鼓動
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あんなに頼もしく逞しかったラタルが、信じられないほど小さく感じた。
俯いたまま、震えて泣いて
まるで迷子になった幼子のように……
「ラタル……」
「何も言うな!俺を連れて行ってくれ!お前と一緒にいられるならば、もうそれでいいんだ!」
お前を失うくらいなら、お前以外の全てを失った方がよっぽど……!
自分に言い聞かせるような、そんな結果論でしか言えない仮定を、ルルを前にして心が叫んだ。
離れたくない
楽になりたい
相対する気持ちが利害関係により、結果、手を結ぶのだ。
「……楽に……してくれ……お前にしか、できない……」
今にも倒れてしまいそうに儚いラタルの体。
本能のまま、ルルは包むように優しく抱きしめた。
そのルルの手も、また震えていた。
温かい
この森に掛けられた念によって、与えられた生身のこの体
どこまで忠実に再現されてあるのか
神経がちゃんと、脳に温もりを伝えてくれる
ラタルを感じられる
もう、それでいいじゃない
「……ええ……もう、それでいい。
ラタルが望むなら、私と一緒に行きましょう……」
ラタルが望むなら、それが私の望みになる
「愛してる……だから、私はラタルが傍にいてくれるなら……嬉しい……」
抱きしめ合う二人の涙が、落ちた地面でひとつに溶け合う。
ラタルの心に迷いはない。
そう、ならもう何も考える必要はない。
これからも一緒に
……いられるものなら、いたかった……
「望み通りに連れて行くわ。全てを捨ててくれるなら、喜んで連れてく」
一語一句を口にしながら、ルルはラタルの体を強く自分に押し付ける。
残り少ない時間、少しでも彼の感触を魂に刻みつける為。
「やり残した事も、置いてきた約束も、未練もなくて、ラタルを待つ人も、死んで悲しむ人も……誰一人いないのなら、連れてく……」
ラタルの肩が、微かに揺れた。
ああ、最後になる
今度こそ、今生の別れになる
それでも
それでも、貴方を
「……ルル……もう、何も……」
「違うわよね?何ひとつ、貴方には当てはまらない」
ギュッ……と、噛み締めるようにラタルをきつく抱いた後
ルルはそっとその胸を押し、瞳を見合わせた。
・