灰色の王女
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シャラシャラと身に纏った飾りたちが擦れ合う音が聞こえた。
まだ許可が下りないので頭は下げたまま。
顔はわからない。
あらん限りに鳴りまくる心臓。
隣のメンチを盗み見ると、慣れたように平然とした様子。
くそっ、いい気なものだ
自分は挨拶だけ済ませれば帰れるんだしな
「顔をおあげなさい」
上品な声に命じられ、頭を上げる。
王女は玉座の前に立ったまま俺達二人を見下ろしていた。
「お初にお目にかかります、ルル王女殿下。
私はハンター教会からの遣い、メンチでございます。
この者はラタル」
「……初めまして、ラタルにございます」
王女殿下の側にお仕えする事ができ、この身に余る光栄の至り……
なんて棒読みで続けたマニュアル通りの台詞。
横から突き刺さるような視線を感じる。
「挨拶はよい。
そなたはとにかく私をしっかり護ればよいのです」
王女はスラッとした手を前に延ばし、とどめた。
「?」
俺がポカンとそれを見ていると、メンチが肘でドカッと突いてきた。
「早く行けっ!」
小声だが激しく耳打ちされる。
「え?あ……」
まさか……アレか!?
アレなのか!?
聞いてないぞとばかりに引き攣った顔でメンチを睨むと、アイコンタクトだけで心の声が聞こえてきた。
「テメェ早くしろっつってんだろ
ヘマしたらテメェだけの事態じゃねーんだぞ
わかってんのか、ぁあ~ん!?」
……すみません
俺が悪かった。
舌打ちは胸の中だけで留めて仕方なしに覚悟を決める。
王女の側へ寄り、延ばされた手を取ると南国に似合わぬ真っ白な指。
忠誠の証にそっとキスをする。
「今日からそなたは生まれてきた意味から変わる。
私の為にその命は与えられた。
その全ての力を持って私を護り、尽くしなさい」
「はい、王女殿下」
うわぁ……
なんて事を言う女だ。
王女とわかった上で非常に腹が立つ。
だが少しの辛抱。
わずかな付き合い。
もちろん命を懸けて護ってやるさ。
―――仕事だからな。
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