翼をくれた人
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クロロは笑わない。
悲しそうでもないし、悔しそうでもなければ、怒っているようでもない。
ここに来た、たったひとつの目的だけを。
「一緒に行こう。気が済むまで俺を呪いながら、宛てのない旅をしよう」
クロロの言葉に
……何故なんだ
また涙が出るんだ
縋ってもいいのか
父さんの全てを奪ったこの男に
でも限界なんだ
独りになりたいのに、独りになりたくない
贖罪を理由にして、この男に救って欲しくて
「……綺麗な星が見たい」
「ああ…行こう」
最後まで差し延べられたままだったその手に、ゆっくりと手を延ばす。
「どこまでも、世界の果てまで」
初めて、クロロが笑った。
ダリアも
ルルも
目の前から消えてしまった。
俺から去っていった。
もう……疲れた……
少し休ませてくれ
背中に、羽を貰ったんだ
『ラタル!!ラタル!!』
受付で教えてもらった部屋に来てみたが、インターホンを押しても出てこない。
リンは何か胸騒ぎを感じ、何度も何度も声をかけ、ドアを叩いた。
ルルちゃんを追ったり…しないよね、ラタル!
『ラタル、ラタルってばぁっ!いないの!?』
ドアノブを勢い任せに掴んで押すと、ドアが開いた。
『えっ』
カードキーがなきゃ開かないはずなのに……ラタルが中から開けたの?
と思ってそのまま部屋に入るが、そこには誰もいなかった。
全開になった窓から風が入り、カーテンをフワフワと揺らしていた。
『……ら、ラタル……』
一瞬躊躇したが、すぐに窓の下を覗き込む。
そのドキドキを嘲笑うように、平和な景色が当たり前にあった。
『だ…だよね……』
ふぅ、と溜め息をついて部屋の中に向き直る。
ラタルの荷物が見当たらない。
『……え……?』
ただひとつ、テーブルの上にラタルの携帯電話だけが残されていた。
『……!!』
すぐにその意図がわかった。
誰とももう、連絡は取らないつもりなんだ。
『やだよ、ラタル!なんでよ、なんで…!!』
伝わらない歎きを叫び、泣きながら携帯を開くと
そこには送信前のメール画面。
リンに宛てたものだった。
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