翼をくれた人
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ラタルとダリアの間に、 " さよなら " はなかった。
何度目かの別れは、こうして穏やかに過ぎていった。
「待たせてすまなかった」
バスターミナルのベンチに座っていたクロロは
、ラタルの姿を目にするなり読んでいた本を閉じて立ち上がった。
「会えたのか?」
「ああ」
ラタルの穏やかな表情を見て、クロロはふっと微笑んだ。
「……行くか」
「行こう」
前を歩くクロロの黒いコートの背中には、逆さの十字架を剥がした跡があった。
形ない不毛な想いの為だけに、過去を捨てて今を生きるクロロ
愛し愛される事を知り、憎しみを乗り越えて家族を守り通してきた父さん
数多の出会いごと過去を愛し、宝物のように大切にしている母さん
―――人生を揺るがす別れを嘆きながら、それでも尚生きる為に今、旅発つ俺―――
それぞれの人生に岐路がある
困難も、悲しみも、幸せも、愛も
不平等ながら必ず在る
そして平等に、終わりはやって来る
その時に俺はどこにいて、誰といるだろう
例えば、たった独り
極寒の雪山で飢えて寂しく朽ちる事になろうとも
皆を愛して感謝しながら、ルルの待つ世界へ旅立てるなら………
―――そんな人生にしよう
大切にしよう
その為に今は行くんだ
彼の贖罪の旅の隣で
形ない、何かを探しに
~続く~