冷たい指
夢小説設定
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水の吹き出す音
炎が沈んでいく音
サイレンの音
瓦礫をよける音
人の声
何だかとてもうるさくて、煩わしくて
気分は最悪だ。
まだ半ば夢に堕ちていきそうな脳を、手繰り寄せた記憶の糸が瞬時に状況を思い出させる。
……そうだ
俺は、死んだはずじゃ…!!
「はっ…!」
思わず跳び起きて、まず目に映ったのは崩壊した屋敷の悲惨な光景。
真上の天井には大穴があいていて、ラタルは瓦礫の山の上に何故かいた。
下ではなく、上に。
「……………」
これは一体……?
訳がわからず、ラタルはもう一度記憶を手繰る。
シークを押して逃がし、その後爆発して
屋敷が崩れて床も抜けて……
覚えているのは、そこまでだ。
とりあえず全身を見てみるが、怪我ひとつない。
そんな馬鹿な。
試しに手足を動かしてみる。
全く痛くない。
夢か?という疑いは余り持たない。
まだ鎮火途中の黒煙の匂いが、間違っても天国ではない事を証明している。
「俺は……一体……」
額に手をやろうとして、気付いた。
左手の小指にルルがつけた念糸が、切れている。
「ルル…?」
何の念を込めたのか、そういえば聞いていない。
むしろ今までこの念糸の事を深く考えた事などなかった。
理由はルルが念を覚えてまだ間もないから。
おまじない程度の物だろうと思っていた。
しかし、今この念糸は切れている。
つまり目的が果たされた
発動した証拠。
傷ひとつない身体。
そんなはずはない
あの状況で
"私は大丈夫"
"忘れないで―――"
「…!!そういえば……」
ルルに会った
ルルはここに来ていた
泣きながら「大丈夫」と何度も繰り返して
「……ルル……?」
不意に大きな不安に駆られ、辺りを見回す。
「ルル!!どこだ!?」
名前を呼びながら振り返る。
ふと指に何かが絡んだ。
らしくもなく、ドキッとして背中が痺れる。
見たくない
嫌な予感が止まらない
まさか
まさか…………
ラタルの頬に、冷たい汗が滴る。
僅かずつ、視線を下に移していく。
そして………
「……あ……あ……っ」
指に絡んだ物の正体が、見えた。
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