亀裂?秘密?愛の形(キリリク)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
人体収拾を好む狂った富豪どもが飾っているような大きめのケースとは違い、コンタクトケースを少し大きくしたような、透明のガラスの中で爛々と輝く緋色。
その横に小さく折り畳まれた紙切れを見つけ、クラピカはそれを取り出して開いた。
―――手紙だった。
予想していた通りの相手からの、短いメッセージ。
リン宛てなのだろうか
それにしては寂しいものだ
" 安らかに………
そう祈りを込めて
そして家族の幸せを "
………これが奴の字か
嫌味なくらい、そして意外にも綺麗なものだ
『クラピカ……』
リンの顔を見ようとはしないクラピカ。
「奴に我々の幸せなど、願われても迷惑なだけだ」
クラピカは手紙だけをリンに渡し、大事そうに緋の眼を抱いて家へ向かった。
「父さん!」
「墓へ行く。支度を」
「えっ、今からか!?
墓って…ルクソ地方に!?」
クルタ族が生きた場所。
皆が眠る故郷に、最後の瞳を還しに行く。
リンは一言しかない手紙を読み、また涙を流している。
「……クロロ……ルシルフル……」
不意に頭を掠めた名前を、ラタルは無意識に声に出していた。
『ごめんね、ラタル……私……ごめん……』
リンがヒソカに会っていた理由。
それはクロロの言葉を聞く為、彼の"今"を知る為だった。
細い細い線で今でも繋がれていたクロロとリン。
クラピカは不思議と心静かだった。
途中まで帰路を進んでいた足を引き返し、号泣するリンの手を引いて歩いた。
『クラピカ……えう……クラピカ、ごめんなさ……』
「許さない。絶対に」
そう言った彼の手は殊更温かく、優しかった。
そんな二人の後ろを、少し離れてラタルがゆっくりついてゆく。
「クロロ……か。
いずれ会う事もあるか」
父さんの一族を滅ぼした人。
母さんをとても大切にしてくれた人。
そして
今はきっとどこかで
二人の幸せを祈って生きている人――――――
それからひと月が過ぎた。
緋の眼を全て集め、目標としていた事を成し終えたクラピカは、何だか肩の荷が下りたようにも見えた。
最後の瞳を届けた日、クラピカはいつもより長く皆の墓を見つめていた。
里にいくつも立てられた木の十字。
ラタルとリンはただ黙ってクラピカの傍にいた。
「やぁ☆最近はどうだい?」
『あ、また来た』
冬にしては暖かい、天気の良い朝だった。
リンが洗濯物を干していると、いつものように気配なくヒソカが現れた。
「もっと嬉しそうに言ってくれよ◆」
『たはっ、無理無理!』
「連れないなぁ★」
相変わらずピエロ。
一体、歳いくつだろ。
『あ、緋の眼を還して来たよ。
無事に全部みんなの手に戻ったから』
「それはよかったね☆
クロロにも伝えておくよ◆」
話しながらも手を止めず、作業を続けるリン。
その傍らにヒソカが腰を下ろしてその姿を眺める。
『クロロは元気?確か働いてるんだっけ?』
「ああ◇遺跡発掘の仕事★
楽しいって言ってたよ◇」
『それはよかった……』
「人間が生きようとする意味が何となくわかったってさ☆
不思議な事言うよね◆」
『生きようとする…意味?』
……人間が生きる程に増える荷物が
こんなに重いなんて知らなかった
人から貰う気持ちも
それに報いようとする事も
案外悪くない………
『クロロがそんな事を…』
「らしくないよね◆」
リンが嬉しそうに、切なそうに目を細める。
ヒソカはつまらなそうに溜め息をついた。
「早く元の彼に戻ってタイマンして欲しいものだよ◇」
そう言ってのんびり腰を上げ、リンの髪にキスをして即座に間合いから離れた。
『このやろっっ!!』
瞬間的に繰り出されたリンの肘鉄よりも早く。
そしてまたしても去り際に何かを投げてよこした。
そういえばこないだは緋の目が入った箱を投げたのか。
なんて奴っ!
「クロロから☆」
それは花の香りがする真っ白な封筒だった。
・