翼をくれた人
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「今日はこれを渡しに来たんだ」
ラタルは手にしていた小さな紙袋をダリアの前に差し出した。
「ルルからだ。貰ってやってくれ」
そう言われ、不思議に思いながらも受け取って中身を確認する。
入っていたのは青い石。
掌に出すと、名前が彫ってあるのがわかった。
forダリア、と。
「…これ、ルルちゃんから私に?」
「ああ」
「あ…ありがとう…ルルちゃんは?」
現在ラタルの隣にいる彼女が何故自分にこんな事をするのかわからず、複雑ではあるが、礼はちゃんと言わなければとルルの姿を探す。
「ルルはいない」
「来てないの?」
「ああ」
また暗く影を落とす。
世間はとっくに明るいというのに、俯くラタルの顔が見えない。
何か言いたげに一瞬口を開いたが、そのまま無言でまた閉じられた。
「ラタルくん……ルルちゃんは……」
彼のこんな表情は見た事があっただろうか。
まさか、と思った。
まさか彼女はもう……
何故こんな風に感じるのかはわからない。
でも、何だかもう
二度と彼女の笑顔は見れないような気がした。
あの夢は、夢じゃない
ルルちゃんがくれたメッセージ
ラタルの疲れ切った姿。
あの日から隣にいたはずの彼女がいない。
「な…なんで……」
ラタルが顔を上げると、ダリアは真っ青になって肩を震わせていた。
「……なんで……ルルちゃん……」
「俺が………」
俺が
俺の為に
俺の、せいで……!!
「死なせ…たんだ……」
" 死 "
ルルがいなくなって初めて口にした。
「嘘……」
「俺のせいでルルは…っ!……俺が殺した……」
「ラタルくん!!」
本能的に、ダリアはその悲痛な声を遮るように、気付けばラタルの体を力一杯抱きしめていた。
互いの懐かしい匂い。
この温かい体温に再び触れる日が来るなんて、思っていなかった。
「ラタルくん……!ラタルくんは絶対、生きていて!!」
「ダリア……」
「この世界のどこかで、息をしていてくれたらそれでいい!何もいらない!
絶対絶対、貴方は生きていて!!」
叫びながら、より一層、腕の力を込めた。
往来を行き交う人々は、二人を避けて忙しなく過ぎてゆく。
「ダリア……」
泣きながら " 生きて " と
まるで二人分の大きな想い。
ラタルの瞳にも涙が溢れた。
その細い体をギュッと抱きしめ返すと、不意にルルの優しい笑顔が思い浮かんだ―――
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