退路なし
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最上階の特等の部屋で、数々の大きな窓から射す月の光が二人の姿を柔らかく照らす。
とても静かだ。
「ラタルは何が好き?」
「何って……どんな事で?」
「何でもいいの。ラタルが好きな物、好きな事……嫌いな物も知りたい。どんな家族がいて、どんな風に今まで生きて来たのかとか」
「そうだな……」
ルルは本当に嬉しいようで、夜にも関わらずイキイキとしている。
「私の家族は父と母だけだ。二人共、天涯孤独だったから他に親戚はいない。
でも素晴らしい友人達なら沢山いる。同じハンターの父や仲間達を見て、私もハンターになりたいと思った。
好きな事は本を読む事、体を動かす事、難しい問題を考える事……
食べ物なら体にいい物だな。嫌いな事は挙げられないほど沢山ある。神経質だからな」
誠実に正直に、ラタルは自身の事を話した。
「同じ女として生まれたのに、ラタルは本当に逞しいのね」
クスクスと控え目な声で笑うルル。
「ルルは?」
きっと、こんな何気ない会話を楽しみにしていたのだろうと思い、質問を返してみる。
「私はね、海が好き!どんなに遠くの国とも、海で繋がっているもの。舟で遠く遠くまで行ってみたい。
これから私はこの国とお別れだけど、同じ一つの海が私達を繋いでくれる」
遠い目をして、おそらく生涯訪れる事のない遠い国々へ想いを馳せる。
その切なげな横顔を、ラタルは黙って見つめた。
「ラタルの国にも行ってみたいな。ラタルを育んだ景色はどんな色かしら」
パッと笑顔を作るルル。
そんな未来はない事を知っているのだ。
「……いつか行こう。私が連れて行ってやる」
「………本当?」
「ああ。私の国を、見せてやる」
「ラタル……」
明るくて元気な彼女の瞳が、少し滲んだ。
たった今、俺はルルに大きな嘘を付いている
騙している
だけどこの約束はきっと守ろう
果たしてやろうと、強く思った
「ありがとう、ラタル」
長い長い話をした後、ルルは先に眠った。
ラタルは胸に詰め込まれたパットや女用の下着が窮屈で全く眠れなかった。
しかし、不思議と心は穏やかだった。
~続く~