翼をくれた人
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久しぶりの雨。
変わらぬ日常。
そろそろ店を開ける時間。
開店準備はダリアの担当で、掃除をする為に店のシャッターを開ける。
空を見上げると、小雨の中に少しの陽射しが雲間から漏れている。
そして、そこに立ち尽くす一人の姿。
ダリアは息を詰まらせた。
「……久しぶりだな」
「……ラタル……く……」
ずっとそこにいたのか、髪も肩もしっとり濡れている。
以前よりずっと痩せてしまったような、儚い佇まい。
変わらぬ瞳、微笑み。
言葉が出ないまま、ダリアは手にしていた箒をカシャンと落とした。
「相変わらず真面目に頑張ってるんだな」
「あ……っ……」
何を言ったらいいのか
何も言葉が出ないまま、ただただその姿に見入って立ち尽くす。
夢のような心地の中、沈黙だけが過ぎていった。
「ダリア……」
「……あっ、ごめん、ちょっと……びっくりしちゃって……」
ラタルの声で、止まっていた時間が動き出すように、ダリアも我に返った。
「久しぶり、だね。元気?」
「…ああ。ダリアも変わりないみたいで安心した」
「あ、でも、ちょっと痩せた、かな…?」
「そうかもな…ダリアはまた髪が伸びたな」
「うん、えへ…」
ラタルは一定の距離から踏み込んでくる事はない。
街に差し掛かる裏通り。
往来に人が増えてきた。
「あの……中、入る?まだ開店前だから、古書のとこで座って読んでもいいよ」
まだ実感の湧かないフワフワした気持ちで、ラタルを誘うダリア。
ラタルは静かに首を振った。
「もう行くよ。人を待たせてるんだ」
「え?」
あ……ルルちゃんかな
……でも………
「……何でここに……?」
元気がない。
そういえばラタルくんのこんな顔、見た事あった?
「どうしたの……何かあったの?」
不意に、あの夢を思い出した。
" ラタルが泣いてるの――― "
そう言って悲しく笑った彼女の夢………
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