星と街明かりの境界で
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その展望室には時計がなかった。
だからどれだけの時間が過ぎたのかはわからないが、絶え間なく二人は色々な話をした。
お互いの現在の事、過去の事、世間話や遺跡について……
興味を持つ物に共通点が多く、また議論するだけの知識を二人とも持ち合わせていた為、話していてとても心地が良かった。
リンの話になるとクロロは眩しそうに目を細めた。
思い出したり想像したり、そんな心境が手に取るようにわかった。
「父さんが怪我でもしたら大変なんだ。
一度仕事で負傷して死にかけた事があったが、母さんまでストレスで血を吐いてびっくりした。
病院の廊下で手術が終わるまでガタガタ震えて…もしこのまま何かあったら母さんはどうなるのかって、そっちの方が心配だったな」
今となっては笑い話。
そんなエピソードが多くて、クロロは「あいつらしい」と繰り返した。
「シャルとかいう男は今何をしてる?彼には昔うんと困らされたと聞いてるが」
「ああ、あいつはまだ蜘蛛にいる。未だに戻って来いと言われるがな」
「戻らないのか?」
「リンが喜ばないからな」
「……淋しくはないか?」
「淋しい時は思いだすんだ。あいつが最初に言った言葉を」
" 私が守ってあげるから大丈夫!!"
「…って。旅団の頭だとも知らずに、おかしいだろ?
だが、この言葉を思いだすと不思議と気持ちが落ち着くんだ。本当に…俺は今でもあいつに守られているんだと、本気で思ってる」
離れて15年
絶えず時間は流れる
しかし思い出は色褪せるどころか輝きを増すばかり
「……今でも好きなのか?」
「そうだな。ずっと…多分、一生」
晴れやかな顔で、クロロは言った。
「会いたく、ならないか?」
「さぁ……会いたいんだろうけどな。なんせ顔もろくに思いだせない。人間の脳とは悲しいものだ」
自嘲気味に笑うクロロ。
ラタルはおもむろにホテル内用の部屋着の袖から財布を取り出した。
「母さんに無理矢理持たされた写真があるが、見るか?」
ラタルが小さくラミネートされた写真をクロロの前に差し出す。
一瞬、ギクッとした表情で固まるクロロ。
「……見ないのか?」
「いや……見せてくれ」
躊躇いがちにソロソロと指を延ばし、クロロは写真を受け取った。
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