霧の向こう
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「ルル……ルル……!」
諦める訳にはいかない。
ラタルはまた踵を返し、森をさ迷う。
何故、何故!!
「ルル……!」
遠くにまたバスの姿。
真逆に進んでも、あの運転手の言葉通りに必ず出口がある。
どんどん森が狭くなっているように感じた。
「嫌……だっ……ルル……!」
走っても走っても、ルルの姿はない。
呼ぶ声に応えはない。
それでもラタルは森の中を走り続けた。
「ルル!!ルル――っ!!」
腹の底から声を振り絞って、その名前を何度も呼んだ。
空にまで届けるかのように、魂を込めて張り上げた。
「ルル!!愛してる!お前を愛している!
だから出て来てくれ!頼むから……っ」
涙が喉を詰まらせる。
苦しくて息もできない。
「ルル……会いたくて……死にそうだったんだ……ずっと……」
お前がいなくなってから
花に囲まれて眠る姿を最後に
冷たい部屋から連れていかれた
あの日から
「恨み事でもいい!声が聞きたいんだ!お前が望むなら俺も傍に逝く!
だから、だから!!」
ああ、他に何と言えばいい?
何もない
こんな時に、何ひとつ伝えるべき言葉が浮かばない
「……愛……してる……愛してる……」
君を、ずっと愛してる
「……すまなかった……お前を守ってやれなくて……約束したのに……!」
本当なら今でも隣にいるはずだった
なのに………
「……ひっく……」
どこかで、泣く声が聞こえた。
「……ルル……?」
「………ふ……っ…う…」
「……ルル!!」
ラタルは辺りに呼びかけ、木々の陰を探し回った。
少しずつ近くなる声。
それを目指して、ラタルは走った。
走って、走って、大切な人の懐かしい姿を
―――そして――――
一本の大きな木の陰に
灰色の長い髪がはみ出しているのが見えた。
一歩、一歩
静かに近付いてゆく。
木の後ろに隠れるようにしてしゃがみ込んだその姿は
小さくうずくまって
震えながら、泣き声を殺していた。
「……見つけた」
初めてのかくれんぼ。
そして俺は
やっと君に辿り着いた。
あの日からずっと
探し続けていた君に。
~続く~