誰にもあげない(キリリク)
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冷静になれない
このところずっとクラピカは忙しくて家にもろくに帰って来れなくて……
それなのにセンリツと朝食食べる時間はあって…
私が側にいない間もセンリツは隣りでクラピカと同じ時間を過ごしてるんだ
あんな風に笑いあって…
一体、何を話してるの?
『私もクラピカの傍にいたい!センリツはずるいよ!!』
リンは思いきり叫んだ。
これじゃいけないと思ってはいても一旦生まれた気持ちが抑えられない。
クラピカはリンの横を通り過ぎ、ベットに腰かけて顔を伏せた。
「…寝ていないんだ…話は起きてからにしてくれないか。
……酷く疲れた……」
そう呟くように言って、ポスンとベットに倒れこんだ。
リンは茫然と立ち尽くしてクラピカを見下ろした。
嫌だ……クラピカに嫌われる
こんなんじゃクラピカ、私をイヤになってしまう!!
だけど……謝りたくないのよ──!
『……クラピカ、私といると疲れるんでしょ?
センリツみたく言わなくても心をわかってくれる人がいいんでしょ?』
言いながら既に自己嫌悪が胸に広がる。
だけど口が止まらない。
勝手に次々と情けなくなるような言葉ばかりが出てくる。
「……お前らしくもない。少し頭を冷やせ。」
クラピカが顔を伏せたまま、リンを見る事もなく言った。
その時、リンの頭の中で何かが切れた。
私とはちゃんと向き合ってもくれないの?
センリツとはあんなに楽しそうに話してたのに…
センリツとは………
『…もう…いいもん………クラピカのばかっ!!』
リンは大きな音を立てて玄関のドアを開けた。
驚いて飛び起きたクラピカが慌ててリンの後を追う。
「こら、待て!リン!」
家を飛び出して宛てもなく走った。
とにかく全速力でクラピカから離れた。
誰が悪いのかなんて頭の片隅ではわかっていたが、納得できないのも事実。
クラピカを大切にしたいのに、たった今最優先しているのは自分の気持ち。
心が2つに引き裂かれる。
現実と理想の違いに戸惑う。
無我夢中で走りながら、最初に頭に浮かんだのはキルアの顔。
キルアのところに行って思いきり泣きたい。
何もかもぶちまけて、楽になりたい。
でもキルアの気持ちを知ってしまった今となってはそれもできない。
ゴンだっていつもキルアと一緒だし。
レオリオは遥か遠い国。
結局、私には他に行く場所なんて────
「あら、リン?どこに行くの?」
猛スピードで走りながら自分を呼ぶ声を辛うじて捉えて、その主を100m位過ぎてから立ち止まった。
そして小走りで戻ってみると………
「久しぶりね。どうしたの?珍しく心音が悲しみに満ちてるわよ?」
『せ…んりつ………』
にっこりと優しい微笑みを浮かべ、何もかも見透かしたような澄んだ瞳でセンリツが立っていた。
『あ………ごめんなさい……センリツ、ごめんなさい……!』
何も知らないセンリツに、リンはクラピカに対して言った自分の言葉を思いだし、思わず謝っていた。
リンの心音はどうしようもない自己嫌悪の念と、寂しさ、悔しさ、矛盾、あらゆる思いが交錯してメチャメチャだった。
だけどそれはセンリツが耳を塞ぎたくなるような音ではなくて、芯に一本まっすぐ立っているのは、綺麗な愛の主旋律だった。
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