ルル
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顔を膝に突っ伏して、泣き尽くして、泣き疲れて、二人で暫く放心していたけど。
ふと、教会から誰かやってくるのが見えて我に返った。
小さな花束を手に、白いドレスの裾を持ち上げながら、急いだ様子でこちらに向かってくるのは、なんと結婚式の主役である花嫁だった。
「こんにちは!」
「……………こ…こんにちは…」
騒がれないよう身なりを地味にしてきたので、王族の者である事は気づかれていないようだった。
普通に「こんにちは」なんて挨拶されるのは初めてで、少し返答が遅れてしまった。
もちろん顔見知りでもないし、わざわざ走ってまでやってきて、一体何の用だろう…?
真っすぐ向けられる満面の笑みに、意味がわからず私は内心構えていた。
すると
「はい、これ、どうぞ!」
彼女は私の手を取り、持っていたブーケを置いた。
そして、両手で包み込むようにそっと握りしめた。
「あの……?」
「貴女にあげたいの。受け取って」
「な…何故、私なの…?」
「貴女が遠くから見ても、とても輝いて見えたから」
私の訝しげな眼差しなど全くものともせず、彼女は笑った。
とても幸せそうに。
「貴女の未来が誰より幸せでありますように」
シルクの手袋で惜し気もなく私の涙をゴシゴシ拭いて、彼女は最後に「ありがとう!」と言い残し、愛しい人達の元へ戻っていった。
"ありがとう"……何故、貴女が私に?貰ったのは私なのに……
色々な事が腑に落ちなくて、手元のブーケに目を落とすと、それは朝露のついた優しいピンク色のマーガレットの花束で。
リボンの結び方などのバランスで、恐らく近しい誰かの手作りだという事がうかがえた。
「綺麗ね…よかったわね、ルル」
「え…え。綺麗…」
綺麗―――――
同じ花を見て、同じように綺麗だと思える心が残っていたのだと、何気ない自分の言葉に気付かされた。
「綺麗ね…可愛い花…嬉しいわ」
嬉しいと、素直に思える心が、まだここに残っていたの。
その事に自分でも驚くほど感動して、心が震えて、また涙が溢れてきた。
奇跡は何度でも、こうして私の中に新しく生まれたの。
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