作ってくれたよ!おいで、今よそってくるから!』
リビングのテーブルでは先に食事をしている父と母。
ソファーではルルがエプロンをつけたまま眠っていた。
「……ルルが作ったのか?」
『そう!でね、ラタルが起きてから一緒に食べるって待ってたの。私達だけ先に戴いちゃったんだけど凄く美味しいよ!はい、どーぞ!』
リンはラタルとルルの分のシチューをテーブルに並べた。
ただじっとそれを見つめるラタル。
『ルルちゃん、ラタル起きたよ~食べよ!』
「ん……あ……おはよう……ラタル……」
ソファーの上で重たそうに体を起こすルル。
「ルルが作ったのか?」
「……うん、そう……食べてみて……ラタルに……食べて欲しく……て……」
コテン。
とソファーに倒れ込み、また眠ってしまった。
余程神経を削ったらしい。
「初めての事だ、疲れたのだろう」
『そだね、凄く頑張ってたもん!』
クスクスと笑い合っている両親。
ラタルはテーブルに着く前にルルのもとへ行き、その寝顔を黙って見つめた。
あどけない。
かわいらしい寝顔。
自分の中で確実に大切な存在になっていくこの王女。
しかし
……自分が愛しているのはダリアだけだ。
ラタルはとても申し訳ない気持ちになった。
この心のこもったシチューを食べる資格などないと思った。
「ラタル、座れ。お前の為のものだ。無下にするな」
『そうだよ、食べてあげて!!それとこれとは別問題!』
クラピカとリンはラタルの気持ちを全て見通し、諭した。
「……ああ、そうだな」
ルルの髪を一度だけ撫で、ラタルは席に着いた。
『ね、美味しいでしょ?世界で2番目かな!
1番はクラピカのシチューだもんね!あの初めて会ったバンガローで作ってくれたシチュー、あれが世界で1番!!』
「ああ、思いだすな。あの時はお前が肩を撃たれていたから食べさせてやったんだ」
『そーそー!それでさ、クラピカが " また会える気がする " って言ってくれて』
昔話に花を咲かせる二人。
それは大切な、この物語の始まりだった。
ルルのシチューはとても美味しくて
胸が痛くなった。
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