ラタルの恋物語
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「諦めなきゃな……」
「何をだ?」
ポツリ呟いた独り言に返って来た返事に、慌てて声がした方を振り向くと、カウンターの上に頬杖をつくラタルの姿。
「なっ!盗み聞き!?」
「人聞きの悪い。
それより何を諦める気だ?」
「何でもないよ、それより何も買わないならもう行きなさい!
私、仕事中なんだから!」
あっ……なんて可愛げのない事を……
即座に後悔するも、ラタルはそんな言葉は全く気にしていない様子。
「買いたい物が見当たらない。注文したいのだが…」
片手は頬杖をついたままダリアの後ろにある注文書を指差した。
ダリアは何となく溜め息を漏らし、浮かない顔で注文書を手にした。
「ご注文は!」
目も合わさずに若干荒々しく尋ねる。
返答の声は返って来なかった。
代わりに、俯いた額に何かが触れ、ダリアが顔を上げるとそれはラタルの人差し指だった。
まっすぐ腕を伸ばし、ダリアの額を差して真剣な顔で見つめる瞳。
「……何……」
「注文。俺が欲しいのは……」
途中で止まったラタルの言葉にダリアの心臓がバクッと跳ねる。
顔が強張る。
え、嘘……
何?まさかだよね?
ラタルくんがまさか……
私なんかを……
ダリアがそのまま固まっていると、ラタルはふっと微笑んで指を離した。
「すまないな、仕事中に」
「え…」
訳がわからずに呆けた顔をするダリア。
「本の注文は今度でいい。また来る」
そう言ってラタルはダリアに背を向け、小さなその本屋の出口に向かった。
「ちょっ……」
咄嗟に声をかけて引き止めると、ラタルはゆっくり振り返って首を傾けた。
「続き……は?
欲しいのは何?」
人を指差しといて言わずに帰るなんて、なしだよ!
言ってよ……
私の思い違いなの?
「期待してしまうじゃないの……」
少しでも言葉にすると思わず泣きそうになってしまう。
彼の顔を見るのが怖くて俯いてしまう。
返事が来るまでのこの沈黙は、なんて痛い……
「期待、してくれて構わない」
優しく穏やかな声で彼が言う。
ダリアはバッと顔を上げ、ラタルと視線を合わせた。
ラタルは真剣な表情。
「……だから諦めるなんて言うな。
これでもいつも緊張してるんだぞ。 君に会いたくてここに通ってるんだ。
てっきり気づいてるものだとばかり思っていたが……」
緊張と言う割には随分クールな口調でさらりと言ってくれる。
まさかの告白にダリアは思わず自分の頬をツネってみた。
痛い。
夢じゃない。
「ぷっ。何をしてるんだ」
可愛い笑顔を惜しみなくさらけ出して笑いをこぼすラタル。
ダリアはまだ信じられないといった面持ちで涙を浮かべている。
「声、かけてくれて嬉しかった。
ずっとタイミングを逃してて困ってたんだ。
一目惚れだったからな」
ラタルはダリアの腕を掴んで引き寄せ、見上げる状態でキスをした。
店内には客はいない。
有線すら流れていない静かな店内で二人っきり。
予告もなく突然に唇を奪われ、ダリアは石化している。
ラタルは微かに頬を染めて笑った。
「早くダリアの背を越して上からキスをする。
俺の目標だ」
ラタルとダリア。
二人の小さな恋が、ここから始まった。
そしてその瞬間を店の外から覗いている人間が一人。
『買い物帰りに偶然見ちゃっただけだよ~。
ごめんね、ラタル。ふふふっ!』
ラタルの母親、リンだった。
偶然とか言いながら姑息にも絶を使ってます。
『ふ~ん、あの娘が将来の娘候補か!
頑張ってね、二人とも(笑)』
微笑ましく可愛い二人を密かに応援しながら、スキップで帰るリンだった。
end.