虹と海――再会へ
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シークとナーリンと、いろんな話をした。
二人との思い出は、あの日の事以外は無いに等しいのに、まるで昔からの友人であるように一緒にいて心地よかった。
「今日一緒に飲まねーか!?上のレストランでさ!」
「ああ、いいな。だが二人の邪魔をするのも忍びないな」
「何言ってんだい、うちももう結婚5年だよ?マンネリで仕方ないよ」
「いや酷くね?マジで?ナーリン、今のマジで?」
ショックで半泣きのシークを放って、ラタルはとりあえずクロロに話しに部屋へ行く。
が、彼は既にルームサービスを取って一人で飲み始めていた。
「俺は適当にやっているから気にするな」
こちらを見もせず、本に目を落としたまま。
別に豪華客船という訳ではないのに、何をどう言って用意させたのか
部屋には驚くほど豪勢な料理と酒が用意されていた。
この量は少食のクロロだけの分ではない。
しかしグラスはひとつ。
気を遣わせない為なのだと思った。
「…じゃあ、行ってくる」
まぁ独りも好きな人なので、ラタルは遠慮なく出て行った。
シーク達との約束の時間まで、まだ暫くある。
ラタルはまた海を眺めに甲板へ出た。
ーーーー海は好きだ
潮の香りも、波の音も
不思議と見ていて飽きない
本当は心を落ち着けたくて、外へ出た
シークとナーリンの前で、ルルの話を笑って出来る自信がなかった
しんみり話すと、酒の力も加わって泣くかも知れない
かと言って、ルルの話を避けるのは間違ってる
こうして考えると、改めて思う
ルルの思い出は、自分にとって辛いものであると
「すまない……ルル……」
その事実が、また胸を締め付ける。
ルルに申し訳なくて……
「ラタルのせいじゃねぇだろ!」
その声に振り向くと、シークが眉を寄せて仁王立ちしていた。
どうやら無意識に漏れていた今の独り言を聞かれたらしい。
「ラタルが謝る事ねーよ!だってルルちゃんはラタルを好きだから、こうなる事を選んだんじゃねーか!」
必死な顔でそう訴えかけるシーク。
未だに辛そうな声でその名を呼ぶラタルの姿が、あまりに悲しかった。
「シーク……」
「俺はさ、ラタルがどんだけ優しく許してくれたって、やっぱルルちゃんがああなったのは自分のせいだと思ってる。
あの時、俺がラタルの仕事に無理矢理ついて行ったりしたから……
でもラタルは違う!ラタルは全然悪くねーだろ?
自分の仕事を全うしただけじゃねーか!
あの状況でルルちゃんが自分でした選択だったんだ!
ラタルに先立たれるより、守る事を選んだんだ!
ラタルが罪を感じる事はねーよ!!」
他の乗船客が振り返るほどの大きな声で、シークは必死に叫んだ。
息を乱し、拳を握って叫び散らした。
心底自分の為を思ってくれているその声に、ラタルは暫く黙って見つめた後、静かに微笑んだ。
「…ありがとう、シーク。だが違うんだ」
「違わねーよ!」
「そうじゃない。俺がこんなにルルの事で苦しむ理由は……そうじゃないんだ」
ラタルは瞳を伏せ、俯いた。
「え?」
「本当は……自分でもとっくに気付いている。
この5年間、嫌という程に自問自答してきた事だ」
ルルを失ってから
目の前に残ったのは山のように積まれた後悔のみ
ルルにしてやれなかった事
与えられなかった物
その正体――――
「俺はずっと、他に想う人がいたんだ」
ようやく向き合えた自分の心を
飾りなく正直に、話した。
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