誰にもあげない(キリリク)
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「なら何も悩む必要ないじゃない。それに私はちっとも気を悪くなんてしてないわよ。
私なんかにヤキモチ妬いてくれるなんて嬉しいくらい。リンは本当にいい子ね」
センリツはいつも通りの穏やかな笑顔と声でリンに言った。
リンは恥ずかしそうに手で顔を扇いでいる。
『でもね、そのくらい想ってるのにどうして自分も求めちゃうのかな?クラピカの為に命は懸けられても、クラピカを誰かにあげるのは死ぬ程嫌だよ。
それって矛盾してない?』
「全然。当たり前だと思う。だいたいリンの悩みは一人相撲だわ。クラピカはあんなにも貴方だけを愛してるのに」
『うっ…愛されてないとは思わないよ?でも…私の方が絶対的に沢山好きだもん…』
あれ?私はそれが嫌なのかな?
逆よりはその方がいいはず
今のままで、クラピカよりも沢山の愛をあげて…
───そうだ
愛を沢山あげたくてあげたくて、でも求めてしまう自分が嫌なんだ
与えたい、伝えたい
言葉に出してみて改めて思い知る自分の気持ち
独占したいけど、その前に私はクラピカを大切にしたい
それを自分のワガママな心に阻まれて苛々していた
「クラピカは貴方に負けないくらい想ってくれてるわよ。貴方が見た " 楽しそうな私達 " はいつも貴方の話ばかりしていたわ。
貴方がいなくなった時、貴方が傷を負って目覚めなかった時…彼は本当に苦しそうだった。それはもう見ていられないくらい……
貴方がいなければ生きていけない。彼は私にハッキリそう言ったわ」
『え…………?』
リンと出会ってから、今まで知らなかった自分を…
知りたくなかった自分を知る事になった
強くなる為に
一人で生き抜く力を手に入れる為にハンターになった
それなのにリンを知ってから私は自分の中の弱さや情けなさを思い知るばかりだ
傍にいなければ何もできない
何も手につかない
もしもリンを失ったら、私は明日からきっと手足すら動かす事はできないだろう
だがリンが傍にいてくれるなら私は誰よりも強くなれる
あの笑顔があるなら、どんな事があっても諦めずに生きていける
私の中の悲しみも憎しみも溶かしていく
私はリンのお陰で今こうしていられるのだと思う
リンに…
あの娘に出会う為に生まれて来たのだと、今なら迷いなく言える───
「……思わずこっちが赤面するようなそんな台詞を彼が言っていたのよ。真顔でね。
わかる?貴方がどれだけ彼に深く愛されているかって事」
センリツは溜め息混じりで呆れたように言った。
リンはセンリツから聞いたクラピカの台詞を何度も頭の中で繰り返した。
クラピカが私の事をそんな風に………
嬉しくて胸が痺れる
クラピカ………
私もそう思ってる
貴方に会う為に全ては廻って今ここにいると
生まれてきたのだと
『私……遅くないかな?クラピカは今でもそう思ってくれてるかな?』
涙声でリンがセンリツに尋ねると、センリツは窓の外を指差して言った。
「愚問だわ」
リンが外に目を向けると、クラピカが息を切らせて道路の向こうに立っていた。
『クラピカ!!』
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