ルル
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こうして、私は一ヶ月後に遠くへ養女に行く事になった。
家族がいる場所を離れるのは心が裂けそうなほど寂しかったけど、マサラ叔母様には何度か会った事もあるし、優しい人柄にも憧れていた。
どんな場所だって、楽しい事もあれば辛い事もある。
合う合わないもあるけれど、どんな場所にもどんな人達の中にも、私の心は形を変えて溶け込んでいける。
自分を信じると決めたから。
ただ、ひとつだけ心残りがあるとするなら
女性として、全身全霊をかけて誰かを愛してみたかった。
今となっては無理な事だけど、あの日の幸せそうな花嫁さんがね
何故だかあの時
ブーケと一緒に、幸せになれる魔法みたいなものも、この手に渡してくれた気がしたの。
不思議とね、あんな幸せな瞬間が私にもやってくるんじゃないかって、未来を信じられるような気がしたの。
……一瞬だけ、だけどね。
「あーあ…友達も欲しかったわ」
「あら、ルルなら今すぐにでもできるわよ」
「侍女じゃなくて、交流のある王家の方々でもなくて、何のしがらみもない友達よ!」
「難しいわね…」
「でしょう!?」
「うーん…あら、それなら今度のサラーマ島までの護衛の者を、同年の女の子にお願いすればいいんじゃないかしら」
「同年の?って、護衛にならないんじゃないかしら」
「お父様からネテロさんに問い合わせて頂いたら?きっといるわよ!
輿の中まで供にしてもらえる、1番近くで貴女を守ってくれるような女の子」
「お姉様…それいいわね!!」
こんな話をしながらも、この時は本当に何も多くは望んでいなかった。
ただ、すぐ目の前に迫っていた運命の出会いは
聖人であろうと誓った私の全てを否定し、なかった事にして
胸を掻きむしり、心の奥の、今まで一度も動く事のなかったような場所まで、余すところなく突き動かして、命を吹き込んだ。
最後の最後に、あんな出会いがあるだなんて
神様の切り札は計り知れないわね
泣かないで
大丈夫
意味のない事はない
未来が約束されていなくても
自分を信じて
沢山の事を諦める日があっても
その手に残った僅かな光を大切にして
見失わないで
―――誰か、あの日の私に伝えて欲しい。
奇跡が待っている、と……
END.
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