師匠目線の過去話
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俺は盗賊仲間の前から姿を消し、ネテロじいにも仕事は暫く休むと伝えた。
ジュエリストの赤ん坊の事は、噂を聞いて一人で行ったら神殿で見つけたと話した。
嘘をつく事に罪悪感を持たない俺は、完璧に、まるで本当にそうだったように、何食わぬ顔で事実ではない事を事細かに説明してやった。
住んでた町を離れ、誰もいないような山奥に小屋を造り、そこで赤ん坊と二人で暮らす事にした。
たった一人で、足りないものを補う為に毎日のように日用大工に明け暮れていると、たまにアホらしく思える時もあったが、それでも俺をそこまでかきたてるのは、その小さなジュエリストの赤ん坊…宝石だらけの天使だった。
こんな風に暮らす事になるなんて、日々に満足していた俺には想像もできなかった。
だが、今まで見たどんな女よりも宝よりも景色よりも、
この小さな笑顔は美しかった。
俺はその赤ん坊に、リンという名前をつけた。
実は孤児院出てから最初に世話になった女の名前だった。
内緒だけど。
それからはリンと暮らす日々が、俺の生き甲斐になった。
人生そのものになった。
信じられないだろ?
悪さばっかして自分勝手に生きてきた俺が子供を育てるなんて……
だが、どんどん成長して何の疑いもなく俺を信じて甘えてくるリンが本当に可愛かったんだ。
その笑顔が俺のエネルギーになり、体を動かし、道を拓いていった。
『師匠!だっこ!』
「ばか、お前いくつだっつの!だっこは五歳で卒業だろ!?」
『15になったら卒業するから!』
俺はリンに自分の事を師匠と呼ばせ、武道や体術、闘いの術を山ほど教え込んだ。
…親父と呼ばれるのも夢ではあったが、事実俺は親ではないし、何よりこいつの本当の親に悪い気がしてやめた。
"師匠"
そう呼ばれる度に俺はどんどん師匠になっていった。
毎日隣りで無邪気にスヤスヤ眠るリン。
その寝顔を穏やかな気持ちで見つめながら、俺はある決心をした。
"念"を教えよう───
こいつが一人でも生き抜けるように、強い力をつけてやろう。
今思えば、それは何か虫の知らせだったのかも知れない。
そして俺は、リンが13の時から念の修行を始めた。
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