霧の向こう
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急に誰の気配もなくなり、シンとする森の中。
「…とにかく、足を進めればいいんだな?」
キョロキョロと辺りを見渡しながら、ラタルは一人進んでゆく。
数歩先も見えないほど霧が濃くなってきた。
繁った木々が放つ精気が肌を撫でる。
緊張感が増し、胸が高鳴る。
ルルがいる
ルルはどこだろう
「ルル!ルル!俺だ!」
声を上げてその名を呼んだ。
「ルル!どこにいる!?ルル!」
返事はない。
姿も見えない。
一体どれくらい行けばいいのだろうか。
もっと深くに進まなければならないのだろうか。
ラタルは足を進める。
何も見えないような真っ白な世界の中で、それでもその姿を探した。
暫くそのまま行くと、霧が少しずつ薄くなってくるのがわかった。
「ルル!どこだ?ルル!ル……」
その時。
霧の向こうに小さく見えたのは
元来た場所に待つ、バスと運転手の姿。
「な……何故……」
ギクッとして立ち止まるラタル。
そんなはず、ない
会えずに戻るという事は
ルルが俺に会いたいと望んでいないという事で
まさか
そんなはず―――!!
ラタルは踵を返し、来た道をもう一度戻った。
霧の深くを目指し、いつの間にか走り出していた。
「ルル!どこだ!?出てこい、ルル!!」
額には冷たい汗が滲んだ。
この森にさえ辿りつけたら
ルルに会えない事なんて、全く考えてもいなかった。
「ルル!ルル……っ」
そして見えたのは、また薄い霧の向こうにバス。
先程と全く同じ景色だった。
「い……やだ……嫌だっ……」
ラタルはまたUターンして霧を目指す。
ルルを探して。
「ルル!どこに隠れてるんだ!ふざけてないで出てこい!
ルル!ルル―――!」
何度も何度もルルを呼ぶ。
いないはず、ない。
会いたくないはずがない。
あのルルが俺に会いたくないはずがないんだ―――!!
そう思って走り続けても、辿り着くのは何度でも同じ場所。
「なんで………」
バスの待つ景色を前に、もう何度行き来しただろう。
戻っても戻っても、追い出すかのように目の前に現れるのは…………
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