師匠目線の過去話
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建物は全て焼かれ、そこの住人も皆死んで火の海の中だ。
「うああ!勿体ねえ!!」
仲間が火傷覚悟で火の海から死体を引きずり出そうとするが、無駄だった。
既に、見るも無惨に変わり果てた姿になっていた。
「危険を冒してわざわざ来たのに、無駄足だったなー」
口々にそんな落胆の声が上がる中、島を探索していた俺は、ふとひとつだけ焼かれていない、小さいが白くて綺麗に装飾された建物を見つけた。
中に入ると信仰していた神様らしき像が置いてある。
神殿みたいだった。
俺は物珍しくなって、すんげー隅々まであさくってみた。
そしたら一個、なんかよくわかんねーボタンみたいなのがあったから何も考えず押してみた。
するとなんと!!
壁がいきなりでけぇ音で開いて、地下に繋がる階段が出てきた!
んも~~、マジで興奮して、逸る気持ちを抑えながら階段を駆け下りた。
短い階段を下まで行くと、小さく明かりが見えた。
その地下の狭い部屋の中には、またまた神様が沢山いた。
若干キモくなったが、興味が勝って奥まで入ったんだ。
──―したら、そこにいたのは───
まだ生まれて間もない赤ん坊だった。
多分、この島の中で作られた珍しい色合いの布でくるまれ、何も知らずにスヤスヤと眠っている。
少し布を開いて見ると、なんと体中に本物の美しい宝石たちが散りばめられている。
俺は初めて見るその信じられない光景に釘付けになった。
こんな生き物もいるんだと……
奇跡は存在すると……
この俺が本気で思った。
体に付いた宝石を触ったり軽く引っ張ったりしているうちに、その赤ん坊が目を開けた。
「げげ…」
俺は孤児院以来、赤ん坊には縁がなかった。
しかも元々ガキは嫌いだ。
大泣きしたらウザイから殺そうと思った。
しかし───
まだ目も見えないであろうその赤ん坊は、俺にハッキリと焦点を合わせ、瞬間、小さな顔に満面の笑顔を浮かべた。
その時、俺の中に何か正体不明の温かい感情が生まれた。
たった今、出会ったばかりのこの哀れな赤ん坊が、なぜだかすっげー愛しくなった。
今でもその理由はわからない。
とにかく、言葉にはできない。
小さなこの命が、あらゆる疑問を一気に俺に投げかけてきた。
そして同時に、俺の今までを全て綺麗に許してくれた。
洗い流してくれた。
…そんな気がした。
"奇跡"
それだ。まさに。
今まで色んな女と出会って付き合ってきたが、俺にとっては人生一度の運命の出会いはこれだった。
こいつの笑顔……
なんて可愛いのか!
気付けば俺はその子を抱いて、神殿を出ていた。
生き残りがいたと仲間たちが喜んで側に寄り、さっそくこいつを売る相談を始めた。
その時は何も言わずに黙っていたが、俺はもう既に決めていた。
そう……この子は俺が育てると!
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