昂まり、静まり
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「ねぇラタル、ちょっと指貸して!」
シーク達の部屋で飲んでいたラタルとシーク。
温泉から帰ってくるなりルルは嬉しそうにラタルの左手を取り、小指に何かを結びつけた。
「なんだ?これは」
「念の紙紐!おまじないみたいなものだから気にしないで!」
「紙?」
「大丈夫、条件を満たさないと外れないから!」
「条件?」
不思議そうに、自分の指にはめられた紙の紐を眺めるラタル。
「あ~ルルちゃん、俺らの真似!?かぁわいいな~~~!!」
「ふふ、何の念を込めたかは教えてくれないのよ、ルルちゃんてばさ」
走って来たルルに遅れて部屋に入って来たナーリンがニヤニヤしながら言った。
「内緒…なのか?」
「ええ、内緒!私とラタルの絆みたいなものよ!」
いつも以上に幸せそうな笑顔。
ラタルも誘われて笑顔になる。
「ありがとう。大切にするよ」
「ええ!」
二人の初々しい雰囲気に当てられて、シークとナーリンはもどかしそうな様子。
それから少し四人で飲んだ後、明日の予定の為にと早めにお開きする事になった。
シーク達の部屋を出て自分達の部屋に戻る。
既に夜中。
すっかり静まったホテルの廊下の向かいから、珍しく人が歩いて来た。
存在感のあるたたずまい。
ラタルの胸が不思議とざわめいた。
一歩……一歩……
擦れ違うまでの距離が長く短く
緊張に包まれる。
ルルは何も感じていないようで、呑気にあくびをしている。
何だろう、この感覚
そう思いながら、その人物とラタルは、事なく擦れ違った。
あっけなく。
別に攻撃でもされるかと懸念した訳じゃない。
ただ、言葉にできない感覚に
ゆっくり、ラタルは振り返った。
黒い髪、黒い瞳
額には
小さな十字
ラタルより先に振り返り、真っ直ぐ体ごと、こちらを見ていた。
ああ――――
話にはよく聞いていたが
こんなに一目見ただけで
わかるとは思わなかった
そんな風に、予想よりずっと冷静な思考が巡り
ラタルは落ち着いた気持ちでこの対面を実感していた。
「よく……似てるな……」
先に口を開いたのは相手だった。
「……どっちに?」
そう問うと、彼は静かに頬を緩ませた。
「一見、クラピカ。だが……よく見るとリンにも」
「そうか」
想像と随分違う優男。
それなのに、何故か会った事があるような
懐かしい気持ちにさえなる。
二人はどちらからともなく、ゆっくり歩み寄った。
「こんな場所で会えるとは思わなかったよ……
クロロ……ルシルフル―――」
~続く~