翼をくれた人
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母さんへ
この部屋に1番に母さんが訪れるだろうと思ったのは、単なる俺の勘だ。
でも当たっていると思う。
母さん達には心配ばかりかけて本当にすまなかった。
もしかしたら母さんの事だから感づいていたかも知れないが、俺は家には帰らない。
このままじゃ俺は一生、前に進めない。
何ひとつ消化できず、心が死んでいくだけで…
本当はそう望んでいる。立ち直りたくない。
悲しみ続けて殻に閉じこもって、ルルの為だけに泣きながら生涯を終えたいと思った。
でも本当はわかっている。ルルはそんな事を望んでいる訳じゃない。
どんな気持ちで俺を生かしてくれたのか知っている。
ただ、その気持ちが今は痛い。
痛くて苦しくて、どうしようもない。
だから、俺は俺である為に行く。
ルルの優しい心や、与えてくれた大きな愛情が俺を苦しめる為にある訳じゃないと心が受け入れるまで。
きっとこの世界中に散らばる人々の心や、壮大な自然の中で、もう一度ルルに会える気がするんだ。
一緒に行こうと言って、手を差し延べてくれた人もいる。
だから、今は何も言わずに行かせて欲しい。
探さないで欲しい。
生んでくれてありがとう。
いつも想ってる。
そして愛してる。
こんなに情けなく、二人が誇れる息子じゃなくてすまない。
体を大切に。
ラタル
『ラ……タル……ふ………っ………』
携帯が潰れそうな程に握り締め、リンは涙の粒を幾つもその無機質なディスプレイに落としては拭った。
どんな気持ちで……
……ラタル……
ラタル………!
『情けなくなんかっ……ないよ……!ずっと……誇りだもん!!』
悲しくて悲しくて、リンはその場に崩れ落ち、携帯を抱き締めて泣き続けた。
『……嫌だ……離れたくないよ!淋しいよ!どこにも行かないで!置いてかないでっ!!ラタルー………!!』
涙は枯れない
それでも、貴方がまた笑えるなら
前を見る事ができるなら
クルタ族の言葉で幸せを意味する
私達は
貴方の幸せを祈りながら、その名前をつけたの。
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