緋色の空
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「じゃあ元気でな!携帯買ったら絶対連絡くれよ!」
「うちらの国にも遊びに来てね!」
「ああ、お前達も元気で」
固い握手を交わし、船を降りると同時にラタルとシーク達は行く先を分けた。
寂しさはなかった。
きっとこの絆は一生ものだと、互いにわかっていたから。
こうしてラタルは一人になった。
ふとバスの中でも、雲の上にすら
ルルといた思い出があるのだと気づいた。
「見て、見て」と大きな声ではしゃぐルル。
思いだして、ラタルは一人微笑んだ。
クロロなら、乗り物に乗るといつも黙って本に没頭。
その不思議と穏やかな空気も好きだった。
……全てが終わる……
―――そして始まる。
飛行機に乗って数時間
降り立った空港から、自宅まではバスで30分。
他の国とは空気の匂いも町並みも違う、懐かしい景色。
ラタルは歩いて帰路についた。
賑やかな中心街を、まるで深い山奥から初めて出て来た田舎者のように、キョロキョロしながら通る。
テナントが幾つも入れ替わり、見覚えのない建物が増えて、逆にあったはずの会社や店がなくなったりしていた。
よく通っていた骨董屋、マニアックな品揃えを自慢にしていた雑貨屋、大好きだった無国籍料理の店……
今はもう、コンビニやインターネットカフェになっていた。
その様変わりした景色の中に
今も変わらず、 " 彼女 " のいる本屋は軒を連ねていた。
" 私……ずっと変わらずここにいる "
" 何年経っても、繰り返しここで歳を重ねて、生きていくの "
その言葉通り、彼女の今はここにある。
「…ただいま、ダリア」
届かない距離から、小さく告げる。
ラタルはその本屋に寄る事なく、家を目指して足を進めた。
あの場所がこれからも消えずにある。
それだけで、救われた。
「さぁ…帰ろうか」
家まで続く、最後の長い坂道を前に足を止め
他の誰でもなく、自分に呟いた。
とても、家族に会いたい。
長い坂道を、今全力で駆け出した。
〜続く〜