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姉王女達が部屋から出ていく音を背中に聞きながら、ラタルはただルルの亡骸を見つめていた。
伝えられなかった言葉を心で何度も何度も繰り返し、懺悔し続けた。
二人の少ない思い出が、ぐるぐると頭を巡っては胸を刺す。
ルルの笑顔が刃に代わり、無数の傷を付けていく。
未来に描いていた希望が、残らず絶たれた気がした。
コンコン
ノックの音に声を返さずにいると、遠慮がちに入って来たのはリンだった。
『ラタル……もう出発だって』
「……………」
リンはルルに祈りを捧げに棺の傍へ寄る。
そして初めて見るルルの亡骸にまた涙した。
『っ…っ…ひっく……』
震える唇を噛み締め、崩れそうな膝を必死で支え、リンは手を組んで祈りを捧げた。
ラタルはただ、ルルを見つめていた。
小さなノックの後、今度はクラピカが入って来た。
叫びたい声を必死に抑えて泣くリンの肩を抱き、クラピカも瞳を閉じて祈った。
「姫……どうか安らかに」
そう口に出して伝えた。
ラタルを守ってくれてありがとう、とは言えなかった。
最後に送る言葉はとても短い。
『ラタル……ラタルも祈ってあげて……
ルルちゃんが安心して眠れるように祈ってあげよう』
酷な事を言っているのは百も承知。
しかし、このまま何もせず放心したまま最後を迎えさせる訳にはいかない。
ラタルの反応はない。
『……ラタル……ラタル、ルルちゃんの為にできる最後の事なんだよ。
ありがとうって……さよならって、言ってあげてよ…っ』
リンが半ば強引にラタルの肩を揺する。
だが、ラタルはその母の手を力一杯振りほどいた。
「放してくれ!!」
「ラタル!!」
暴れ出しかねない勢いに、クラピカが止めに入る。
『ラタ……』
「祈る事なんか……ひとつもない!!」
涙が雨のように地面に降り注ぐ。
こんな時でさえ、瞳は美しく緋色をたたえている。
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