鼓動
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第一声
まずは責め立てて、問い詰めてやろうと決めていた。
"何であんな事をしたんだ"
"どれほど辛かったか判っているのか"
"よくもあんな思いを"
"よくも、こんな地獄に―――!!"
「……ルル……なのか……?」
弱々しく口から漏れたのは、らしくもない間抜けた問い。
元々ルルに会う為にここまでやって来たのに。
泣き声を押し殺し、隠れるように木陰にうずくまっていたルルが、顔を上げたその頬はどしゃ降りにでも遭ったようで。
「……お前なのか?本当に……ルル……」
声が、体が、気付けば震えてる。
だって
ルルが
あのルルが、目の前に
「会わずにおこうと……思ったのに……」
漸く聞き取れる程に小さく、ルルは呟いた。
ラタルを見上げる滲んだ瞳。
真紅が美しくて
悲しいくらい、あの頃と変わらない姿。
「ラタルの為に……会わずにいようと思ったのに……!」
写真一枚遺されず、遠退いてゆくだけだったその姿が、また鮮やかに刻まれる。
ああ……そうだ
ルルだ
あの日のままのルルだ
「……ルル……」
触れようと伸ばしかけた手を、瞬間、引いてしまった。
ルルは死んでいる
ルルの体は滅んでいる
触れる事はできない
擦り抜けてしまう――――
しかし、その指をルルの手が捉え、引き止めた。
「……ル……」
心臓が
止まるかと思った。
「……ラタル……」
ルルだ
あの日のまま
「……ぁ……っ……」
涙と一緒にくずおれる体。
それを支えるように受け止めたルルの体は、本当にあの日のまま
ドクン、ドクンと
力強く鼓動を打って温かい。
「ルル……っ!」
それ以上、この口は何を紡ぐ事もできなくなった。
"何で" "よくも"
……そんな言葉、言えるはずもなかったのだ。
胸の奥から津波のように溢れてくる何かが、涙となって零れ出て
ルルの懐かしい匂いが
二人で遥かな未来を夢見たあの日を、鮮烈に、鮮明に
この胸に咲かせたのだ。
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