星と街明かりの境界で
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写真の中のリンを見た瞬間、見開かれた瞳。
それは静かに、徐々に、落ち着きを取り戻し、後はただ沈黙だけが待っていた。
長い沈黙だった。
ラタルは黙って写真に見入るクロロに一声もかけず景色を見ていた。
クロロの頬を伝う涙に気付いていた。
言葉にできない想いを抱える苦しみに、何故か共感した。
「……変わらないな……変わらない……」
隠そうともせず、涙声が背中に聞こえた。
クロロから少し離れ、窓際で手摺りに身を預け、夜景を眺めるラタル。
肩越しに小さく振り向くと、加工され狭い縁に納まった小さな家族写真の中のリンを、何度も何度も指でなぞるクロロがいた。
「笑っている…よかったな、リン…」
誰でもなく、その写真の中に話しかける。
プライドなど
見栄など
体裁など
もはや彼にはないのだろう。
ラタルの前で、幾つも幾つも涙の粒を落とした。
「15年振りに見た。なんだか…たまらないな。ありがとう」
「いや…返す必要はないから持っていればいい」
「……いいのか?」
写真を見る前の戸惑った表情とは打って変わり、クロロからは少しトーンの上がった声。
「どうぞ。だが、俺と父さんも一緒に写ってる。縁起悪いから切り捨てたりはしないで欲しい」
「ああ、問題ない。ありがとう」
何度見たところで何かが変わるわけではないのに、クロロは何度も何度も、いつまでもいつまでも写真を見つめていた。
ラタルはただ黙って、同じ空気の中にいてやるのだった。
気がつけば外は明るくなり始め、薄紫の中で星や月が光を失っていた。
「あーあ。完徹で遺跡巡りか」
シークに7時と言われ、10時にと変更させたが、今となっては7時の方がよかったかも知れない。
今から寝てはとても10時にだって起きれない。
「なんだ、遺跡を巡るのか?案内してやろうか」
「え?だが、仕事でここに来ているんじゃ…」
「ああ、この近くの都市遺跡の調査にな。
まだ手つかずのエリアがあるから来週から発掘に入る」
都市遺跡。
おそらくシークの言っていた場所だ。
「本当か?それなら連れ達も一緒に案内してくれないか?詳しい人間がいると助かるのだが」
「お安いご用だが……」
クロロが何かを言いかけたその瞬間、ラタルの携帯が鳴った。
相手は携帯を持たないルルではない。
両親の着信音でもない。
その相手は………
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