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今回の仕事の依頼が来てから、もしもの事を考えて宿泊代は前払いしていた。
「お帰りなさいませ」
何も知らない受付の女性は笑顔でそう言った。
カードキーを貰う時に、片方の部屋だけチェックアウトした。
部屋に戻ると荷物はそのまま置いてあった。
二人分の少ない着替え。
ルルの服や所持品を見て、喪失感は一層膨れ上がる。
つい二日前の事だった。
この部屋でルルにキスされて、抱くまいと葛藤しながらルルに笑われた。
何を見ても叫びながら喜ぶルルに手を焼きながら
それでも奇跡のような時間の中にいた。
ああ……まるで全部夢だったようだ……
「ルル………」
不甲斐ないにも程がある。
涙は出しても出しても枯れる事を知らない。
俺は多分、ルルを想うと一生泣くのだろう
ルルの荷物は捨てる事にした。
ひとつだけ形見として身につける物がないか、ルルのバックの中を探す。
数日分の着替え
レースのハンカチ
財布は持っていない
携帯も
着けていなかったくせに、やたらアクセサリーが多い
……それらに紛れて、見覚えのない小さな紙袋が二つ出てきた。
印字されているのは、ここのホテルの名前。
「………?」
躊躇いもなく封を開ける。
どうやら土産屋で買ったらしい。
おそらくナーリンと二人で待っていた間だ。
何を買ったのだろう
自分に?俺に?母さん達への土産?
随分小さいそれは、逆さにした袋の中からコロンと手の平に転がり出た。
「……石?」
深く美しい、青い石。
同封された説明書には、"幸福を運ぶラピスラズリ"とあった。
よく見ると何か小さく文字が掘ってある。
" forラタル "
「……やっぱりか」
ふっと無意識に笑いが零れる。
出来過ぎだ
最期まで俺の幸せばかりを願う君
" ありがとう、ラタル……私は生まれ変わったら絶対にまたラタルを探すわ
ラタルが誰を好きになっても、私は何度でもラタルを好きになる……"
――まるで運命を知っていたようじゃないか
「因果だな……」
呪うように呟いて、もう一つの袋を開ける。
同じ大きさ、重さ、感触。中身は同じ石に違いない。
掘られた名前はきっと……
「おそろい…か」
二つとも自分が大事に持っておこう
そう思って袋をまた逆さにした。
転がり出る青い石。
綺麗な綺麗な、まるで地球のような石。
くるりと指で転がし、名前を探す。
そしてラタルはハッと瞳を開いた。
綺麗な綺麗な
まるで地球のような
「な……んで………」
掘られた名前は
" forダリア "
~続く~